ディスプレイ広告活用の前に~GDNとYDA(旧YDN)の違いを理解する
里田 実彦(さとだ みつひこ)マーケティングプランナー/コンテンツ・ストラテジスト

インターネット上で広告を出稿するとき、特にディスプレイ広告を配信する際には、GoogleのGDN(Googleディスプレイネットワーク)またはYahoo!のYDA(Yahoo!ディスプレイ広告/旧YDN)を利用することが一般的です。
GDNとYDAは、基本的に類似したサービスですが、細部ではさまざまな違いがあります。本記事では、GDNとYDAの違いや選定ポイントなどを解説します。
この記事の目次
GDN(Googleディスプレイネットワーク)とは
GDNとは、Googleディスプレイネットワークの略で、Googleが提供する関連サービスサイトや、Googleが契約しているサイトの広告枠に、テキストやバナー、動画などを掲載することができます。
出稿可能なサイトの数は200万以上にのぼり、Webユーザーの80%近くにリーチできるといわれています。具体的には、Googleの関連サービスの「YouTube」や「Gmail」に加え、「価格.com」「食べログ」「Ameba」「教えて! goo」「BIGLOBE」「livedoor」「ライブドアブログ」など、さまざまなポータルサイトや個人ブログに広告掲載が可能です。
YDA(Yahoo!ディスプレイ広告/旧YDN)とは
YDAとは、Yahoo!ディスプレイ広告のことで、以前はYDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)という名前で提供されていましたが、2020年にYDAへと名称が変更されています。
YDAを利用すると、Yahoo! JAPANが運営、あるいは提携しているWebサイトやアプリに広告を出稿することができます。具体的には、「Yahoo!ニュース」、「Yahoo!ショッピング」、「Yahoo!天気」をはじめ、「Yahoo!知恵袋」、「クックパッド」、「NAVER」など、多くの有名サイトへの広告配信が行えます。
Yahoo! JAPANは、月間総PV(ページビュー)約840億、アクティブユーザー数は約8400万人を誇る巨大サイトです。そこを配信先として選択できることは、YDAの大きな特徴だといえるでしょう。
GDNとYDAの違い
GDNとYDAはディスプレイ広告の出稿ができるという点では、類似のサービスだといえますが、いくつかの違いが存在します。下記ではおもな違いについて解説します。
掲載できるサイトが異なる
前述したとおり、GDNとYDAの大きな違いは配信面であり、掲載されるサイトのラインナップが異なります。広告を配信したいサイトがイメージできているならば、狙うメディアに配信できるサービスを選ぶと良いでしょう。
GDNは、YouTubeなどのGoogle関連サービスや、「食べログ」「価格.com」などの提携サイトのほか、Google AdSenseで契約している数多くの企業サイト、オウンドメディア、個人サイトまで幅広く広告配信することが可能です。
一方、YDAでは、Yahoo!ニュースをはじめとするYahoo!JAPANが運営する数々のサイトに加え、朝日新聞や読売新聞といった新聞社のニュースサイトなど、著名なサイトにも配信できます。
GDN とYDAを単純に比較はできませんが、より広いユーザーに配信したいならGDN、有名サイトを中心に配信したいならYDAという大まかな区分が可能です。
ターゲティング・詳細設定の違い
GDNもYDAも、特定のユーザーを狙って広告を配信することができ、下記の2種類が基本的なアプローチの考え方です。
- サイトに依存せずユーザーの属性に応じて出稿する(ユーザーターゲティング)
- 狙うユーザーのアクセスが多いサイトに出稿する(コンテンツターゲティング)
出稿先のサイトをセグメントしていくことを「ターゲティング」と呼びます。GDNとYDAのターゲティング手法は細かな要素、設定内容に相違はありますが、基本的には同じような設定が可能です。主に違いがあるのは、人でセグメントしていく「ユーザーターゲティング」です。
まず、GDN、YDAのそれぞれで設定可能なターゲットセグメントについてまとめておきます。
GDN | YDA | |
---|---|---|
ユーザー属性 |
|
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興味に関連したセグメント |
|
|
購買意向に基づくセグメント |
|
|
閲覧履歴や広告主の持つ データを活用したセグメント |
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過去の検索履歴を活用したセグメント |
※Googleサービスへ配信のキャンペーンのみ |
|
デモグラフィックの選択肢と粒度の違い
GDNとYDAではユーザー属性におけるセグメントにおいて、ほぼ同じようなデモグラフィックのターゲティングができます。
異なる点は、年齢区切りの粒度です。GDNは24歳以上から10歳単位での設定なのに対し、YDAでは5歳単位で設定でき、若年層であれば2歳単位でも設定可能です。
ほかにも、「世帯年収」「子供の有無」を設定できるのはGDNのみですが、YDAは「個人年収」「世帯資産」などを設定できるといった違いがあります。
カスタムセグメントができるのはGDN
GDNでは、特定のトピックへの興味関心・購入意欲を持つユーザーや、特定エリア、キーワード、特定の種類のアプリを使用しているユーザーなど、詳細なユーザー行動によって柔軟にセグメントを設定することができます。
具体的には、キーワード、(広告を表示したい)WebサイトのURL、(広告を表示したい)アプリを登録すると、広告を表示するのに適したユーザーに絞って配信を行うことができます。
例えば、下記のような設定が可能です。
設定項目 | 設定内容 | 配信される対象ユーザー(想定) |
---|---|---|
キーワード (興味や関心) |
|
設定したキーワードのエリアや価格帯、条件に応じたホテルの予約意向があるユーザー |
URL |
|
設定したURLと似ているWebサイトを閲覧しているユーザー ※設定したURLに広告が配信されるわけではない |
アプリ |
|
設定したアプリと似ているアプリを使用しているユーザー ※設定したアプリに広告が配信されるわけではない |
サーチキーワードターゲティングはYDAのみ
GDNが実際にキーワードを検索した人を含む、キーワードに興味を持ちそうなユーザー全般をターゲティングするのに対し、YDAのサーチキーワードターゲティングは、実際にYahoo! JAPANで特定のキーワードを検索したユーザーにのみ広告を配信できるターゲティング手法です。
検索広告で自社サイトをクリックしなかったユーザーへのフォロー施策にもなりますし、顕在層が検索するようなキーワードだけに絞ってアプローチすることもできます。
特定カテゴリーへの興味を軸にした配信はどちらも可能
特定の趣向や興味を持った人物に対しては、どちらもターゲティングして広告を表示できる機能があります。
GDNでは「アフィニティカテゴリ」が相当し、2024年2月現在、設定できるカテゴリーは下記のとおりです。(一部抜粋)
- 乗り物、交通機関 » 二輪 / 四輪マニア » 高性能車、高級車マニア
- テクノロジー » ハイテク派 » オーディオ好き
- スポーツ、フィットネス » スポーツファン » 野球ファン
- ショッピング好き » 買い物好き(店舗タイプ別)
- ニュース、政治 » ニュース好き » ローカル ニュース好き
- メディア、エンターテイメント » 映画好き » 南アジア映画派
- メディア、エンターテイメント » ゲーマー » アクション ゲーム好き
- ライフスタイル、趣味 » ライブイベントに頻繁に参加
- フード、ダイニング » 料理好き » 簡単クッキング派
- 銀行、金融 » 投資家
YDAでは「オーディエンスリストターゲティング」が、「特定のカテゴリーに興味・関心を持つユーザー、特定の属性を持つユーザー、ライフイベントを迎えるユーザー」に対して広告を配信するセグメント機能です。
カテゴリータイプは「興味関心カテゴリー」「購買意向カテゴリー」「属性・ライフイベントカテゴリー」の3つに分かれています。
興味関心カテゴリー | 特定の商品やサービスに興味を持っているユーザーをターゲットにできるカテゴリー |
ほか、多数 |
---|---|---|
購買意向カテゴリー | 特定の商品をショッピングカートに入れる、検索しているユーザーをターゲットにできるカテゴリー |
|
属性・ライフイベント カテゴリー |
年収などの属性をベースに、結婚や出産などのライフイベントを控えているユーザーをターゲットにできるカテゴリー |
|
アカウントの開設方法
GDN、YDAともに広告配信には、事前のアカウント開設が必要です。おもな違いはYDAでは個人アカウントが利用できない点でしょう。
GDNの場合
Google関連のWebサイトに広告を配信するには、Google広告アカウントを開設する必要があります。「Google広告」のトップページにアクセスし、「いますぐ開始」をクリックすることで「Google広告アカウント」が開設できます。すでに使用しているGoogleアカウントに紐付けることも可能です。
その際に「スマートモード」「エキスパートモード」を選ぶことができます。スマートモードはいわゆる簡易版のことで、GoogleのAIが自動的に広告を最適化してくれます。エキスパートモードは手動で細かく設定や運営ができるもので、スマートモードからエキスパートモードへの移行は容易にできます。また、両モードとも開設そのものは無料です。
エキスパートモード | スマートモード | |
---|---|---|
キャンペーン | すべてのキャンペーンで設定可能 | スマートアシストキャンペーンのみ |
管理 | 手動で設定とキャンペーンタイプを管理 | 予算目標を設定するだけで、あとは自動的に管理される |
メンテナンス | 1週間1時間以上は必要 | 1週間15分程度で可能 |
設定 | キーワードの選定や入札単価などを自由に設定できる | 1週間15分程度Googleのガイドに従った設定、最適化されたキーワードで可能 |
レポート | 詳細なレポートを確認できる | 見やすいが簡易的なレポートになる |
YDAの場合
Yahoo!関連のサイトやアプリに広告を配信するためにはYahooビジネスアカウントの作成が必須です。GDNとは異なり、個人のYahoo!アカウントは利用できません。Yahoo!ビジネスアカウントも開設時に費用はかかりません。
運用は予算の管理方法が異なる
運用について、開設したアカウントの画面上ですべての設定が可能なため、大きな違いはありません。しかし、予算の管理方法は、GDNとYDAで若干異なります。
GDNの場合
GDNでは、リスティング広告とディスプレイ広告を同じ予算枠で管理できます。そのため、月の途中でリスティング広告に割り振った予算をディスプレイ広告に回すなどの流動的な運用が可能です。
また、1日の広告予算配分ペースを「標準(均等配分)」と「集中化(早めに予算を消化)」の2つの設定で使いわけられるという特徴があります。
YDAの場合
YDAでは、リスティング広告とディスプレイ広告の予算枠が分かれているので、予算設定の段階で、リスティング広告の予算とディスプレイ広告の予算を切りわける必要があります。いったんリスティング広告に割り振った予算をディスプレイ広告にそのまま転用することはできませんが、それぞれの予算配分を設定し直すことで修正できます。このように、運用面においては予算の管理方法以外に大きな違いはなく、広告を出稿する企業ですべての運用作業を行うことができます。しかし、専門用語の多さなどから、自分たちだけで運用する自信がないという声も聞こえます。そのため、多くの代理店がディスプレイ広告の運用代行サービスを行っています。細かな設定だけではなく、効果も測定し、それに基づくターゲティングの変更といった提案まで提供してくれるサービスもあります。
入稿する広告の規定の違い
GDNとYDAでは、入稿する広告のサイズ規定も異なります。両方運用する場合は、当然、それぞれの規定に対応した広告を用意しなければなりません。バナータイプの広告の場合、GDNでは50種類、YDAでは9種類のサイズバリエーションがあります。その両方に共通するサイズを本項では記載しておきます。
サイズ(横幅*立幅) | 表示場所(GDN、YDA共通) |
---|---|
300*250(pixel) | PC/タブレット/スマートフォン |
728*90 | PC/タブレット |
160*600 | PC/タブレット |
320*50 | スマートフォン |
300*600 | PC/タブレット |
468*60 | PC/タブレット |
320*100 | スマートフォン |
GDNとYDAの両方で配信する場合、全サイズ分を最初から用意するのは難しいでしょう。まずは、この共通するサイズを用意することから始めるのが現実的です。
双方の対応サイズの詳細は下記のとおりです。
Google広告ヘルプ(https://support.google.com/google-ads/answer/1722096)
Yahoo!広告ヘルプ(https://ads-help.yahoo-net.jp/s/article/H000044175?language=ja)
また、レスポンシブタイプの広告(Yahoo!ではレスポンシブ広告、Googleではレスポンシブディスプレイ広告)の場合、下記のサイズ設定があります。こちらはYDAのサイズ規定を満たしておけば、Googleの規定にも対応できるようになっています。
画像の種類 | YDA | GDN | 横縦比率 |
---|---|---|---|
横長 | 1,200*628 | 600*314以上 | 1.91:1 |
スクエア | 300*300 | 300*300以上 | 1:1 |
ロゴ(省略可) | 180*180 | 128*128以上/512*512以上 | 1:1/4:1 |
GDNかYDAで迷った際の選定ポイント
GDNとYDAは、運用面(ターゲティングや予算管理、アカウントの開設)に大きな差はありません。最も異なるのが、広告を掲出できるサイト、サービスの違いです。それぞれ一長一短があり、GDNかYDAか、どちらに出稿するのか迷うかもしれません。
特定のサイトに出稿したい意向がなければ、両方を活用するのがおすすめです。そのうえで、より効果が大きく、使いやすい方に集約していくという考え方もあります。また、両方を存続させつつ、ウエイトのかけ方を変えていってもいいでしょう。
予算の都合などで、どちらか一方で広告を配信してみたいという場合もあるかと思います。そのようなときは、それぞれの機能で興味があるものがあれば、まずはそれを優先するという考え方もあります。
少額の予算からはじめることができ、効果検証からの改善も容易であることが運用型広告の大きなメリットです。GDNとYDAのどちらを活用していくのか、あるいは両方活用するのか、まずはそこから検証してみてください。
まとめ
- GDNはYouTubeや個人ブログ等、広範なサイトに配信できる一方、YDAはYahoo!ニュースや大手メディア等、著名なサイトが中心
- ターゲティングでは、GDNは柔軟な「カスタムセグメント」、YDAは検索履歴を追う「サーチキーワードターゲティング」が特徴的な機能
- GDNは個人アカウントで始められ予算の融通が利くが、YDAはビジネスアカウントが必須で、広告種別ごとに予算を管理する
- どちらが良いかは目的次第で、配信したいサイトや使いたい機能で選ぶ。迷う場合は両方を少額から試してみるのが推奨される
GDNとYDA、どちらを選べばいいのか、本記事でその違いを解説してきましたが、まだ悩んでしまうという方も多いでしょう。両方のサービスを並行して活用されている企業は珍しくありません。一方で、明確な目的を持ってどちらかに絞るという選択をされている企業もあります。例えば、ターゲティング・詳細設定の違いを明確にして広告を出したい先があるならば、そこに出稿できるサービスを選択するべきです。YouTubeに出したいならGDN、LINEに出したいならYDAになります。まず「やってみる」ことが重要です。実際に体験してみることで、どちらが自分たちに合っているのか、より効果が望めるのかが見えてくるはずです。幸い、両サービスともにスモールスタートできるので、まずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人

Airレジ マガジン編集部
自分らしいお店づくりを応援する情報サイト、「Airレジ マガジン」の編集部。お店を開業したい方や経営している方向けに、開業に向けての情報や業務課題の解決のヒントとなるような記事を掲載しています。

里田 実彦(さとだ みつひこ)マーケティングプランナー/コンテンツ・ストラテジスト
有限会社std代表
広告制作ディレクター、ライターを経て、ダイレクトマーケティングを学ぶ。草創期からウェブマーケティングに携わってきた。多くの企業のコーポレートサイト、オウンドメディアにとどまらず、顧客コミュニケーションを軸としたコンテンツの活用、成果への貢献を意識した提案、支援を実行している。