【医療サロン】店舗ルール・マニュアル作成は店舗の付加価値が高まり競争力につながる
ルールとは規則のことで、人の行為などで一定の基準となるものです。
店舗ルールがなかったり、適切に運用されていなかったりすると、本業界では療養費や自賠責保険の不正請求などの不正行為、従業員のトラブル、顧客とのトラブル、人材の流出や人材不足など、組織存続にも関わる問題が多発しかねません。
本記事では、治療院(はりきゅう、マッサージ)、整骨院、整体院、美容・エステ・リラクゼーションサロンの店舗ルール・マニュアルの作成について説明していきます。
この記事の目次
店舗ルール(ハウスルール)とは?
ルールとは「人が行動する上での約束事、決め事」のことで、組織間の人間が約束し合った内容です。社会的罰則はありませんが、その組織のなかでの罰則を課せられることもあります。
そして店舗独自で適用されるルールのことを「店舗ルール(ハウスルール)」といいます。
店舗ルールの役割と意義
店舗には性別・年齢・雇用形態などが異なるさまざまな人間が集まります。そのため店舗ルールがハッキリしていないと、運営がそれぞれの従業員のモラルに頼ることになり、店舗としてまとまりがなくなったり、同じスタッフでもそのときどきで判断が異なったりし、結果的にトラブルが続出することもあり得るのです。
店舗が社会活動において安定的に存続する上では、一定の秩序が求められます。その秩序を維持するために必要なのが、決まりごとであり店舗ルールです。
店舗ルールの作成は法律で定められているわけではありませんが、店舗ルールを明確にすることで円滑な店舗運営が実現します。企業理念やビジョン、店舗コンセプトに基づいた意識・考え方を明文化し、店舗ルールとして適切に周知・運用していくことで、従業員が同じ方向性を共有し成長していくことができます。
なお店舗ルールと混同されやすいものとして、マニュアルや就業規則があります。
店舗ルールは店舗における規則などの総称であり、マニュアルは不慣れな人でも業務のやり方が分かるようにした手引書にあたります。
就業規則は会社と従業員の間での契約であり、10人以上の労働者を雇用する会社では労働基準法によって作成が義務付けられています。「労働時間や休日・休暇」「休憩時間」「入退社時の手続き方法」「賃金」など、内容についても法律で定められていています。
店舗ルールを作成するメリット
店舗ルールを作成することで、以下のような5つのメリットがあります。
1.人材育成、人材の定着率向上
業務レベルの統一(標準化)や業務の属人化(特定の業務を特定の担当者しか把握していない状況)を解消でき、従業員全体のレベルアップと業務効率化が図れます。また、業務の可視化ができるため人材育成や人材の定着率向上につながります。
2.従業員満足度の向上
労働環境の整備・改善に役立ち、時代に合った働きやすい環境を目指すことができます。また、労使間のトラブル防止にも役立ち、従業員満足度の向上につながります。
3.顧客および従業員間のトラブル防止
業務の優先順位、サービス提供に対する考え方、従業員や顧客との接し方、トラブルが起きた際の対応方法などに対して、考え方や価値観の統一を図ることができます。
また管理者の注意指導方法や注意指導の判断基準としても活用でき、問題行動の再発防止、規律の乱れ、顧客および従業員間のトラブルを防止する効果があります。
4.従業員のモチベーション向上 優良人材の採用
評価・報酬制度や人材育成制度などを整備することで、従業員自身が評価基準や育成制度を理解すし目標を立てることが可能となって、モチベーション向上につながります。
また、自社の特徴としてPRしていくことで、優良人材の採用につながります。
5.社会的信用を守れる
店舗ルールにより、企業コンプライアンス(法令遵守)の強化、労使間のトラブル防止、情報漏洩や不正行為の防止につながります。
また、経営理念や方向性に基づいた意識や考え方で作成することで、良い組織文化を形成していくことが可能となります。そして、結果的に社会的信用を守ることができます。
店舗ルールを作成するデメリット
店舗ルールの作成は上記のようにメリットがある一方で、次のようなデメリットを生む可能性もあります。
店舗ルールを多く作りすぎてしまうと、店舗ルールに縛られた窮屈な組織になってしまいます。また店舗ルールを徹底しすぎると、従業員はその通りに行動するだけになり、自身の頭で考えて行動しなくなってしまいます。そして、同じような考え方や価値観を持つ人が増え、新しい発想やアイデアが生まれにくくなる可能性があります。
そのため、店舗ルールの量や内容と従業員の裁量を考え、新しい発想やアイデアが生まれにくくならないための工夫が必要です。
店舗ルール作成における注意点
ここからは、実際に店舗ルールを作る際に注意すべき点を紹介します。
性悪説の観点から設計する
店舗ルールは一般的に性悪説(人間にはモラルはあるのだが、間違いを起こすもの)の観点から設計することで、組織はもちろん従業員を守ることにも繋がります。
自社の理念を整理する
会社としての方向性を定めるためにも、店舗ルールは会社理念と一貫性があるものにすべきでしょう。
社長やリーダーが独断で作らない
独断で決めた店舗ルールは価値観の押し付けにつながり、社員に納得してもらえないことがあります。
店舗ルールは社内の人間全員に適用する
社長や幹部は率先して守らなければ運用できません。
従業員に分かりやすいようシンプルにする
店舗ルールの項目数はあまり多くせず、分かりやすく簡潔にすることで、守ってもらいやすくします。
周知方法を想定して作成する
控室に掲示する、紙で配布する、クラウドで共有するなど、従業員に周知させる方法を想定して作成します。
作成すべき店舗ルールとその項目
作成すべき店舗ルールは多くありますが、骨子となる以下の3つのカテゴリごとに、マニュアル化すべき主な項目を記載します。
1.業務に関する店舗ルール
店舗では、メインとなる施術業務以外にも、受付業務や顧客対応など様々な業務があります。
業務に関する店舗ルールは、マニュアルや作業リスト、トークスクリプトなどの手順を作成し明文化および可視化していきます。
特に施術や機器の取り扱いは図表・写真・動画などで分かりやすくすることで、経験の浅い従業員でも一定のレベルで業務を行うことが可能となり、業務レベルの統一が図れます。これにより、優良人材の採用・育成や人材の定着率向上につながります。
作成する主な業務関連の店舗ルール事項には、以下の4つがあります。
(1)施術
- 各種検査(視診、問診、触診、打診、聴診)
- インフォームドコンセント(症状と施術の説明と同意)
- 施術、施術後の状態確認
- 日常生活指導と今後のスケジュール提示
- カルテの記録
- 機器の取り扱い・管理 など
(2)受付
- 来退店時、待合室における対応
- 問診表、診察券作成・管理、カルテ作成・管理
- 顧客情報入力、予約管理
- レジ開け・レジ締め、会計時のダブルチェック など
(3)顧客対応
- クレーム、トラブルが発生した時の対応に関すること
- 電話対応(傾聴、確認等)に関すること
- 顧客への報告、連絡に関すること
- 言葉遣いやあいさつ・声かけの徹底
- お出迎え、ご案内、お会計、お見送り
(4)その他
- 開店準備・閉店作業
- 販促に関する業務
- 在庫管理(施術に付随するもの、物販商品・備品など)
- レセプト業務
- その他:清掃、洗濯、機器管理、店舗外の看板・ウェルカムボード・のぼり・チラシ等の管理 など
2.労働環境に関する店舗ルール
従業員間、施設関連、衛生面で分類し、明文化することで、従業員満足度の向上や顧客および従業員間のトラブル防止につなげていきます。
作成する主な労働環境関連の店舗ルール事項には、以下の3つがあります。
(1)従業員間
- 責任者の指示に従うこと
- 報告・連絡・相談について
- 共通言語、コミュニケーションルール
- 従業員同士の声かけ
- スタッフ間の呼び方
- 勤務時の無駄話 など
(2)施設関連
- 備品や経費の取り扱い注意事
- 控室、更衣室、共同スペース、トイレなどの管理注意事項
- 休憩時の注意事項
- 私物(荷物・貴重品)の保管
- 携帯電話に関する事項と使用可能場所
- 喫煙に関する事項と喫煙可能な場所
- 金銭・備品の取り扱い注意事項
- 節電・節水の呼びかけ
- 出勤・退勤や外出時における近隣商圏での注意事項 など
(3)衛生面(身だしなみや意識等)
- 服装(ユニフォーム・靴・名札など)
- 髪の色や長さ、髪型、まとめ方
- 化粧、マニキュア(爪の長さ)
- ピアス、ネックレス、指輪、時計、などの飾り
- 男性の髭
- 香水 など
3.組織・人事・勤務に関する店舗ルール
組織、人事、勤務の店舗ルールを明文化することで、情報漏洩、不正行為、トラブル防止によるコンプライアンスの強化や従業員のモチベーションを高める仕組みを作り上げることができます。
作成する主な組織・人事・勤務関連の店舗ルール事項には、以下の3つがあります。
(1)組織に関する項目
- CSR(社会的責任)やコンプライアンス
- 情報漏洩や不正(個人情報の取り扱い、マニュアル等の守秘義務)
- SNS等による情報発信の取り扱い
- 事故防止や緊急災害時の対応 など
(2)人事に関する項目
- 評価・報酬制度(能力評価、情意評価、成果評価、コンピテンシー評価等)
- 教育・研修(新入社員研修、管理職員研修、担当部署別研修、業務別研修、ハラスメント研修等)
- 人材育成制度(メンター制度、OJT制度、資格取得制度等) など
(3)勤務に関する項目
- シフト関連(シフトの交代、シフト提出の期日)
- 勤務時間(始業・終業時刻、休憩時間など)
- 勤怠ルール(遅刻・早退・欠勤手続きなど) など
まとめ
- 店舗ルールがないことは、顧客やスタッフ間のトラブル、人材流出など組織存続に関わる問題につながる
- 店舗ルールがあることで円滑な店舗運営が実現し、従業員と方向性を共有して成長できる
- 店舗ルールは大まかに「業務に関するルール」「労働環境に関するルール」「組織・人事・勤務に関するルール」の3つに分けられる
- 店舗ルールは自社の理念を基に作成し、社内の人間全員に周知させて適用することが大切
店舗ルールとは、自社の理念やビジョン、店舗コンセプトを文書に反映し、全員が共通認識を持つためのものです。店舗ルールが適切に運用されることで、トラブル防止や、従業員の育成や働きやすさにつながり、顧客へのサービス向上にもつながります。
そのためには分かりやすくシンプルな内容にして、従業員全員が納得して活用したいと思えるルールを作成しましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
飯塚 伸之(いいづか のぶゆき)株式会社BE NOBLE 代表取締役
株式会社BE NOBLE 代表取締役、法政大学経営大学院特任講師、MBA(経営管理修士)
整形外科等の勤務経験を活かし、施術ビジネス(治療院・接骨院など)業界のコンサルティング事業、企業・法人向けの健康経営コンサルティング事業、出張施術サービス事業をおこなっている。中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/鍼灸師/柔道整復師等の資格を保有。HP:https://benoble.co.jp/