【医療サロン】開業するなら知っておきたい4つの心得とは
治療院などの施術所を開業するという目標を持って、業界に飛び込んだ人や、そのために国家資格を取得した人も多いのではないのでしょうか。治療院は最低限、場所とベッドがあれば開業できてしまうことから起業のハードルが低いですが、新規参入者が多く競争が激しくなっています。
これから開業を考えている人は、本記事で上手くいくために必要な心得を知り、事前に準備するところからはじめましょう。
この記事の目次
従業員と経営者は何が違うのか
従業員として働くことと起業して経営者として働くことには、大きな違いがあります。起業後に実感することも多いと思いますが、あらかじめ認識しておきたい、従業員と経営者の5つの違いについてご説明します。
1.収入面の違い
従業員の立場なら、給料日になれば毎月必ずお金が振り込まれます。しかし経営者になると自分の給料は自分で稼ぐ必要があり、収入も自己責任となります。言い換えると、従業員は時間を売りますが、経営者は内容や成果を売ることになります。
2.働き方の違い
従業員として働いていた頃は、受動的に自分の決まった仕事をしていれば一定の評価をされたと思います。しかし経営者になると、自らやるべきことを探して能動的に、事業全体が最適となるように仕事をおこなう必要があります。
能動的に働くということは、そのときどきで大なり小なり決断をしていくことが必須となり、責任が伴います。ミスをしたら会社や上司が責任を負ってくれるということはなくなり、すべての結果について、自分で引き受けなければいけなくなります。
3.自由度の違い
経営者として働くことで、「自分らしく生きたい」「自分らしい仕事をしたい」「今までの経験を活かして役立ちたい」といった自分の理想を実現できます。
また自分の理想を実現するために、店舗の内装や外装、施術内容、価格、提供方法や時間、従業員の採用なども自由に決められます。さらには店舗にそぐわない顧客の来店を断るのも自由です。
4.顧客からの評価の違い
従業員として働いていた頃は、顧客が来るのは当たり前のように思っていたかもしれません。しかしそれは、勤務していた治療院が立地や認知度を高めるための工夫をしたり、顧客に対して実績と信用を築いたりしてきたおかげであると言えます。開業直後は世間や顧客からみれば無名の存在となり、経営者はゼロから評価を築かなくてはいけません。
5.健康上のリスクに対しての違い
従業員の立場であれば、体調が悪かったりケガをしたりすると有給休暇が取れたと思います。しかし経営者には代わりはいないので、体調が悪くても大事な仕事があれば働かなくてはいけません。
また万が一、自分が体調を崩して入院するようなことになっても、入院中や退院後に今までのような売上を維持できる保証はありません。
起業に向いている人とは?
従業員と経営者の働き方の違いについて説明しましたが、自分が起業して経営者として働くことができるか、不安に感じている人も多いのではないでしょうか。
そこで、起業に向いている人のポイントを以下の3つにまとめてみました。
1.自分で考えることができる人
起業に向いているのは、会社の中では当たり前だったことでも疑問を持って、「こうした方がもっと良いのではないか」「こんなやり方もできるのではないか」と、一度立ち止まって自分なりに考えて答えを出せる人です。
それは、周りが気に留めないようなことも自分事にしていける人、ということです。「こんな会社やサービスがあればいいのではないか」と、新しいことやまだ知らないことに楽しんで取り組めるでしょう。常に自分事にして考え、繰り返すことで明確なビジョンが見えるようになります。
逆に、なんでも他人任せにしがちな人や他人事でしか物事を捉えられない人は不向きかもしれません。
2.自由を楽しめる人
経営者は自由である反面、無限大にある選択肢から決断する必要があります。その決断にあたり、いつも答えのない問いと向き合わなければいけません。
私たちは大人になるまでに学校や就職、資格取得などで試験を受け、「正解」があることに慣れてしまっています。従業員として会社で働いている場合でも、会社の規定や昇進基準などの正解があるのではないでしょうか。
しかし起業や起業準備においては、試験も正解もありません。結果はやってみないと分かりません。自分なりの正解を決めて、そこに進む必要があります。起業とは常に、自分で出した問いに自分で答える作業だと言えます。そこが経営者の大変なところでもあり、面白いところでもあります。
自由よりも自己責任を重く感じるようだと、起業は辛いものとなってしまいます。「責任を取りたくない」「誰かに決めてもらった方が楽」と思う人は、不向きかもしれません。
3.失敗から学べる人
多くの人が「失敗しないことが上手くいくこと」だと思っていますが、実は失敗から学ぶ人のほうが上手くいくのだと思います。後述しますが、起業とは「失敗する確率が高いもの」ですから、全く失敗しないというのは有り得ないことだと言えるでしょう。失敗を前提として、そこからいかに学ぶかが成功の近道なのです。
治療院業界の難しさ
起業の現実を知り、難しさを知ることも起業のための一歩です。以下の3つのデータを見ていきましょう。
1.企業の生存率
少し古いデータですが、中小企業庁「中小企業白書 2011年版」の統計データによると、企業の生存率は3年後に89%、5年後に82%、10年後に70%、20年後に52%まで減少するとしています。
(出典:中小企業庁「中小企業白書(2011年版)」-「第3-1-11図 企業の生存率」)
つまり、これから起業しようとする方のうち、10年後まで事業を継続できるのは約7割、20年後までは約5割であるということです。
2.治療院業界の廃業率
株式会社帝国データバンクの「整骨院・療術・マッサージ業者の経営実態調査(2019)」によると、整骨院・療術・マッサージ業者の倒産件数は2016年以降、増加傾向となっています。倒産件数は2008年から2018年の10年間で3倍超となり、増加傾向が続いています。
(出典:株式会社帝国データバンク「整骨院・療術・マッサージ業者の経営実態調査」)
3.治療院業界における過当競争
厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、就業資格者数は平成20年から平成30年の10年間で、あん摩マッサージ指圧師数は約1.2倍、はり師・きゅう師は約1.4倍、柔道整復師は約1.7倍となっています。資格者数が増加していることから、過剰供給による同業者、隣接する他業界との競争は激しくなっています。
(出典:厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」-「就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」)
これらのデータから、治療院業界での起業は失敗する確率が低くはなく、厳しいものだということを認識できると思います。また現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、さらにネガティブな数字となっていると推定できます。廃業の理由は準備不足であることも多く、起業を甘くみていた結果とも考えられます。「技術に自信があるから大丈夫」「開業すれば顧客が来るだろう」「とりあえず何とかなる」などと考えている方は要注意です。
開業時に必要な4つの心得
起業するにあたり、「どこから手をつけていいか分からない」「何をどうしたらいいか分からない」という相談をよく受けます。それもそのはず、起業とはゼロから価値を創造していくことであるため、人生で初めての経験だらけなのです。しかし、開業にあたり必要な考え方はあります。ここでは4つの心得として提示します。
1.明確なビジョンを持つ
漠然としたアイデアや願望だけでは、起業はなかなか前進しないものです。「なぜ起業するのか?」「どのような事業か?」「どんなことを実現したいのか?」「5年後の目標は?」などを考え、ビジョンとして明確にし、それを踏まえて行動することが大切です。
自分のビジョンを最初から明確に断言できる人の方が少ないですが、起業後のさまざまな困難を乗り越えるためのエネルギーを生むには必要なことです。ビジョンは起業後に悩んだときの羅針盤となり、第三者に対して影響力を及ぼす原動力にもなります。
2.資源をそろえて覚悟を決める
起業に必要な資源として、ヒト、モノ、カネ、情報などと言われます。最低限、以下の点がそろっているかチェックしておきましょう。
- 必要な知識・技術や経験は持っていますか?
- 困難やリスクに対する心構えはできていますか?
- 家族の理解と協力を得られていますか?
- 良き相談相手はいますか?
- 必要な情報は自分から取得できるような状態ですか?
- 自己資金(運転資金3か月分)の準備はしましたか?
一方で、どんなに資源があってもそもそも上手くいく根拠などありません。起業にむけてある程度準備が整ったら、覚悟を決めることも大事です。
3.完璧を目指さない(ベストよりもベター)
経営者になると、限られた時間の中で答えのない問いに向き合い、日々責任が伴う決断をすることになります。答えのない問いに「完璧な答え」はありません。答えに迷うことで時間という資源を浪費せずに、「それなりに良い答え」を目指して決断していきましょう。
また開業にあたりよく散見されるのが、最初から理想を完璧に実現しようと内装や設備にこだわりすぎて、初期投資が高くつき、時間もかかるケースです。自分が完璧だと思っていても、顧客が「NO」と言えばすべて無駄になり、取り返しのつかない失敗となることもあります。
そのため、最初から完璧を目指しすぎず、それなりに良い決断をしていくことが重要です。
4.失敗から学ぶ
起業して成功したいのに、最初から失敗が前提なんて矛盾しているように聞こえるかもしれません。しかし起業に失敗はつきものです。早く、小さく失敗していくことが重要です。
失敗から学ぶコツは、すべての原因は自分にあると考えることです。経営が上手くいかない理由を、景気や競合他社のせいにしていては失敗から学ぶことはできません。例えば、近隣に競合他社が出店してきたことで上手くいかなくなったのなら、その競合店に対応できなかった経営者の力不足が失敗の本質です。
失敗から学ぶということは、そこから反省点を見つけ出して自分を変えるということです。人間は自分の失敗からしか学ぶことはできません。それなら早く失敗して早く学ぶことを繰り返した方が、結果的に早く成長できます。
当初の計画から状況に合わせて事業を変化させていくことも、失敗から学ぶということです。顧客の声を聞いてその反応をみながら、ニーズに合うように事業やサービスを修正していくことも重要です。
まとめ
- 経営者は働き方の自由度ややりがいがある一方で、収入面でのリスクもある
- 起業に向いているのは「自分で考えることができる人」「自由を楽しめる人」「失敗から学べる人」
- 治療院業界の廃業率は増加傾向にあり、競争も激しい。事前の準備と心構えが大切
治療院などの施術所を開業しその事業を継続していくことは、とても大変なことです。しかし、自分の知識・技術・経験を活かして、自分らしく、かつ顧客のために仕事ができるということは、従業員として働いていたら得られない唯一無二の経験となるのではないでしょうか。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
飯塚 伸之(いいづか のぶゆき)株式会社BE NOBLE 代表取締役
株式会社BE NOBLE 代表取締役、法政大学経営大学院特任講師、MBA(経営管理修士)
整形外科等の勤務経験を活かし、施術ビジネス(治療院・接骨院など)業界のコンサルティング事業、企業・法人向けの健康経営コンサルティング事業、出張施術サービス事業をおこなっている。中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/鍼灸師/柔道整復師等の資格を保有。HP:https://benoble.co.jp/