基本的に「領収書の再発行」はNG。依頼されたときの注意点や経費精算の代替策を解説
開業にあたり、「お客様から領収書の再発行を依頼されたらどう対応すべきか」と疑問に思っている方もいるかもしれません。また「個人事業主として経費に計上しようとしたが、領収書を紛失した」というケースもあり得ます。
本記事では、領収書の再発行をしない理由や、再発行を依頼された場合にトラブルを回避する方法、領収書を紛失してしまった際に代用できるものなどを説明します。領収書の再発行について、ルールを知っておきましょう。
この記事の目次
領収書の再発行は基本「しない」と考える
発行する店舗側で記載を間違えるなどの不備がない限り、基本的に領収書の再発行はしないものと考えておきましょう。
民法では、商品やサービスを購入した人は売り手に対して領収書の発行を請求することができ、逆に売り手は請求されたらそれに応じなければならない、と定められています。
一方で、再発行については規定されていません。「紛失したから再発行してほしい」といわれても、売り手が応じなければいけない義務はないということになります。また領収書の再発行はトラブルになる可能性があるため、運用ルールとして再発行はしないとしている店舗が多いようです。
次項で詳しい理由について説明します。
領収書の再発行をしない理由はリスク回避のため
店舗が領収書を再発行しない一番の理由は、発行側のリスク回避のためです。
もし領収書を再発行してしまうと、経費の二重計上や架空計上などの不正利用に使われてしまう恐れがあります。
領収書を再発行してそれが悪用されてしまった場合には、発行側も罪に問われる可能性があります。実際は一度や二度再発行したからといってすぐに罪に問われるわけではありませんが、同じ相手に何度も再発行してその相手がそれらを不正利用した場合、発行側も共犯者とみなされる可能性があります。
店舗側では、再発行した領収書が正しく使われているかどうか確認する術がないため、一律で「再発行はしない」と決めておくほうがリスクを避けることになります。
領収書の再発行によるトラブルを回避する4つの方法
トラブルを回避するため、領収書の再発行についてあらかじめ以下のようなルールを決めておくとよいでしょう。
再発行しない旨を掲載しておく
対面で精算をする場合は、レジの横やキャッシュトレイなど、お客様から見えるところに再発行をおこなわない旨を掲載しておくとよいでしょう。
ネットショップなどの場合は、ショッピングルールを掲載しているページなどにその旨を記載しておきます。
事前にお客様に周知しておくことで再発行の抑止となり、もし依頼された場合もお断りしやすくなります。
またお客様自身も、紛失しないよう一層気をつけるといった対応が可能になるでしょう。
元の領収書がある場合は必ず回収
再発行を依頼されたら、まずは元の領収書があるかどうかを確認します。領収書の二重使用を防止するため、元の領収書がある場合は必ず回収してから、新しいものを交付しましょう。
ぐしゃぐしゃになったものや、破れて一部しか残っていないようなものでも、リスク回避のために回収は必須です。回収後は、再発行した領収書の控えと一緒に保存しておきましょう。
再発行であることがわかるようにする
自店舗側で書き損じがあったなど再発行せざるを得ない場合は、再発行した領収書の目立つところに再発行であることがわかるような記載をしましょう。一般的には、一目でわかるように赤いインクで「再発行」というゴム印を使用することが多いようです。さらに但し書きに「○○代として(○○年○月○日の再発行分)」などと記載して、元の領収書と区別できるようにしておくとよりわかりやすくなります。
再発行の経緯を記録しておく
トラブルが起きてしまった場合を想定して、再発行の経緯の記録を残しておきます。最低限「いつ、誰に、どういう理由で依頼されたのか」を記録しておきましょう。記録の内容は細かければ細かいほど、いざというときに役立ちます。
記載の方法に決まりはありません。運用の一例として、再発行時の経緯を記録するためのひな形文書を作成し、印刷して店頭に置いておいて、再発行した際はすぐ書けるようにしておく、といったやり方があります。
5万円以上の金額の領収書は再発行の場合も収入印紙が必要
金額が5万円以上の領収書の再発行をする場合、注意点があります。
印紙税法により、作成した領収書の金額が5万円以上の場合には収入印紙を貼り消印を押す必要があります。収入印紙代を負担するのは、領収書を発行する側の負担となりますが、それは再発行の場合でも同じです。一度貼り付けて交付したから再発行では不要、ということにはなりません。
印紙を貼らなければいけないのに貼り付けていなかった場合は収入印紙の3倍の過怠税が、正しく消印をしていない場合は印紙と同額の過怠税が徴収されてしまいますので、気をつけましょう。
収入印紙について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
領収書に「収入印紙」を貼る金額は5万円から。コンビニで買えます
経費精算で領収書の代わりにできるものもある
店舗としては再発行を断りたくても、お客様にしてみれば経費精算などに領収書を使いたくて困ることもあるでしょう。また自分自身、店舗運営にあたり経費として処理をしたいのに、領収書をもらい忘れたり紛失してしまったということもあるかもしれません。
そんなとき、一般的には、経費精算のためだけなら、日付、金額、取引内容、支払先(仕入税額控除の要件を満たしたい場合は宛名も必要)の記載があれば領収書の代わりにすることができるとされています。しかし、すべてが代用したものばかりだと、税務調査の際に問題になる可能性があります。経費精算は領収書の存在が原則ですので、代用は極力避け、やむを得ないときだけ利用するようにしましょう。
また個人事業主の立場では、自社の従業員が経費精算の手続きをする場合もあるでしょう。このときの会社のルールとしては、「経費精算に使えるのは領収書のみである」と周知するのがおすすめです。もし従業員から「領収書を紛失した」などと相談された場合には柔軟に対応できるように、経費精算をする担当者は領収書以外にどのようなものが有効か把握しておくと良いでしょう。
一例として、以下のようなものは領収書の代わりになる可能性があります。ただし、実際に領収書の代わりとして認められるかどうかは税務調査の総合的な判断によるところも大きいため、一概に「これであれば確実に代用できる」とは言い切れません。「可能性があるもの」として考えておきましょう。
クレジットカードの利用明細
クレジットカードを利用した際にもらえる明細には、請求明細と利用明細があります。一般的に請求明細は取引内容の記載がないので、領収書の代わりにすることはできません。利用明細のうち、取引内容の記載があるものは、領収書の代わりにできる可能性があります。
電子マネーの利用履歴
電子マネーの種類によっては、利用履歴に取引内容や支払先が記載されるものがあります。その場合は領収書の代わりにできる可能性があります。
請求書
一般的には、請求書を発行する段階では代金の受け渡しは発生していないため、請求書を領収書の代わりとして使用することはできません。ただし、銀行で振り込みをおこなった際に発行される振込明細書や、クレジットカードで支払った際に後日発行される利用明細書など、請求書の金額と同額の支払いが確認できるものを一緒に保存することで、領収書の代わりとして認められる可能性があります。
納品書
納品書自体は領収書の代わりとして使用することはできませんが、「納品書兼領収書」と記載されていれば、領収書として使用可能です。また請求書同様、納品書に書かれている金額と同額の支払いを証明するものと一緒に保存することで、領収書の代わりとして認められる可能性があります。
出金伝票
公共交通機関や慶弔の際の支払いなど、最初から領収書がない場合もあります。その場合は領収書と同じように、日付、金額、取引内容、支払先を記載して、自分で「出金伝票」を作成することで、領収書の代わりにすることができます。
このとき、たとえば仕事の関係者の結婚式に出席する場合は結婚式の招待状など、可能な限り支払いの事実を裏付けるものも一緒に保存するようにしておきましょう。
支払い完了メール
オンライン取引やダウンロード販売などの場合、日付、金額、取引内容、支払先などの記載内容の要件を満たしているものであれば、支払い完了メールや取引完了画面のスクリーンショットなどでも領収書の代わりにしてもよいことになっています。
領収書は金銭の授受を証明する重要な書類。取り扱いには十分に注意を
領収書は、商品やサービスに対してお金を支払ったことを証明する大切な書類です。
また個人事業主にとっては、仕事のために支払ったお金を経費として計上するときに、何にお金を使ったのか証明するための書類でもあります。領収書は通常7年間(白色申告者の場合は5年間)の保存義務があります。経費計上が終わったからといってすぐに処分してよいものでもありません。
経費精算のために受け取る際は、紛失やもらい忘れがないよう、細心の注意を払うようにしましょう。また店舗として責任をもって正しく発行するために、従業員向けのマニュアルを作成するなどの準備をしておきましょう。
まとめ
- 不正利用などのリスクがあるため、店舗側では領収書の再発行は基本的にはしない
- どうしても再発行が必要な際は、元の領収書を回収した上で、再発行であることを領収書に明記する
- 5万円以上の領収書の場合、再発行であっても収入印紙の貼付が必要となるため注意する
- 経費精算の際に領収書以外で代用できる可能性もある。ただし、税務調査の総合的な判断によるため「原則領収書のみ対応」と考える
- 個人事業主にとっては経費計上にも領収書が必要。紛失やもらい忘れに注意し、お客様に対しては正しく発行するよう心掛ける
領収書を発行する店舗側としては、再発行はトラブルが発生する恐れがあるので極力避けたいところです。もし再発行する際は、例外としての対応であることをお客様に伝えた上で、十分注意して対応するようにしましょう。一方、自社の従業員の経費精算に際しては、基本は領収書が必要であることを周知しておくとよいでしょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
小川 和哉(おがわ かずや)会計コンサルタント
2015年より国税局が開催する「パソコンによる記帳指導」の指導員を担当。必要に応じてファイナンシャルプランナーとして企業の財務や個人の家計の改善のアドバイスと手続き、管理、アフターフォローも実施。