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領収書の宛名には会社の正式名称を記載して。宛名の書き方・訂正方法など注意点まとめ

領収書 宛名

領収書は、金銭のやりとりを行ったことを公的に証明する大切な役割を担うもの。店舗経営をするうえでは、経費計上のために領収書をもらう・お客様に領収書を発行するという両方の立場で領収書を取り扱うことになります。正しい記載方法を理解しておかなければ、経費精算や接客の場面で思わぬトラブルに発展しかねません。
本記事では、宛名の書き方を中心に“正しい領収書の書き方”を、記載例を交えながらわかりやすく説明していきます。

この記事の目次

領収書の宛名には「代金の支払者の正式な名前」を書く

領収書は、金銭のやり取りを行ったことを証明するための大切な書類です。後日でも検証できるように、宛名にはお金を支払った人や会社の正式名称を正確に記載しておかなければなりません。

開業して領収書を発行する立場になると、不備のある領収書をお客様に渡したことで、お客様が勤務先で経費精算できないといった事態を招くことも考えられます。無用なトラブルを避けるためにも正しく記載するようにしましょう。

お客様から口頭で伝えられた宛名が聞き取りづらい場合などには「名刺をお持ちですか?」と確認して、正しい名称を書き写すとよいでしょう。一方、取引先などに領収書を発行してもらう場合、宛名を伝えるのが難しいときは名刺などを差し出して「こちらの名称でお願いします」と伝えるとスムーズです。

領収書 宛名

項目 説明・記入例
①日付 受領した側にとって、原則的に経費で計上する日となる。西暦でも和暦でもよい
②店(発行者)の名前 最低でも、所在地と名称を記載して、誰が発行したのかを特定できるようにする
③宛名 法人格を省略せず、正式名称を記載する
氏名はフルネームで記載する
④金額 3桁ごとに「,」を付ける、¥マークを金額の頭に付ける、金額の末尾に横線を入れる
⑤但し書き 御食事代として、御飲食代としてなど
⑥収入印紙 消費税込みで5万円以上の場合は必要。収入印紙には必ず割印や、ボールペンでマークを入れるなどして、再利用できないようにする
⑦発行者の印 必須ではないが、押してあるほうが正式に発行したものという印象が強くなる

【図解】すぐ分かる領収書の書き方|発行する際の注意点も解説

【実例1】宛名が会社名の場合

お客様に、宛名を会社名でと求められた場合は、「(株)」のように法人格を省略せず、正式名称で記載しましょう。

税務処理上は、法人格のみの記載でも誤りにはなりません。ただし先方に失礼にあたる場合があるため、原則は正式名称で記載すると覚えておくとよいでしょう。

敬称は一般的には「御中」を使用しますが、使用する領収書によっては最初から「様」と印刷されているものがあります。この場合は「会社名 様」でも問題ありません。屋号の場合は、屋号に敬称をつけて記載します。
指定があれば部署名を記載することもあります。

例)
○○株式会社 御中
○○株式会社 様
□□クリニック 様
○○株式会社 △△部 御中

【実例2】宛名が個人名の場合

宛名が個人名のときは苗字のみを記載するのではなくフルネームで記載し、敬称は「様」を使用しましょう。

税務処理上は、苗字だけだからといって問題になることはありません。税務上重視されるのは本当にその領収書が持ち主のものなのかどうかということです。
しかし、会社の中に同じ苗字の人が複数人いる場合などは誰のものかわからなくなることもあり得るため、フルネームでの記載が必要という経費精算のルールが決まっている可能性もあります。お客様からのご要望次第ではありますが、原則フルネームで記載すると覚えておきましょう。

同様に、自身が取引先などへ領収書の発行を依頼する際にも、フルネームでの記載を依頼するのが望ましいといえます。

例)
鈴木 太郎 様

【実例3】宛名が会社名+個人名の場合

「会社名+個人名」を記載する場合は、敬称は「様」を使用するのが一般的です。

税務処理上はかならずしも「会社名+個人名」の記載は必要なく、会社名のみの記載でも問題はありません。しかし会社によっては、経費精算を行う際のルールとして、支払いをした人の名前まで記載が必要な場合があります。領収書を発行する前に、お客様に確認をしましょう。

個人事業主のお客様で屋号がある場合は、個人名の前に屋号を記載します。
逆に自身が個人事業主の立場で、取引先などに領収証の発行を依頼する場合には、屋号+フルネームで書いてもらうのが望ましいでしょう。

例)
○○株式会社 鈴木 太郎 様
□□クリニック 鈴木 太郎 様
○○株式会社 △△部 主任 鈴木 太郎 様

経費の領収書では「宛名なし」や「上様」の記載は極力避ける

領収書 宛名

領収書の発行にあたって、宛名を書かない状態や「上様」と書いてお客様にお渡しすることは極力避けましょう。自身が取引先から領収証をもらう場合も同様です。

「宛名なし」や「上様」の領収書は、紛失時に第三者に悪用されるリスクや複数の事業を展開している場合に経費の計上先を都合よく変更しているのではないかと税務調査で疑われてしまう恐れがあります。また支払った側が領収書に手を加えるのは不正行為とみなされる場合がありますので気を付けましょう。

ちなみに、消費税について課税対象や税額の計算方法などを定めている「消費税法」上は、取引金額が3万円未満の場合や以下のような事業においては「宛名なし」や「上様」でも法的な問題はないとされています。

  • 飲食業
  • 小売業
  • 旅客運送業
  • 旅行業
  • 写真業
  • 駐車場業

出典:消費税法第四十九条「課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等」

上記に該当する事業を営む店舗であれば、レジから印刷されるレシートが領収書を兼ねていて、宛名の記載箇所がないといった場合もあります。例えば、ご自身の経験で「領収書をください」と言ったときに、店員さんから「レシートが領収書を兼ねます」と言われたことはありませんか?

店舗運営においては、お客様から「宛名が記載された領収書が欲しい」といわれた場合に備え、手書きの領収書を準備しておきましょう。

領収書は消せない筆記用具で記載する

記載の際に気を付けたいのは、えんぴつや消せるボールペンなどは避けることです。これらで記入された領収書は悪意があればあとで書き換えることができ、税務調査の際にあらぬ疑いをかけられてしまう恐れがあります。

逆に領収書をもらう際には、消えない筆記用具で書かれているかをきちんと確認しましょう。

領収書の宛名を間違えたら?訂正方法は2つ

領収書 宛名

領収書の内容に誤りがある場合は、領収書を発行する側が訂正します。軽微な修正であっても、受け取る側で手を加えることはできません。

再発行ができる場合は再発行する

領収証の再発行には不正使用の恐れがあるため、できるだけ避けたほうがよいでしょう。会社名や氏名は名刺で確認する、記載内容をメモなどに試し書きしてから書き写すなど、誤りをなるべく減らす工夫をしましょう。

逆に領収書を発行してもらう立場で考えると、再発行は一般的に難しいと考えておいたほうがよいでしょう。記載内容に誤りがないかをその場で確認し、もし誤りがあれば再発行が可能かどうかを早めに発行者に問い合わせるのがおすすめです。
受け取ってから時間が経過している場合は、一般的に領収書の再発行は不正利用の恐れなどから行なっていないところが多く、断られてしまうかもしれません。もし可能な場合は、発行者の指示に従って再発行してもらいましょう。

領収書の再発行については、こちらの記事もご確認ください。

基本的に「領収書の再発行」はNG。依頼されたときの注意点や経費精算の代替策を解説

二重線+訂正印で訂正する。誤った内容を“隠す・消す”のはNG

再発行ができない場合、二重線と訂正印で領収書を訂正する方法があります。正しい手順で訂正した領収書は、正規の書類として問題なく使用できます。

領収書を発行する側が、訂正したい箇所に二重線を引き、その上に訂正印を押します。そして近くの余白に正しい内容を記載します。その際、訂正前の内容がわからなくなるような訂正の仕方をしてはいけません。必ず訂正前・訂正後の両方がわかるようにしておきます。

領収書 宛名

使用する印鑑は、一般的には領収書を発行した担当者の印鑑か会社印、個人事業主の場合は個人印となります。

なお、朱肉を使わない浸透印(インクが内蔵されたハンコ)は基本的に公的な書類や契約では使用できないもののため、受け取る会社によっては訂正印としてであっても使用不可となる場合があります。領収書を発行する際は、浸透印の使用はなるべく避けるようにしましょう。

繰り返しになりますが、訂正前の情報が見える状態で正しい内容を記載しなおすのが基本です。修正液や修正テープで消す、えんぴつで書いたものを消しゴムで消す、消せるボールペンで書いたものをこすって消す、など誤った内容を隠す・消すような訂正方法は、領収書として認められない可能性もあるため注意しましょう。

まとめ

  • 領収書は、お金を受け取った側(=店舗)が発行し宛名を記載する
  • 領収書の宛名には、支払者の会社名や氏名を省略せずに記載する
  • 宛名を書く前に名刺で記載内容を確認するなどミスを抑制するための工夫をするとよい
  • 領収書の内容は消えない筆記用具で記載する
  • 記載を誤ったときの対応は「再発行」または「二重線+訂正印」の2つ

領収書は、もらう側としては経理処理や税務調査において必要な書類であり、発行する側としては金銭を受領したことを証明する大切な書類です。民法ではお金を受け取った側が領収書を発行することになっています。領収書を書くのはお店側の人なら誰でも構いません。領収証を発行する際の注意事項は、スタッフにもルールとして運用を徹底できるようにマニュアル化しておくのも一案です。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

小川 和哉(おがわ かずや)会計コンサルタント

2015年より国税局が開催する「パソコンによる記帳指導」の指導員を担当。必要に応じてファイナンシャルプランナーとして企業の財務や個人の家計の改善のアドバイスと手続き、管理、アフターフォローも実施。

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