雇用条件とは?従業員を採用する前に考えておくべき項目と注意点
従業員を採用するとき、労働条件をはっきりと明示することが法律で決まっています。どのような項目をどのように明示しなければならないのか、なかなか難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は労働条件の各項目と、注意点を解説します。
この記事の目次
労働条件はかならず明示する
お店を経営していく上では、さまざまな契約をすることになります。お店の賃貸借契約や、金融機関との融資の契約、仕入れ先との契約などです。従業員との雇用契約もこのような店舗経営において欠かせない契約の一つです。
ビジネス上の契約は、どのような内容を盛り込まなければならないのかということは基本的に自由です。しかし雇用契約においては、採用時に以下の事項を必ず明示することが労働基準法において義務付けられています。
1.労働契約の期間に関する事項
2.就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
3.始業及び終業の時刻・時間外労働の有無・休憩時間・休日や休暇などに関する事項
4.給料の計算及び支払の方法、賃金の締切日や支払日・昇給に関する事項
5.退職や解雇に関する事項
これら必ず記載しなければならない事項のほかにも、労働条件に入れるなら記載しなければならない事項として賞与や退職金に関する事項などいくつかありますが、まずは上記5つについてはかならず明示するということを理解しましょう。
これらを採用時に明示しなければならないということはつまり、従業員を採用するにあたっては、求める人物像やスキルなど従業員に要求する点と合わせて、会社にとっても契約内容として守るべき上記の点をあらかじめ明確にしておく必要があるということです。
労働条件を明示しないということは、たとえば休日として指定した曜日が異なるなど、雇用した後に適用する労働条件と採用時に明示した労働条件が異なることも基本的には認められません。(給料の増額など従業員にとって有利な変更は問題ありません。)
採用時に明示した労働条件と、実際に適用された労働条件が異なる場合は、従業員は、即時退職することが認められます。この場合、例えば社内の規定で、退職する場合1か月前に申し出なければならない、となっていても関係ありません。
安定した人材の確保のためには、「採用してしまえばあとはこっちのもの。」といった考えではなく、事業主としても労働条件を守らなければならないということを理解しておきましょう。
上記の通り、明示すべき労働条件はいくつかありますが、特に検討する必要があるものを1つずつ見ていきましょう。
給料について
飲食店などにおいては、給料は仕入や店舗の家賃と並んで大きな支出となります。給料をいくらに設定すれば問題ないかということは経営上の判断です。
給料も、仕入代金や家賃と同じく事業主にとっては支払い義務がある債務です。資金繰りを考えて、給料の金額や締日・支払日を設定する必要があります。少なくとも労働条件の面においては、最低賃金を上回ってさえいれば、いくらで設定しても事業主の自由です。
残業代の取り扱いには注意しよう
注意しておかなければいけないのは、残業代の取り扱いです。特に月給制の場合には、固定残業代として一定額を支給するケースがあります。この固定残業代については、どれだけ残業時間があっても固定残業代を支給しておけば問題ないというように勘違いしてしまうことがあるので注意が必要です。
固定残業代は、給料の計算に関係することなので、労働条件として明示する必要があります。この際に、単に固定残業代としていくらというようにするのではなく、何時間分の残業代としていくらという明示が必要です。
1時間分の残業代を計算するには、年間の休日や毎月の平均的な労働日数、基本給を決める必要もあります。固定残業代の金額の決定は、休日の日数や基本給にも関係することであり、任意の金額を支給すればよいというわけではないのです。
また、固定残業代は労働条件で明示した時間分の残業代を固定で支払っているので、その時間数を超えて残業すれば、固定残業代とは別に残業代の支給も必要です。例えば20時間分の固定残業代として2万円を支給している場合、残業時間が合計で23時間になればオーバーした3時間分として3,000円、合計23,000円を残業代として支給する必要があります。
年俸制でも残業代の計算は必要
固定残業代と合わせて、勘違いが多いのが年俸制です。年俸制だから残業代は支給しなくても問題ないというように勘違いしているので注意が必要です。年俸制は給料を年額で明示しているだけであり、結局は給料の支払いは月割りした金額を支払うので、残業代の計算は月給制と変わりありません。
終業時間や休日について
飲食店などにおいては、シフト制によることが多いので、9時から18時のように、固定で始業時間や就業時間を指定することは困難です。とはいっても始業・終業の時間をただ、「シフトで決める」などとするだけでは、明示したことにはなりません。
この場合は、フルタイムであれば、
「早番:○時○分~○時○分 遅番:○時○分~○時○分」
などのように、明示した上で、早番か遅番かはシフト表で決めるというようにする必要があります。
また、アルバイトであれば、のように明示しておけばよいでしょう。
「○時○分~○時○分の間で○時間」
また、休日についても同様に、単に「シフトで決める」というだけでなく、最低でも「毎週日曜日から土曜日の間で2日」のように、日数は決める必要があります。
労働契約の期間について
労働契約の期間については、有期契約か無期契約かの2パターンがあります。
有期契約とは、例えば入社日から3か月というように期間を定めて雇用するもので、3か月満了後に再度更新して雇い続けるかどうかを決めるというものです。もともと3か月契約ということは、3か月目に契約を更新しない、いわゆる雇止めをしたとしても労働基準法上は解雇などの問題は生じません。
試用期間満了後は従業員を本採用する
この有期契約に似て非なるものとして、試用期間というものがあります。試用期間とは、正社員として雇う場合に、従業員の能力や人物などの見極めのために採用から一定期間設けられた試みの雇用期間のことです。試用期間自体は会社が任意に定めても問題ありませんが、試用期間満了後に本採用をしないということは、従業員を解雇する場合と同様に相当の理由が必要となります。
従事すべき業務について
従事すべき業務については、例えば「調理業務」や「接客業務」などのように、まずは従業員が具体的にどのような業務を行えばよいのかということを定めておく必要があります。
ここで1点注意しておきたいのが、管理監督者というポジションです。
管理監督者とは、その名の通り、他の従業員を管理・監督する立場の従業員を指します。労働基準法上、管理監督者という立場にある者には残業代の支払いや休憩、休日の付与をする必要がありません。労働者保護の法律である労働基準法が残業代や休憩、休日の規定を適用しないというくらいなので、この管理監督者というポジションについては、もともと労働基準法の適用がない役員などの経営層と同レベルの責任や権限がある場合に限られます。
単に「店長」や「リーダー」などの肩書を与えれば管理監督者として扱えるというわけではないということです。新たに店舗を開業する場合においては、創業メンバーで事業主と同じように昼夜問わず働くような人であれば、管理監督者に該当するといったイメージです。
労働条件の明示は労働条件通知書で行う
これまで労働条件は明示する必要があるというように説明しましたが、実際にはどのように通知すればよいのでしょうか?労働条件の明示方法は、上記の1.~5.のうち昇給以外の項目は書面により通知しなければならないと労働基準法に定められています。
一般的には、この書面の通知は「労働条件通知書」という文書により行われています。労働条件通知書の書式は、明示できるものであればとくに決まった様式があるわけではないですが、厚生労働省や各都道府県の労働局のホームページなどからダウンロードすることができます。
通知書というと事業主から従業員への一方的な通知というイメージがありますが、従業員にもしっかりと内容を確認してもらい、相互に納得の上サインをしてもらうようにしましょう。
まとめ
- 採用時に明示しなければならない労働条件の項目は労働基準法で決まっている
- 固定残業代や試用期間、管理監督者の取り扱いなど、労働条件を決めるにあたっての注意すべきポイントを理解しておく必要がある
- 労働条件の明示は労働条件通知書という書類により行う
店舗経営においてはヒトが欠かせません。事業主・従業員ともに気持ちよく働ける職場づくりのために、採用時に労働条件をお互いにしっかりと確認しておきましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/