【経営者必見】従業員が1人でも加入は必要?社会保険への加入条件を解説!
社会保険は、従業員にけがや病気、障がいなどが発生した際、生活を安定させるための保険制度です。経営者としては、制度を理解しておくことが重要ですが、難しいと感じる人も多いのではないでしょうか?今回は社会保険の加入条件に注目し、「従業員1人の場合も加入が必要?」「個人事業主が従業員を雇用した場合は?」など、個別のケースも詳しく解説します。
この記事の目次
事業所の社会保険への加入条件
事業所などが従業員を雇った場合に加入しなければならない社会保険は「健康保険」と「厚生年金保険」です。加入する事業所の条件は、法人の形態や規模、業種によって異なります。法律によって加入することが定められている事業所を「強制適用事業所」といいます。また、加入義務はありませんが、厚生労働大臣の認可を受けて適用になる事業所を「任意適用事業所」といいます。
社会保険の強制適用事業所
社会保険の適用事業所として加入が義務付けられるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)と、一部の個人事業主です。適用業種は次で詳しくみていきましょう。
適用業種と非適用業種について
前述のとおり、法人は社会保険に加入する義務があります。個人事業主でも、物品販売業、医療事業など17業種は、常時従業員を5人以上雇用していれば強制適用事業所となります。
一方、農業、林業、漁業、飲食店や理容店などのサービス業、神社などは非適用業種で加入義務はありません。
<従業員の常時5人以上雇用で適用となる17業種>
- 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
- 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
- 鉱物の採掘又は採取の事業
- 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
- 貨物又は旅客の運送の事業
- 貨物積みおろしの事業
- 焼却、清掃又はと殺の事業
- 物の販売又は配給の事業
- 金融又は保険の事業
- 物の保管又は賃貸の事業
- 媒介周旋の事業
- 集金、案内又は広告の事業
- 教育、研究又は調査の事業
- 疾病の治療、助産その他医療の事業
- 通信又は報道の事業
- 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業
- 弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業
従業員数の数え方
従業員数を数える場合は、正社員、パートタイマー、アルバイトなどの名称にかかわらず、下記のいずれかに該当する人を対象にします。
- 期間の定めなく雇用されている人
- 過去1年以上続けて雇用されている人。または雇い入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる人(一定の期間を定めて雇用されている人または日々雇用される人であってその雇用契約期間が反復更新されて、事実上①と同等と認められる人)
社会保険の任意適用事業所
強制適用事業所に該当しなくても、従業員の半数以上が同意した上で、事業主が申請し厚生労働大臣の認可を受けることで、適用事業所になることができます。従業員の同意が必要になるため、従業員の半数以上が希望した場合に検討するのがよいでしょう。加入するメリットとデメリットには下記のようなものがあります。加入時期を検討したほうがよい場合もあるので、税理士や公認会計士に相談するのがよいでしょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
事業所 |
福利厚生が充実することで、従業員の確保、定着が期待できる |
保険料の負担が発生する |
従業員 |
国民年金に加えてより手厚い保障が受けられる |
国民年金より保険料負担が大きくなることが多い |
社会保険への加入の要・不要をフローチャートで確認
社会保険の加入が必要か不要かは、下記のフローチャートで確認することができます。
法人、もしくは5人以上を雇用している適用業種の個人事業所は加入する、と覚えておくとよいでしょう。
従業員の社会保険への加入条件
従業員は労働時間によって被保険者になるかどうかが変わってきます。正社員のほか、パートタイマー・アルバイトでも、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している労働者の4分の3以上の人も対象です。
労働時間によって加入の対象か否かが分かれますので、まず従業員の労働時間を確認しましょう。加入したほうがよいかは従業員の考え方にもよりますので、従業員の働いた時間が所定の労働時間前後の場合は、従業員本人としっかり話し合ってみるとよいでしょう。
正社員の場合の加入条件
強制適用事業所に勤務している正社員の場合は、必然的に社会保険に加入することになります。正社員でも週40時間の勤務ではなく、1日の労働時間が8時間より短い場合もありますが、会社の方で正社員と定義して構いません。
パートタイマー・アルバイトの場合の加入条件
現在社員が101人以上であれば(2024年10月からは社員数が51人以上の会社も適用)下記の人も加入対象です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(基本給および諸手当を指す。残業代や賞与などは含まない)
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
2024年10月以降社会保険の適用範囲が拡大!変更点を確認しましょう
昨今の労働政策では、社会保険に加入できる従業員の範囲を広げています。現在は101人以上の従業員がいる企業が対象ですが、前述したように2024年10月からは、従業員数51人以上の企業も、新たに社会保険の適用が義務化されます。それぞれの従業員のライフプランに合わせて労働時間を設定していく必要がありますので、該当する会社は社会保険労務士に相談してみてください。
まとめ
- 社会保険加入は強制加入と任意加入に分かれる
- 個人事業主であっても、適用業種かつ従業員が5人以上であれば社会保険の強制適用事業所となる
- 任意適用は従業員の半数以上の同意と申請によって行える。ただし加入タイミングは財務状況などを検討して行うことが望ましい
社会保険への加入は雇用主としての義務です。少しでも疑問が生じた場合は、ぜひ社会保険労務士や税理士、公認会計士に相談してみてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
脊尾 大雅(せお たいが)社会保険労務士・精神保健福祉士
精神科クリニックにてソーシャルワーカーとして、依存症の治療や自殺防止対策に取り組む。2007年より日本初のEAP専門会社 株式会社ジャパンEAPシステムズにて企業のメンタルヘルス対策、ハラスメント防止、生産性の維持向上に取り組む。本社EAP相談室室長を経て、2016年に秋葉原社会保険労務士事務所(現:秋葉原社会保険労務士法人)を創業。がん罹患者の雇用や多様な働き方の実践を実験的に行い、2023年10月からは社会課題を解決し、健康度への影響を研究する会社「そうぞうする株式会社」を設立。現在は、志ある企業が未来を創る活動として、一般社団法人経営実践研究会や一般社団法人日本未来企業研究所の活動も本業として活動している。