【飲食店】店舗のマニュアル作成の作り方を調理や接客など種類ごとに解説
笠岡 はじめ(かさおか はじめ)シニア販売促進士/飲食店コンサルタント
飲食店におけるマニュアルは、提供する料理やサービスを常に一定のレベルで保つために必要不可欠です。
この記事では、マニュアルの必要性や、具体的なマニュアルの種類、各種マニュアルにまとめるべき項目について解説します。これからマニュアルを作ろうとしている方はもちろん、「まだ必要ないかな」と考えている方も、ぜひ一読ください。
この記事の目次
飲食店のマニュアルとは?
マニュアルとは、飲食店で働くスタッフの業務平準化に必要な「作業手順をまとめたもの」です。
「いつ、どの順番で、何を、どのようにするか」分かるマニュアルがあれば、学生のアルバイトであっても一定の水準で料理やサービスを提供できるようになります。
お店が繁盛するには「料理」「サービス」「店の雰囲気」全てが素晴らしいものであることが必要です。
おそらく、これから飲食店を始めようというみなさんの頭の中には、お客様に喜んでいただける「素晴らしいアイデア」があることでしょう。それはあっと驚くような新しい料理かもしれませんし、またこの店に来たいと思わせる接客かもしれません。
そんな素晴らしいアイデアをオペレーションに変換し、誰がやっても、どんなお客様に対しても同じレベルの「料理」「サービス」「店の雰囲気」を提供できるようにするのがマニュアルです。
マニュアルは基本的には文書で、写真なども交えて作成し一冊にまとめます。最近は動画でマニュアルを作る飲食店も増えています。作るためのコストは増えますが、文書よりも分かりやすくなるためおすすめです。
また、マニュアルはハウスルールと違って、ホールやキッチンなど職域別で用意するのが一般的です。ただし、清掃マニュアルなど全職域に共通のマニュアルもあります。マニュアルの種類に関しては、記事後半で詳しく解説します。
マニュアルは「飲食店成功の分かれ目」
ここからは、マニュアルの必要性について考えてみましょう。
「わざわざマニュアルなんかにまとめなくても、直接指導すれば良いじゃないか」そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに小さなお店であれば、従業員一人ひとりにOJTで調理や接客を教えることは可能かもしれません。
しかし、どんなに小規模店であっても、マニュアルは必ず作るべきです。その理由を一言にまとめると「マニュアルこそ、飲食店が“成功”するか否かの分かれ目になるから」です。順を追って説明しましょう。
まず、経営者視点では「飲食店は誰でもできる」と考えられることが多いです。「料理を覚えちゃえばできるでしょ」と思われがち、ということですね。これはある意味で正しく、ある意味で間違っています。
より正しく言うとしたら、「飲食店の業務は誰でも“できるようになる”ものが多い」です。
調理やホールなど飲食店の業務は、訓練無しにはそう簡単にできるものではありませんが、正しく訓練すればほとんどの人が一定のレベルでこなせるようになります。
そこでスタッフを訓練するとなったとき、特に店舗数が3店舗を超えるようなことになれば、経営者自身で全てのスタッフに指導するのは不可能です。売上や利益をしっかり出す、多店舗展開するといったことを成功の定義とするならば、飲食店の業務を「誰でもできるようにする」ためのマニュアルが必要になるわけです。
また、お店が1店舗でスタッフの人数が少ない場合でも、例えば普段調理を担当しているオーナーが入院することになれば、「いつもと同じ味」を再現できません。
しかし、マニュアルを用意しておけば、何かあったときでも平準化された料理やサービスを提供できるようになり、「いつもの料理やサービスを提供できない」ことによる売上の低下を避けられるのです。
飲食店に必要な6種類のマニュアル
ここまでで、マニュアルの必要性について理解できたことと思います。
それでは、具体的にどんなマニュアルが必要かを見ていきましょう。大きく分けて、飲食店には以下6種類のマニュアルがあります。
- 調理マニュアル
- 接客マニュアル
- 商品説明マニュアル
- 営業マニュアル
- 清掃マニュアル
- クレーム対応マニュアル
ひとつずつ、解説していきます。
調理マニュアル
調理マニュアルを作る目的は、誰でも均一の料理を提供できるようにすることです。
調理マニュアルはさらに「仕込み基準表」と「調理基準表」のふたつに分解されます。
仕込み基準表では以下の内容を定めていきます。
- 仕込み量(どれくらい仕込むのか)
- 使用材料(仕込みに必要な材料)
- 数量(必要な材料の数)
- 単価(材料の単価)
- 作り方(どのように、どこまで作るか)
- 保管の仕方(冷凍か冷蔵か、どのくらいの期間保管できるか、など)
- どの料理に使うのか
一方、調理基準表では
- 調理手順(何を、どの順番で、どのように調理するか)
- 盛り付け(何を、どの順番で、どのように盛り付けるか)
を定めます。
特に盛り付けに関しては、誰が見ても同じ認識ができるように写真を載せるのが一般的です。
調理マニュアルで大切なのは、「3か月ごとに見直すこと」です。
定期的に見直しをしないと、原価の高騰によっていつの間にか儲けが減ってしまうこともあります。また、3か月ごとに見直すことで、旬の食材を取り入れることにもつながります。
もうひとつ大切なこととして、「調理マニュアルは2人で記入する」と覚えておきましょう。
例えば単価などの数字や調理手順を間違えて記入してしまうと、味も原価も大きく変わってしまいます。調理マニュアルのミスは特に影響範囲が大きすぎるため、必ず2人体制でお互いチェックしながら作ることが重要です。
接客マニュアル
接客マニュアルの目的は、お客様が入店して退店するまでにホールスタッフがやるべきことの標準化です。
具体的には、まず冒頭で「接客の基本、姿勢、言葉遣い」についての指針をまとめます。あとは時間の流れに沿って、以下のタイミングにおけるやるべきことを定めていきましょう。
- お出迎え(店のドアを開けてお出迎えする、など)
- オーダーテイク(最初のオーダーではおすすめを説明する、など)
- 追加オーダー(一緒にお皿を下げる、など)
- バッシング(どのタイミングでお皿を下げるのか、など)
- 会計(テーブル会計かレジ会計か、など)
- お見送り(外までお見送りする、など)
また、お客様がグラスを割ったときどうするか、どの席(カウンター、窓側の席など)に優先して案内するかといった個別の対応についてもまとめておくと、スタッフが迷わず接客できるようになります。
商品説明マニュアル
ホールスタッフの役割を突き詰めて考えると「営業マン」であると言えます。彼らがどんな接客をするかで、お店の売上が変わってくるのです。
例えばお店の売りとなる料理を「こちらが当店おすすめの料理です!」と一声紹介するだけで、オーダー率が上がりますよね。
そんなホールスタッフの「営業推進」に役立つのが商品説明マニュアルです。主に以下の内容を定めていきましょう。
- 各商品のポイント(主要な商品だけで構いません)
- 看板商品(何が看板商品か)
- おすすめの仕方やタイミング(注文を受けてから作り始めるからできたてを提供しますよ、など具体的に)
私の知る限り、商品説明マニュアルを作っているお店は少ないです。しかし、売上や利益に大きく貢献する商品説明マニュアルを作るだけでも他のお店を一歩リードできるので、ぜひ作ることをおすすめします。
営業マニュアル
営業マニュアルはオープン・クローズに関わる作業を定めたものです。例えばオープンの際はシャッターを開けて、カギはここに入れて、最初は拭き掃除して椅子を配置する…といった内容ですね。特に現金の管理は明確にしておかないと、大きなトラブルにつながってしまうので注意しておきましょう。
以下のタイミングにそれぞれ何を、どの順番でやるのかをマニュアルに落とし込みましょう。
- オープン準備
- クローズ作業
- ランチとディナーの入れ替え
清掃マニュアル
お店を清潔に保つために、以下の場所それぞれの清掃マニュアルを用意します。
- 厨房
- ホール
- トイレ
トイレに関しては、チェック表と一緒に運用することが多いです。清掃する項目を表に一覧化し、済んだらチェックしていく流れです。
また、清掃は「日々やること」と「週間・月間・四半期・半年などの単位で定期的にやること」に分かれます。日々やることはオープン準備・クローズ作業の一環として営業マニュアルの方にまとめても良いですが、定期的にやることは「どのタイミングで、何をやるのか」をマニュアル化しておきましょう。
例えば週間では窓ふき、月間では冷蔵庫の清掃、四半期ではグリストラップの清掃、半年では床のワックス、などです。
クレーム対応マニュアル
「クレームが発生したときにどうすれば良いか?」を定めたのがクレール対応マニュアルです。これはクレームを受けた際の基本行動(最初はとにかくお客様の話を聞く、など)を記した上で、パターン別で用意しておくと良いでしょう。
例えば、飲食店のクレームで一番多いのは、料理の提供が遅いことです。そのクレームを受けたら「スタッフの判断で一品サービスして良い」といった対応を決めておきます。
また、クレームになりやすいパターンの防止策も明記しておくとより実践的です。例を挙げると、料理やドリンクをこぼしてしまったときクレームを受けることが多いため、防止策としてグラスやお皿を落としにくい持ち方で持つ、などです。
クレームに上手く対応できずに心が傷ついて辞めてしまうアルバイトもたくさんいるので、クレーム対応マニュアルは「スタッフのため」と思って必ず作るべきです。
マニュアルを遂行するための「仕組みづくり」
マニュアルは作ることがゴールではなく、スタッフが遂行することがゴールです。そこで、マニュアルを作ったら、それに沿ってスタッフが業務に取り組めているかを確認する仕組みとして「チェック表」を用意しましょう。
例えば接客マニュアルであれば「お店の外でお客様をお迎えできているか」「追加オーダーのときにお皿を一緒に下げているか」などのチェック項目を表にまとめるのです。
毎日チェックする必要はありません。
2~3か月に1回を目安に確認し、必要に応じて各スタッフにフィードバックしてあげると良いでしょう。
まとめ
- マニュアルは「飲食店成功の分かれ目」
- 飲食店のマニュアルは「調理・接客・商品説明・営業・清掃・クレーム対応」の6種類ある
- マニュアルは作るだけではなく遂行することが重要
この記事ではマニュアルの大切さをお伝えしてきましたが、「全スタッフがマニュアル通りに完璧に動けば良い」とは思っていません。特に接客においてはスタッフのアドリブになるケースも多いですし、各人の個性がお店の魅力につながることも多々あります。ただし、それは土台として「一定水準の料理やサービス」があるからこその話です。その土台を形作るためにも、今回解説した6種類のマニュアル作りをぜひ考えてみてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
古閑 信気(こが としき)編集者・ライター
広告代理店勤務を経て、現在は編集プロダクションにて編集・執筆に従事。旅行、ライフスタイル、恋愛からビジネスまで幅広いジャンルの記事に携わる。「読者が記事を読んだ後に、刺激を受けて行動に移すこと」を目指してコンテンツ制作に取り組んでいます。
笠岡 はじめ(かさおか はじめ)シニア販売促進士/飲食店コンサルタント
飲食店販売促進コンサルタント「販売促進士」を育成する一般社団法人販売促進士日本フードアドバイザー協会代表理事。同協会にて飲食店販売促進コンサルタント「販売促進士」の資格講座を提供している。
また、年間3桁の飲食店の売上アップのコンサルティングや開業支援、業態開発などを行う飲食店専門コンサルティング会社「飲食店繁盛会」の代表も務める。
著書に『売れまくるメニューブックの作り方(日経BP社)』等。セミナー・研修は年間約100本。メディア掲載も多数。
●販売促進士日本フードアドバイザー協会
https://spfaaj.or.jp/
●飲食店繁盛会
https://hanjoukai.com/
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