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はじめて「請求書」をもらったら。お店を開くなら知っておきたい「請求書払い」のやり方・注意点

請求書払い

開業すると、取引先から「請求書払いでいいですか?」と言われる機会が出てくるでしょう。そもそも請求書払いとは何のことを指すのか? 取引先からもらう請求書の内容はどのように確認すればいいのか? もし取引先からもらう請求書の内容に不備があった場合は自分にどのようなデメリットが生じるのか? 請求書払いの手順や注意点も含めて解説します。

この記事の目次

請求書払いとは

請求書払いとは、いわゆる「後払い」「掛け払い」「掛け取引(かけとりひき)」のことです。商品を購入した時点で料金を支払うのではなく、一定期間の取引をまとめて指定された期日までに支払うことを指します。企業や個人事業主間での取引は、一般的に請求書払いが導入されています。

なぜ企業や個人事業主は請求書払いをするのか?

一定期間の取引をまとめて、指定日までに支払う「請求書払い」ではない方法に「都度払い」があります。都度払いと請求書払いを比較すると、なぜ企業や個人事業主が請求書払いを導入するのか、理解しやすくなります。

例えば、飲食店が企業向けにお弁当の販売を始めた場合、都度払いだと毎日企業から代金を受け取り、金額に誤りがないか計算する必要があります。一方、請求書払いを導入した場合には、毎日代金を受け取る必要がなく、月に一度まとめて代金を請求し、支払われた金額を確認するだけで済みます。

このように請求書払いは、購入側は代金の支払い、販売側は受け取りの確認業務が減るという点から、多くの企業や個人事業主に導入されています。

請求書払いの一般的な手順

請求書払いをはじめる前に、支払期日をあらかじめ取引者間で取り決めをするのが一般的です。多くの場合は支払い側の支払いルールによって決定しますが、販売する側が大手企業の場合には、販売側のルールによって期日が取り決められることがあります。また、請求書が発行されてから実際に支払うまでの期間のことを「支払サイト」と言いますが、支払期日が取り決められた以降は、支払い側は請求書を受け取り、支払サイトを管理し、支払期日に遅れないように資金管理を行って、支払い手続きを実施することになります。
例えば、月末締め翌々月25日払いの請求書払いは下図のようなイメージになります。

請求書払いのイメージ

請求書払いを導入するにあたって大切なこと

請求書払いは、請求書の発行元である販売側にも、請求書の受取先である購入側にもメリットがあるため、ほとんどの企業や個人事業主の取引において利用されている支払い方法です。
しかし、必ずしもすべての企業や個人事業主が請求書払いを利用できるわけではありません。なぜなら販売側の立場では、代金の支払いを受けられない「未回収リスク」が伴うため、信用力が乏しい取引先に対し請求書払いの導入はリスクとなります。そこで販売側はこの未回収リスクを軽減するために「与信管理」という方法によって、請求書払いをしてよい取引先かどうかを確認する場合があります。

もし、あなたがすべての取引先と請求書払いを実施したい場合には、個人的に利用しているクレジットカードの支払いやローン返済、他の取引先とすでに行っていた請求書払いの支払期日を守り、信用情報に傷を付けないことによって、取引先の信用を勝ち得ることが大切です。

(参考)与信管理と取引の関係性について

大手の企業間では、売上高の数値や現金預金や売掛金の残高を分析した数値である「流動資産比率」などを参考にして、安全に取引ができる金額の枠(与信枠)内で請求書払いが行われています。比較的小規模な企業や個人事業主の場合には、確定申告書の提出が求められる場合もありますが、与信枠が低く設定されている場合が多く、支払期日内に適切に支払いが継続されていれば、与信枠の上限引き上げなどができるようになります。

請求書払いのメリット

請求書払いのメリット

請求書払いを導入する最大のメリットは支払い業務の簡略化です。その結果として支払い漏れが減り、支払代金の過不足など人的なミスを減らすことができます。これ以外にも、請求書払いには副次的なメリットがあります。

当月仕入れた・購入した分を、支払期日にまとめて支払える

都度払いの場合には、何かモノを購入する際に必ず代金を支払う必要があります。しかし、請求書払いを導入すれば、購入したときに代金を支払う必要がなく、購入した分を支払期日にまとめて支払うことができます。つまり、1カ月代金の支払いを遅らせることができるため、資金繰りの面でもメリットがあります。

振込手数料の節約

都度払いを振り込みで行う場合、送金の度に振込手数料が発生します。しかし、請求書払いによって1カ月分をまとめて支払う方法の場合には、一度の支払いで代金の振り込みが完了しますので、振込手数料も一度発生するだけになります。

請求書払いを楽に・効率化するためのサービスもある

請求書払いを導入すると、それぞれの取引先から様々なフォーマットの請求書が届くようになります。また、請求書が紙媒体の取引先と、電子データの取引先があるため、すべての請求書を管理するのが大変だという人も少なくありません。しかし請求書払いを簡単に効率化できるサービスもたくさんあるので、請求書払いによるメリットのみを享受することも可能です。

請求書払いのデメリット

請求書払いのデメリットや必要な工夫

請求書払いを始める際に取引先の信用を勝ち得たにもかかわらず、支払い期日を忘れてしまい、取引先との約束を破って信用を失うことが請求書払いの最大のデメリットです。請求書払いや掛け取引のことを別名「信用取引」と言います。つまり、信用がなくなれば請求書払い利用が取り消しになる可能性もあるのです。

支払い遅延をしない工夫は?

支払い遅延をしない工夫として、請求書を受け取ったら支払期日を表計算ソフトに入れて管理したり、請求書をPDF化・ファイリングしたりするなど、統一フォーマットで情報の一元管理をしておくことです。また、自分が販売側としても請求書払いを導入する場合には、口座残高、入金予定額、支払予定額を管理しておかなければ、自分が支払わなくてはいけない期日に支払予定額が足りないということが起こり得ます。
つまり、支払遅延には「人的なミスにより請求書の確認漏れで支払いを忘れてしまうリスク」と、「自身の口座残高が足りず、残高不足により支払予定額を用意できないリスク」があります。これらのリスクを回避することができるサービスを利用することも、大切な意思決定だと思います。

もし、支払い遅延してしまったら

請求書の確認漏れにより支払いが遅延してしまった場合には、直ちに取引先に連絡をし、すぐに支払いを実施することをおすすめします。前述のように、自身の残高不足により期日までの支払いが困難な場合には、取引先への連絡は早ければ早いほど印象が良いため、期日より前にその事実を連絡し支払い方法などの相談をしておくと良いでしょう。

請求書を受け取った後の確認事項

請求書には、1カ月間の取引内容と金額が記載されているため、取引内容や金額に誤りがないかを確認する必要があります。まず、請求書払いをしている取引先との取引は、取引台帳などを作成しておき、取引内容があっているかどうかの確認をすること。また、請求書に記載された商品代金についても事前に約束した金額と違う可能性がありますので、取引内容だけではなく、代金が正確に記載されているかどうかの確認も必要です。

なお、取引内容や金額以外に、現在の制度で請求書に記載が必要な事項とインボイス制度導入に伴い記載が必要になる事項がありますので、併せて確認しましょう。

国が定めた現在の請求書=「区分記載請求書」とは

2019年(令和元年)10月1日に、消費税が10%へ引き上げられました。この引き上げでは、政策的な配慮から、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定額購読が契約された週2回以上発行される新聞」は税率が8%と定める「軽減税率制度」が実施されています。そこで、10%と軽減税率8%が適用されている商品を区分する目的で、「区分記載請求書」という形式の請求書作成が義務付けられています。

もし、区分記載請求書の要件を満たさない請求書を受け取った場合には、本来支払うべき税金よりも多く請求されている可能性があります。直ちに取引先に連絡し、正しい内容が記載された請求書を再発行してもらいましょう。
区分記載請求書で必要になる事項は下記の通りです。

  1. 発行者の氏名または名称
  2. 取引の相手方の氏名または名称
  3. 取引年月日
  4. 取引内容
  5. 代金の額
  6. 軽減税率の対象品目である旨
  7. 税率ごとに区分して合計した対価の額 

この他に記載したい内容については、各社のルールで自由に決めることができます。

<請求書の例>

区分記載請求書に必要な記載内容

インボイス制度導入に伴い、請求書は「適格請求書等保存方式」へ

2023年(令和5年)10月1日から、「インボイス制度」が施行されました。インボイス制度により作成する請求書は、区分記載請求書から「適格請求書」や「インボイス」と名称が変更されました。

記載が必要になる事項として、区分記載請求書で求められている記載事項以外に「適格請求書発行事業者の登録番号」が必要になります。この適格請求書発行事業者の登録番号は、税務署に対して適格請求書発行事業者になるように申請することで、後日税務署から通知される番号ですが、これを請求書へ記載する必要があります。もし、いずれかの内容が記載されていない場合には、仕入税額控除を受けられないため、多く税金を納めなければいけなくなる可能性があります。

(参考)適格請求書ではない請求書を受け取った場合の税額への影響

「適格ではない請求書」を受け取った場合と、「適格請求書」を受け取った場合

商品を仕入れた場合には、仕入れた商品に対応する消費税が発生することになります。そして通常であれば、この仕入れに対する消費税額は「仕入税額控除」といって、自分が販売代金として受け取っていた消費税額から控除することにより、消費税の納税額が計算されています。しかし、適格請求書ではない請求書の場合には、仕入税額控除の区分が10%なのか8%なのか不明確になるため、仕入税額控除として認められないことがあります。

例えば、100,000円に対し10%=10,000円の消費税を預かっていた場合、適格請求書で80,000円の商品仕入れがあれば、10%である8,000円の消費税を含めて支払いをしているため、10,000円から8,000円を控除した2,000円を国に納付することになります。しかし80,000円が適格請求書ではなかった場合には、8,000円の控除が認められず国に対して10,000円納付する必要があります。
なお、2023年(令和5年)の税制改正によって、課税売上が1億円以下の事業者は、2023年(令和5年)10月1日から2029年(令和11年)9月30日までの間は、「課税仕入れ」が「1万円未満(1枚の請求書、領収書の合計額)」であれば、従来の区分記載請求書でも仕入税額控除を受けることができる経過措置が設けられました。

受け取った請求書の保管方法と保存期間

請求書の保管方法は?

従来の制度では、すべて紙により保存することが求められていました。2022年(令和4年)1月1日以降は電子帳簿保存法が改正され、電子データで受け取った請求書は紙で印刷しても認められなくなり、データとして保存することが求められるようになりました。

なお、紙で受け取った請求書については、原則として紙での保管が必要になりますが、スキャナで電子化した上で「タイムスタンプ」をスキャンデータに付与することで、電子データで保存することが認められます。タイムスタンプとは、その電子データがある時刻に存在し、その後改ざんされていないことを証明するもので、第三者機関が付与します。タイムスタンプが付与された請求書は信頼できるものと証明され、取引する両社が不正できないように制度化されています。

請求書の保存期間は?

請求書などの企業や個人事業主の税金を計算する元となる資料は、会社法により7年間の保存期間が設定されています。2004年(平成16年)の会社法改正前は、大法人は7年、他の法人は5年と規定されていましたが、改正後は事業の規模に関係なく保存期間は7年間です。

「請求書払い」よくあるQ&A

請求書払いに関して、よくある質問をまとめましたので、参考にしてください。

Q1.販売と購入どちらも請求書払いを導入しているのですが、資金管理ができておらず、今月末の支払いが難しそうです。どのように対応すれば、取引先に迷惑をかけずに済みますか?
A1.まず、本当に資金確保ができないかどうか今一度確認しましょう。購入側への先払いの打診や、債権譲渡などの方法があります。販売についても請求書払いをしている場合、売掛金という債権が成立しています。売掛金を売却することをファクタリングと言いますが、ファクタリングサービスを利用することで、資金を一時的に確保することも可能です。しかし取引先債権の回収サイトや金額、信用度によってサービス会社に支払う手数料が変わりますので、利用の際には注意が必要です。
もしこれらの方法でも資金確保が難しいと判断した場合には、ただちに取引先に連絡し、状況を説明したうえで、分割決済など支払いの相談をしてみましょう。何も言わずに支払いが遅れるより、あらかじめ報告した方が信用への影響は少なくなります。
Q2.複数の取引先との間で請求書払いを利用しています。最初の取り決めに際して、末締め翌月末払い、末締め翌25日払い、末締め翌々10日払いと、それぞれ異なる契約をしてしまい、支払のタイミングがバラバラで、毎回振り込みに行くのが大変です。何かいい方法はないでしょうか?
A2.請求書払いを始める時に、契約書を締結しますが、契約書で支払いサイト(請求書が発行されてから実際に支払うまでの期間)について、できるだけ統一するよう交渉しないと、支払日がバラバラになり管理が煩雑になることがあります。
表計算ソフトや紙媒体での物理的な支払い管理もできますが、最近では請求書の支払い管理ができるWebサービスがたくさん存在しています。例えば、請求書が届いたら、必要な情報を入力しておくだけで、支払日が近づくとアラートが出るようなシステムや、支払情報とインターネットバンキングが連動していて、振込手続きが簡略化できるシステムもありますので、複数の支払い日がある場合にはこのような管理ツールの導入も検討してみてください。
Q3.整体、リラクゼーションサロンの店舗を経営しています。個人で来たお客様へ施術を行い、代金は来店のたびに都度払いをしていただいていました。その方の会社へ、法人向け福利厚生プランとして出張マッサージを依頼され、その際のお支払いを「請求書払いにしてほしい」と打診がありました。何かデメリットはありますか?
A3.企業や個人事業主間での資金のやり取りでは、多くの場合で請求書払いが導入されています。そのため、新規取引先から請求書払いの打診があったのだと思います。販売側におけるデメリットは2点です。
まず、請求書払いは施術後すぐに代金を回収できないため、資金繰りの面で不利になります。しかしながら、企業に属する顧客にとっては請求書払いが既に普及しており便利であるため、請求書払いが可能な方が、利用頻度や顧客数が増えやすい傾向があります。結果的に請求書払いの方が売上総額で有利になることが多いのです。これは、代金支払いに際して、クレジットカードなどの後払いの方が人は感じる痛みが少ないという、MRIや神経図を用いた研究でも結果が出ています。
次に、代金が未回収になるリスクがありますので与信管理が必要になります。従業員の福利厚生プランとして出張マッサージを依頼するような企業であれば、財務的基盤はしっかりしているだろうと想定できますが、会社の評判などを最低限調べておくことに越したことはありません。上場企業の場合には、有価証券報告書(決算書に事業計画などを追加したようなもの)を毎年公開していますので、会社ホームページから確認し、赤字が続いていないかどうかの確認は必要です。大きい会社なら大丈夫と安易に思わないことが重要です。もし心配であれば一定期間は都度払いにして頂くことを打診するのが良いかもしれません。

まとめ

  • 請求書払いとは、一定期間の取引料金を特定の期日までにまとめて支払う方法のこと
  • 請求書払いの導入には、取引先の信頼を勝ち得ることが大切
  • 請求書払いの導入には、支払い業務が効率的になるメリットがあるが、支払いを遅延してしまった場合に信用を損なうデメリット・注意点がある
  • 請求書を受け取ったら、正しい記入がされているか確認し法律で定められた期間保管しておく

スモールビジネスのうちは請求書払いと資金管理の重要性はさほど高くありませんが、ビジネスを大きくしていくためには請求書払いを積極的に導入していく必要があります。請求書払いを楽に管理するツールがたくさんありますので、これらのシステムを駆使しながらお店を発展させていきましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/

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