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禁煙化で客数は減らない?バルバッコア経営のワンダーテーブル受動喫煙防止対策

世界では公共施設での分煙が「当たり前」となりつつある昨今。飲食店も例外ではありません。飲食店経営者はどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。

2017年6月6日〜8日に開催された「Tokyo Cafe Show&Conference 2017」にて受動喫煙対策について解説するセミナーが開講されました。セミナーのタイトルは、「ワンダーテーブルの受動喫煙防止対策」。登壇したのは、株式会社ワンダーテーブルの取締役、戸田さんです。

ワンダーテーブルといえば、「鍋ぞう」を分煙、「バルバッコア」を完全禁煙にするなど、受動喫煙防止対策に積極的な企業です。セミナー内容をもとに同社の受動喫煙への取り組みをまとめました。

この記事の目次

2020年、東京オリンピックに向けて禁煙・分煙の義務化が進む

世界では、非喫煙者の健康にも影響を及ぼす「受動喫煙」が問題になっています。北・南米やヨーロッパのほとんどの国では法律により飲食店などにおいて室内での全面禁煙が実施されていますが、日本では受動喫煙を防止する法整備が進んでいません。

2010年7月、世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は共同で「たばこのないオリンピック」を推進することを決めました。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備の一環として、厚生労働省は公共の場における公共の場における受動喫煙防止対策の強化 を宣言。東京都はWHOが定める政策ガイドラインに従い、分煙の義務化を検討しています。このため、2020年までに完全禁煙または店内に喫煙場所を設置するなど、何らかの対策が必要とされる可能性も高い状況です。

今回は当社で実際におこなった受動喫煙防止のための禁煙・分煙の取り組みや他社での事例などを紹介します。

<登壇者プロフィール>
戸田史朗(とだ・しろう)
株式会社ワンダーテーブルの取締役。「モーモーパラダイス」、「バルバッコア」、「ベリーニ」などで支配人を経験したのち、2000年より営業企画部に所属。営業のサポート部門を担当しながら新規出店、ブランド開発などに取り組み、現役職に就任。

業態に合わせて禁煙化を進めるワンダーテーブル

ワンダーテーブルでは、営業形態やエリアなどによって受動喫煙対策の取り組み状況は異なります。「歌舞伎町ハイボール 」などの喫煙ニーズの高い一部のバーや居酒屋形態の「魚や六蔵 」は喫煙可能とし、「鍋ぞう 」では分煙としています。

バルバッコア 」や「ローストチキンハウス 」など、食事をメインで楽しんでいただくようなレストランでは、完全禁煙を進めています。

全面禁煙にしても長期的に見れば客数に影響はない

弊社のブランド「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」は2010年の8月1日にランチタイムを禁煙としました。結果、禁煙実施当初の9月、ランチタイムの平均客数は88人にまで落ち込んだものの、同年12月には93名に上昇。客数への影響は少ないと判断しディナータイムの禁煙も視野に入れました。

※ロウリーズ・プライムリブは現在恵比寿に移転。写真は旧赤坂店

食事の時間が長く、アルコールを提供するディナータイムは、煙草を吸うお客さまも多いものです。そのためディナータイムの全面禁煙化には、社内でも反対の声が上がりました。禁煙化で売上げが落ち、経営が成り立たなくなってしまっては本末転倒。そこで禁煙/喫煙客数や売上げを毎日記録し、「禁煙にしたらどうなるか」というシミュレーションをおこなった上で禁煙化に踏み切りました。

正直に言いますと、来店されなくなったお客さまもいます。一方で、禁煙を望んでいるお客さまの来店数は増加。減った客数を補完した形となり、店舗の来客数は大きく変わりませんでした。

※ロウリーズ・ザ・プライムリブ 東京のディナー平均客数推移。2013年4月に全面禁煙を実施

ディナータイムにおいて、3月地点の平均客数は119名。禁煙化の影響が出て一時的に客数は92名にまで落ちたものの、その後はゆるやかに客数が戻り、約7 カ月後には103名にまで回復。その1ヶ月後には116名に転じました。季節的な変動の影響もあるうえに、あくまでひとつの事例ではありますが、長期的に見れば禁煙化は売り上げに影響しないということが言えると思います。

導入にあたり、禁煙開始2〜3ヶ月前にお客様へ告知開始

店内禁煙を実施するにあたって留意したのは、店内禁煙の告知を早い段階でおこなうことです。禁煙開始の2~3カ月前から店頭やホームページで禁煙化を告知。予約受付時にも禁煙化をアナウンスし、お客さまの了承を得るよう徹底しました。

このような告知を店内に掲載した

これが功を成したのか、店内禁煙を開始してからお客さまと大きなトラブルに発展したという報告はゼロです。

自社の実績データや他社事例で店長を説得

告知以上に苦労したのはスタッフの意識改革です。特に店長は禁煙化で客数や売り上げが落ちることを心配します。実際、愛煙家の方の足が遠のいてしまうことはやむを得ません。しかしその分、新たに非喫煙者の集客が見込めます。

受動喫煙対策に消極的な店長には直接会いに行きました。そこで話したのは、過去実績データを見せながら長期的な目線で見れば客数に影響を与えないということです。

他にも他社事例を話しました。ドアノブなど目立つ所に禁煙ステッカーを掲示したり、ホームページやSNSなどで席料なしというアピールポイントと並べて全面禁煙店であることをアピールポイントにして、非喫煙者の集客を図るケースなどを伝えたのです。禁煙をネガティブに考えるのではなく、客数を回復させる方法を検討し合いました。

大型店ではリニューアルと同時に禁煙化

ホテルなどが立ち並ぶ品川のイタリアンレストラン「VENTO」は、120席の大型店で、立地柄多くの集客が見込めます。禁煙化を進めてしまうと集客ロスが出るであろうことを予想して喫煙営業していましたが、リニューアルを機に、テラス席の一部を除いて禁煙化しました。

VENTOの喫煙席。テラスのみ喫煙可能としている

禁煙化に対しお客さまからネガティブなコメントをいただくことも覚悟しました。しかし蓋を開けてみると、喫煙者を含む大多数のお客さまの理解を獲得。ブランドとしてのメッセージを打ち出しながら受動喫煙対策を推進したことが功を成したのかもしれません。

他社事例では、味と香りの良さを味わってもらうために禁煙する旨を公式サイトやSNSなどで発信することで受動喫煙対策に成功した日本酒のお店もあるそうです。店側の信念などをしっかりと打ち出すことで理解を得るケースもあるでしょう。

店内禁煙に賛成なスタッフの声も

喫煙の常連さまが減る、たばこを吸っているスタッフの肩身が狭くなるといったデメリットもありました。一方で、メリットとして壁やガラス面などの汚れが減り、吸い殻捨てなどのストレスになっていた作業が減少したことが挙げられます。スタッフからは店内の清掃が楽になったという声が届きました。

また、予約や来店時に必ず「禁煙ですか、喫煙ですか」とお伺いしてからご案内や配席をしていました。完全禁煙によってオペレーションが簡略化され、業務の効率がアップし売上に貢献した実績もあります。

自治体からの助成金を活用するのもひとつの手

禁煙を実施した場合、一時的に集客は減ります。回復状況はマーケットによって違うと思いますので、できる範囲で対応していくことが大切です。

規模の小さいお店などは、規制対象外になる可能性もあるようです。しかし、「小規模店だから何も対応しなくてよい」ということにはなりにくいのではないでしょうか。

東京都では、受動喫煙防止対策助成金が受けられる(※注釈1)ケースもあるようです。具体的にどのような取り組みで助成金が出るのか都道府県や市区町村などに相談してみるのもひとつの手ではないでしょうか。

※注釈1……参考:宿泊・飲食施設の分煙化を支援します!外国人旅行者の受入れに向けた宿泊・飲食施設の分煙環境整備補助金

まとめ

禁煙化によって客数に影響を与えると考えている飲食店経営者は多いと思います。しかし、今回ワンダーテーブルの事例からは大きな影響を与えないという結果を得ました。

喫煙を求めるお客さまがいる一方、禁煙を希望するお客さまも多いものです。禁煙店であることをアピールしていくことで、禁煙希望のお客さまを獲得できるのではないでしょうか。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

高根千聖(たかね ちさと)氏

高根 千聖(たかね ちさと)編集者

株式会社ZINEの編集者。編集プロダクションで週刊誌の編集・ライター業務に従事。その後、制作会社にて紙媒体やWEBサイトのディレクション、編集・ライター業務に携わる。得意ジャンルはビジネスやグルメ、芸能など。

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