両立支援等助成金の出生時両立支援コースとは?助成対象や支給要件をわかりやすく解説
両立支援等助成金とは、仕事と家庭の両立支援や、女性の活躍推進に取り組む際に活用できる助成金です。両立支援等助成金には5つのコースが用意されていますが、本記事では、男性が育児休業を行う際に申請できる「出生時両立支援コース」について詳しく解説します。
この記事の目次
両立支援等助成金の出生時両立支援コースとは
両立支援等助成金(出生時両立支援コース)とは、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境や業務体制の整備を行い、実際に育休等を取得させた事業主に支給される助成金です。男性の育休等の取得促進を目的とした助成金で、いわゆる「子育てパパ」や「イクメン」を支援する狙いがあります。
出生時両立支援コースの助成対象となる取り組みと支給額
出生時両立支援コースで助成対象となる取り組みは次の3種類になります。
- 第1種:男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境の整備措置を複数実施するとともに、育児休業取得者の業務を代替する労働者の残業抑制のための業務見直しなどが含まれた規定に基づく業務体制整備を行い、男性労働者に産後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた場合
②代替要員加算:①の対象となる男性労働者の育児休業期間中に、代替要員を新規雇用(派遣を含む)した場合 - 第2種:①を受給した事業主において、育児休業を取得した男性労働者が第1種申請に係る者以外に2名以上存在し、かつ男性労働者の育児休業取得率を3年以内に30%以上上昇させた場合
第1種 | ①育児休業取得 | 20万円 |
---|---|---|
②代替要員加算 | 20万円(3人以上45万円) | |
第2種 | ③育児休業取得率の30%以上上昇 | 1年以内達成:60万円<75万円> 2年以内達成:40万円<65万円> 3年以内達成:20万円<35万円> |
生産性要件を満たした事業主は<>の額が支給されます。
②は①とセットの取り組み・申請になります。
出生時両立支援コースの支給要件
次のいずれにも該当する場合に支給されます。
第1種 |
|
---|---|
第2種 |
|
共通 |
|
申請は、第1種→第2種の順に進めていきます。以下、順番に見ていきましょう。
【第1種】雇用環境整備の措置を2つ以上行う
育児・介護休業法に規定する雇用環境整備に関する措置のうち、以下①~④の取り組みを2つ以上行います。
- 雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
- 育児休業に関する相談体制の整備
- 雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供
- 雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知
これらの取り組みは、対象育児休業取得者の育児休業開始日の前日までに実施する必要があります。
【第1種】業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制を整備する
自社の就業規則等に、以下の事項が含まれた制度を整備します。
- 育児休業取得者の業務の整理、引き継ぎを行うこと
- 引き継ぎ対象となった業務について、見直しを検討し、検討結果を踏まえて必要な対応を行うこと
具体的には、以下の内容が規定例として公開されていますので、整備する際の参考にしましょう。
「会社は、育児休業を取得する労働者が生じたことに伴い当該労働者の業務を代替することとなった労働者の業務の増加に伴う負担を軽減するため、育児休業を取得する労働者の業務の整理・引き継ぎに係る支援を行うとともに、当該労働者の業務を代替することとなった労働者への引き継ぎの対象となる業務について、休廃止・縮小、効率化・省力化、実施体制の変更、外注等の見直しを検討し、検討結果を踏まえて必要な対応を行うこととする。」
策定後、育児休業取得者が生じた場合は、定めた規定に従って、業務体制の整備等を行います。
なお、本規定の策定についても、対象育児休業取得者の育児休業開始日の前日までに実施する必要があります。
【第1種】男性労働者が育児休業を取得する
雇用保険の被保険者として雇用する男性労働者が、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得します。育児休業を取得する5日間のうち、4日以上は所定労働日に対する休業であることが必要になります。
土日が所定休日の中小企業で、以下2パターンの育休取得例で考えてみましょう。
項目 | A | B |
---|---|---|
4/1(木) | 育休 | 育休 |
4/2(金) | 育休 | 育休 |
4/3(土) | 育休 | 育休 |
4/4(日) | 育休 | 育休 |
4/5(月) | 育休 | 育休 |
4/6(火) | 労働 | 育休 |
4/7(水) | 労働 | 労働 |
判定 | × | ○ |
AとBはいずれも連続5日以上の取得要件は満たしていますが、育児休業期間中の所定労働日はAが3日、Bが4日になっています。Aは所定労働日が「4日」以上の要件を満たさないため対象外となり、Bはこの要件を満たすため対象となります。
【第2種】第1種の助成金を受給する
第2種は、第1種の助成金を既に受給していることが要件になります。第2種のみを申請することはできませんので、第2種を申請する場合は、必ず第1種の助成金を受給してから申請するようにしましょう。
【第2種】雇用環境整備の措置を2つ以上行う&業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制を整備する
第2種申請時においても、第1種と同様に、雇用環境整備に関する措置①~④の取り組みを原則として2つ以上実施し、業務見直しに係る規定に基づき業務体制を整備していることが必要になります。第1種申請時と同じ取り組み、制度で問題ありませんので、第1種申請後も継続して運用するようにしましょう。
【第2種】育児休業取得率を3年以内に30%以上上昇させる
第2種は、男性の育児休業取得率を目標値以上に上昇させる必要があります。具体的には、第1種の申請をしてから3事業年度以内に、男性労働者の育児休業取得率が30%以上上昇させることが要件になっています。男性労働者の育児休業取得率は、以下の方法で計算して比較します。
「ある事業年度において育児休業を取得した男性労働者数÷同事業年度において配偶者が出産した男性労働者数=男性労働者の育児休業取得率」
※男性労働者はいずれも雇用保険の被保険者に限ります。
※小数第1位以下は切り捨てになります。
30%以上上昇を達成した年度が早いほど、受給できる助成金の額が高くなります。
【第2種】2名以上の男性労働者が育児休業を取得する
第1種で申請した男性労働者の他に、第1種の申請日以降に、雇用保険の被保険者として雇用する男性労働者2名以上が育児休業を取得する必要があります。
なお、第2種の対象となる男性労働者2名以上が取得する育児休業については、連続5日の取得日数要件はありませんので、例えば2日間など、5日未満の育児休業でも構いません。
【共通】育児休業制度などを就業規則に定める
支給申請日時点で施行されている育児・介護休業法に則り、「育児休業」、「所定労働時間の短縮措置」などの制度を就業規則に整備する必要があります。
【共通】次世代法に基づく一般事業主行動計画を策定し、届け出、公表、周知を行う
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を作成し、労働局への届け出、ホームページ等による公表、従業員への周知を行う必要があります。
- 一般事業主行動計画の作成
厚生労働省のホームページにさまざまなモデル行動計画が掲載されていますので、こちらを参考に作成しましょう。 - 一般事業主行動計画の届け出・公表・周知
項目 | 方法 |
---|---|
届け出 | 郵送、持参、電子申請など(届け出先は都道府県労働局雇用環境均等部(室)) |
公表 | 自社ホームページまたは「両立支援のひろば」への掲載など |
周知 | 事業所内に掲示、手渡し又はメールによる配布、イントラネットへの掲載など |
【共通】男性労働者を支給申請日まで継続して雇用する
対象の男性労働者を支給申請日まで、雇用保険被保険者として継続して雇用することが必要になります。支給申請前に対象者が離職してしまった場合は原則として対象外になりますのでご注意ください。
出生時両立支援コースの支給申請について
項目 | 第1種 | 第2種 |
---|---|---|
申請期間 | 育児休業の終了日の翌日から起算して2カ月以内 | 第2種の支給要件を満たした事業年度の翌事業年度の開始日から起算して6カ月以内 |
申請先 | 本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室) | |
申請方法 | 郵送または持参(郵送の場合は簡易書留で送付) | |
申請書類 (共通) |
|
|
申請書類 (個別) |
|
|
- 生産性要件に該当する場合は、生産性要件算定シート、算定の根拠となる証拠書類が必要
- 代替要員確保は、第1種申請時に併せて申請
上記のほか、所定の申請書が必要になります。フォーマットおよび記入マニュアルは、厚生労働省のホームページから取得できます。
出生時両立支援コースの利用に関する注意点
以下のいずれかに該当する場合は支給対象外となりますので注意しましょう。
- 支給申請日の前日から起算して過去1年間において、「育児・介護休業法」「次世代育成支援対策推進法」「男女雇用機会均等法」「パートタイム・有期雇用労働法」「女性活躍推進法」の重大な違反があることにより、助成金を支給することが適切でないと認められる場合
- 支給申請時点で「育児・介護休業法」に違反し、同法第56条に基づく助言または指導を受けたが是正していない場合
まとめ
- 両立支援等助成金の出生時両立支援コースとは、男性労働者が育児休業を取得するときに受給できる助成金のことである
- 育児休業等を取得する前に所定の取り組みを実施し、規程を整備することが必要になる
- 生産性が向上した場合には助成額がアップする
厚生労働省の最新の調査(2021年度)によると、育児休業取得者の割合は、女性が85.1%に対し、男性は13.97%に留まっており、2020年度(12.65%)から若干上昇したとはいえ、男性の育休取得率は女性に比べて大幅に低いのが現状です。5日間の育休を付与することで助成金を受給でき、男性労働者や家族にも安心を与えることができます。助成金を上手に活用しながら、仕事と育児を両立しながら活躍できる職場環境を整備し、優秀な人材の確保・定着を図っていきましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/