シフト管理を見直せば、店長と従業員どちらもラクになる
笠岡 はじめ(かさおか はじめ)シニア販売促進士/飲食店コンサルタント
「シフト表の作業で毎日残業している」「人が足りなくてお店がまわらない」そんな悩みをお持ちの方に向けて、シフト管理の上手なやり方を解説。シフト管理の目的やシフト表の作り方など、運営する上で知っておきたい情報を飲食店を例にまとめました。
この記事の目次
シフト管理の目的は、従業員の勤務時間を予定立てて店舗運営を安定化・効率化すること
シフト管理とは、労働日・労働時間帯を変動的に決める「シフト制」の勤務形態において、従業員の労働時間帯を管理する業務を指します。その目的は、従業員の勤務時間をスケジューリングして把握することで、毎日問題なくお店が営業できるようにすることです。さらに、「人材配置・人件費のコントロールによる売上・利益の最大化」までできると理想です。
適切にシフト管理ができれば、売上も利益もアップさせることができます。例えば、調理が得意な人をキッチンに、接客が得意な人をホールに配置することで、より美味しい料理の提供やお客様に喜ばれる接客ができるようになり、売上アップが期待できるでしょう。また、時間当たりの効率が上がるので、相対的に人件費も抑えられます(Aさんは1時間に10品作れる、Bさんは5品しか作れない場合、Aさんをキッチンに配置すれば2倍の効率で料理提供ができます)。
利益アップに関しては、適切なシフト管理によっていかに人件費をコントロールするかがカギとなります。なぜなら、飲食店におけるコストの多くを占める「FLR」(※)の中でも、近年高騰を続ける材料費や、固定費である家賃はそのコントロールが難しいためです。
(※)「Food(材料費)」「Labor(人件費)」「Rent(家賃)」の頭文字を取ったもの。一般的にこの3つのコストを70%以下に抑えるのが望ましいとされる。
主なシフト管理のツールは「手書き」「表計算ソフト」「スプレッドシート」「シフト管理システム」
売上・利益を最大化するために、「どこにどう人材配置するか」「人件費をどの程度にするかを見据え、どうコントロールするか」を考えながら、シフト表を作り管理しなければなりません。
そんなシフト管理をするためのツールには「手書き」「表計算ソフト」「スプレッドシート」「シフト管理システム」などがあります。それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、お店の規模や特性を踏まえ自店に合うツールを選ぶようにしましょう。
「手書き」でのシフト管理方法とメリット・デメリット
カレンダーなどの紙に、「Aさん 11時~17時」のように誰がいつシフトに入るのかを記入し、管理します。
メリット |
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デメリット |
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【こんなお店におすすめ】
個人経営で従業員が数名、小規模でシフトの変動が少ないお店は、手書きで管理していることが多いのではないでしょうか。例えばオーナーとアルバイトの2名だけでお店を運営している場合、市販のカレンダーにシフトを書き込むだけでも十分管理できるでしょう。
「表計算ソフト」でのシフト管理方法とメリット・デメリット
表計算ソフトで日時やスタッフ名などの項目を入れたシフト表を作成し、誰がいつシフトに入るのかを記入することで管理します。
メリット |
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デメリット |
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【こんなお店におすすめ】
従業員が5~15名程度で、1店舗のみのお店では表計算ソフトで管理するところが多いのではないでしょうか。
「スプレッドシート」での管理方法とメリット・デメリット
スプレッドシートは、表計算ソフトと同様の機能をオンライン上で利用できるGoogleが提供している表計算のツールです。シフト表の作成や編集における操作は表計算ソフトと同じですが、オンラインで共有がすぐにできる・スマートフォンでも編集できる点で表計算ソフトよりも便利といえます。
メリット |
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デメリット |
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【こんなお店におすすめ】
複数店舗を経営している場合は、店舗間での共有もしやすいスプレッドシートの方が、表計算ソフトよりも便利でしょう。
「シフト管理システム」での管理方法とメリット・デメリット
シフト表のフォーマットなど、シフト管理に必要な機能が既に備わっているので、シフト管理業務の多くを効率化してくれます。シフト作成時の転記といったミスや、従業員とのコミュニケーション不備なども少なくなります。
メリット |
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デメリット |
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【こんなお店におすすめ】
どんな規模のお店でも、シフト表の作成に多くの時間がかかり、ストレスになっている店長にはおすすめです。また、「二店舗めの出店を検討している」「複数店舗を経営している」という場合、将来的にスタッフをひとつのシステムで共有管理できるという意味で、導入を検討されると良いでしょう。
シフト表作成の4STEP
ここからは、多くの店長が頭を悩ませる「シフト表の作り方」を見ていきましょう。
飲食店は月を前半・後半の2つに分けて、2週間ごとにシフト表を作ることが多いようです。大まかな流れは上の図のように、
STEP1:作業計画を立てる(~シフト開始日の15日前目途)
STEP2:シフト希望の収集(~シフト開始日の10日前目途)
STEP3:シフトを割り当てる(~シフト開始日の5日前目途)
STEP4:シフトを調整する(適宜)
の4STEP。どのツールを使う場合も、シフト表作成の流れは同じです。
それぞれのSTEPで実際にやるべきことのイメージがつきやすいよう、「9月1日~9月15日までのシフト表を作る想定」で、具体的な例も交えて解説します。
STEP1:作業計画を立てる
作業計画とは「シフトの希望提出の締切日」や「シフト提示日」といったシフト表作成に必要なタスクとスケジュールを計画立て、お店(店長)と従業員の間で認識を揃えることです。
【例】
- 8月10日目途~:シフト表作成までのタスクとスケジュールを決める
- 8月15日まで:シフト表作成までのタスクとスケジュールを従業員に共有
STEP2:シフト希望を収集
シフト希望日をスタッフに提出してもらう。提出の呼びかけや、締切までに提出していない従業員に催促をする。
【例】
- 8月15日:従業員にシフト希望提出のお願い。締切りを8月20日までとして広報
- 8月20日:シフト希望提出の締切日が本日であることを全体リマインド(全員が既に希望提出していれば不要)
- 8月21日:希望未提出の従業員に催促
STEP3:シフトを割り当てる
シフト管理(=人材配置・人件費のコントロール)で重要なのがこのSTEPです。シフト希望と照らし合わせて「お店がうまく回るか?」「予定より人件費がかかり過ぎないか?」を確認しながら、各日に人員を割り当てていきます。新人がいる場合は、指導できる人が同じタイミングに入っているかも見る必要があります。
また、一旦割り当てが終わったら、従業員の勤怠管理(労働時間や休憩時間が適切なものとなっているか)の観点でも問題ないかを確認するようにしましょう。
社員・バイト・パートの勤怠管理について、店長が知っておくべきこと
【例】
- 8月21~22日:シフト表に割り当て
- 8月23~24日:人員が不足している日時があれば、入れる人がいないか相談
- 8月25日:従業員にシフト表の提示
STEP4:シフトを調整する
シフトに欠員が出た場合に、他の従業員にお願いしてシフト調整を行います。シフト提示後に従業員から変更希望が出されたときは、他に出勤できる人はいないかヒアリングをするなどして調整を行います。
【例】
- 8月25日~:欠員が出たら適宜調整
現場の店長に聞いたシフト管理のお悩み
ここまで解説してきたように、シフト管理をするためにはさまざまな要素を考えながら進める必要があります。実際に一度やってみると、その大変さを実感する方も多いそうです。
現場の店長に、シフト管理についての悩みを聞いてみたところ、次のような声が集まりました。
- 日中は現場対応に追われるため、シフト表作成は残業になってしまう(29歳・カフェ店長)
- 仕事終わりのシフト表作成は眠すぎて無理……(41歳・餃子店店長)
- 祝日が続く場合学生アルバイトのシフト確保が難しく、社員の週労働時間が40時間を超えてしまう(36歳・カフェ店長)
- 新人が多くスキルが足りないので、指導できる自分が入らざるを得ない(30歳・洋食店店長)
このように、人員不足が原因でシフト管理の時間を確保できない、シフト管理作業が負担となっている、上手く管理できない、といったことが悩みに挙がっていました。
繰り返しになりますが、シフト管理は店舗運営の安定化・効率化が目的で、お店の経営には欠かせません。だからこそ、店長など管理する立場であれば、シフト管理のための時間をあらかじめ取っておくことで「シフト表作成の時間が無い」といった事態は避けるべきです。また、シフト管理のための作業はなるべく効率化することも必要でしょう。
前章のような店長の悩みを解決してくれるのが、「シフト管理システム」です。シフト希望の収集やシフト作成に関わるタスクの一部をシステムが自動化してくれることで、シフト表作成にかかる時間を短縮し、適切なシフト管理を可能にしてくれます。
例えば、シフト表作成のSTEP2(シフト希望を収集)で、希望日提出締切日が近づいてきたらリマインドするタスクが発生しますが、システムを導入すれば自動でリマインドメッセージを送ってくれるサービスもあります。
シフト希望が集まったらシフト表に自動反映してくれるので、STEP3(シフトを割り当てる)の手間が省けるだけではなく、転記ミスなどのヒューマンエラーも無くなります。さらに、シフト表から概算の人件費を自動算出してくれるため、人件費のコントロールもしやすくなるでしょう。
また、シフトを管理する店長だけではなく、従業員のシフト希望提出もスマホで簡単にできるようになるので、手書きなどと比べてラクになります。システムにあらかじめ用意されたシフト表のデザインは見やすいため、日時の見間違いも少なくなるでしょう。
まとめ
- シフト管理の目的は、従業員の勤務時間を予定立てて店舗運営を安定化・効率化すること
- シフト管理で「人件費管理・コントロールし売上・利益の最大化」までできると理想
- シフト表作成の4ステップは「計画を立てる→希望収集→シフト割当→細かい調整」
- シフト表作成にまつわる業務を自動化してくれるシフト管理システムもある
シフト管理をきっちり行うことは、従業員の労務管理を健全に保ち、お店の運営を滞りなく行う基本です。本記事を参考に、具体的なシフト管理の方法を実践してみてください。また「シフト管理に手間がかかっている」といった悩みがあるなら、システム導入を検討してみるのも良いかもしれません。自分のお店の状況や課題に応じて、適切なシフト管理方法を選択するようにしましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
古閑 信気(こが としき)編集者・ライター
広告代理店勤務を経て、現在は編集プロダクションにて編集・執筆に従事。旅行、ライフスタイル、恋愛からビジネスまで幅広いジャンルの記事に携わる。「読者が記事を読んだ後に、刺激を受けて行動に移すこと」を目指してコンテンツ制作に取り組んでいます。
笠岡 はじめ(かさおか はじめ)シニア販売促進士/飲食店コンサルタント
飲食店販売促進コンサルタント「販売促進士」を育成する一般社団法人販売促進士日本フードアドバイザー協会代表理事。同協会にて飲食店販売促進コンサルタント「販売促進士」の資格講座を提供している。
また、年間3桁の飲食店の売上アップのコンサルティングや開業支援、業態開発などを行う飲食店専門コンサルティング会社「飲食店繁盛会」の代表も務める。
著書に『売れまくるメニューブックの作り方(日経BP社)』等。セミナー・研修は年間約100本。メディア掲載も多数。
●販売促進士日本フードアドバイザー協会
https://spfaaj.or.jp/
●飲食店繁盛会
https://hanjoukai.com/
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