フードメニューは常時約50種類。2名でキッチンをまわす「adito」がメニュー数を減らさない理由とは?
リピーターを増やすため、マンネリを生まないため。飲食店オーナーの悩みのタネであるメニュー構成。すべてのメニューの売上を帳簿でつけて売れ筋商品を見える化させるのは手間がかかります。
2017年に15周年を迎えたカフェ「adito(アヂト)」は、約50種類のフードメニューを提供する飲食店。過去に「一部のメニューを廃止しよう」と考えたものの、iPadのPOSレジアプリで売上個数を管理した結果、どのメニューにもファンがいることが判明。ホスピタリティを優先してメニュー数は減らさないと決断しました。
aditoのオーナーさんと店長・藤田さんになぜメニューを減らさないのか、その決断の裏にあるお店への想いを紹介します。
この記事の目次
自分が行きたいと思うお店をつくりたかった
オーナー:私がaditoをはじめたのは、自分が行きたいと思うお店を作ろうと思ったことがきっかけです。「食」は生きていく上では欠かせず、大人数で楽しめる行為。しかし自分が「行きたい」と強く思えるお店がなかったんです。それなら、自分が好きだと思うものをまとめたお店を作ってみようと考えました。
お店を作るうえで外せなかった要素は「くつろぎ」。お店のある「駒沢大学駅」に多く住んでいるのは単身者、とくに30代のクリエイティブ業に携わる男性です。
彼らは誰かに依存せず、社会の荒波に揉まれながら生活をしています。日々戦っている彼らには美味しいものを食べたり、懐かしい本を読んだりしながらくつろいでもらい、明日に繋がる元気を持って帰ってもらいたい。社会で戦う大人たちの秘密基地というような意味を込め「adito」と名付けました。
くつろげる空間を実現するために、内装にはこだわっています。特に、テーブルの高さはお店の居心地の良さに直結するもの。特注の家具を使って、座り心地や高さに気をつけるようにしました。接客も、過干渉な応対はせず、お客様に気を遣わせないよう心がけています。この方針は、オープンからこれまで変わっていません。
駒沢大学前を選んだのは、いくつか理由があります。ひとつは以前住んでいたことがあり土地勘があったこと。ふたつめは、単身者が多く住んでいること。もうひとつは、家賃が高すぎないことでした。
中目黒や恵比寿などは単身者も多く潜在顧客も見込めるものの、高い家賃を支払うために回転率を上げなければいけません。経営側の都合で回転率を上げて、お客さまを急かすようなお店では、くつろぐことはできませんよね。長居できる空間を作りたかったからこそ、駒沢大学前、駅から遠い場所を選びました。
お客様との人間関係というのも大事ですよね。実は同業者から、ウチで働くのは難しいって言われてるんです。「過干渉しない」と言いながら、実は全てに気を張り巡らさないと必要な時に声をかけることはできない。非常に難しい接客だと思います。
【プロフィール】
オーナー
東京の製菓学校に通うために上京。15年前に「adito」をオープンさせる。
藤田有加さん
「adito」オープン後1年で、入社。現在は、接客、仕込み、調理、マスコミ対応、仕入れ関係、顧客対応等を担当する。
メニューはただお客さまが喜ぶものを探求した
オーナー:カフェは仕事をしたり、気分転換もできる場所。長居していただきたいので、飲み物だけではなく、ご飯も食べれるような場所にしたいと考えました。また、多くの飲食店は、ランチメニューを頼める時間帯が決まっています。でも、お腹が減るタイミングやきりが良いタイミングは人それぞれ。自分の好きなタイミングでごはんを食べたい、というニーズに応えられるよう、aditoでは時間帯によってメニューを変更せず、営業時間中はずっと定食やデザートをオーダーできます。
aditoにはフードメニューが約50種類あります。メニューの種類を増やしたのも、ここに行けばなんでも好きなものがある、とお客さんに思ってほしいから。いつでも、誰とでも使えるお店でいたいなと思っています。
王道のメニューというよりは、お客さんに喜んでもらえるメニューを開発していきたい。たとえば、ホットサンドの種類のひとつ「うなぎ葱チーズ」。「これを入れたら喜んでくれるかな?」「もっとおいしくなるかな?」という想いで作りました。正直、原価よりも美味しさとお客さまが喜んでもらうものを優先しているので、利益はほとんどでないものもあります。しかし、大手チェーン店が原価を意識するあまり出せないメニューを出せることが個性につながりますし、個人店の面白さでもあると考えています。
「あの人これが好きだよね」でメニューを減らさなかった
藤田:メニュー数が多いと調理に時間がかかりすぎてしまうため、以前メニュー数を減らそうという話が出ました。売上個数が一番低いメニューから消していこうと思ったんです。
そこで使ったのがiPadのPOSレジアプリ「Airレジ」です。Airレジでは売上個数が一覧で見れます。売上個数の低いメニューを消そうと思いました。しかし、いざ見てみると、どのメニューもまんべんなくどれも売れている。必ず週に一度食べに来るお客さんがいることも分かったんです。メニューから消してしまったらきっとそのお客さんはがっかりしてしまう。結局、消すわけにはいかないという結論に至りました。
オーナー:そういうのが個人店の魅力だと感じます。消すか消さないかという時に、「でも、あの人、このメニュー好きだよね」という話になっていく。数字として目に見えるので、体感的に「消しちゃダメ」だと思っていたものが、Airレジのおかげで確証を得られるようになった。だから消さなくていいんだ、と思えるようになったのは大きいです。
ハレの日ではない、普段づかいのお店でありつづける
オーナー:aditoは2017年で15周年を迎えました。こうしてやってこれたのは「特別な店じゃないから」だと考えています。流行りのメニューを出すお店は、特別感を演出できる、いわば「ハレの日」用のお店。しかし、何度も行くお店にはなりにくいのではないでしょうか。
一方、日常のなかで気負わず訪れてもらえるのは、うちみたいなカジュアルなお店。特別感はないかもしれませんが、メニューも多いし、どの時間でもしっかりフードメニューを頼めるので使い勝手が良い。普段着で来れるお店だからこそ、お客さんも足を運んでくれるのではないかなと考えています。
日々世の中の状況は変化していき、15年前には容易に手に入った食材が入らなくなることもある。それでも変わらないでいるためには、不足している部分を補えるよう努力し続けることが必要です。
藤田:今後力を入れたいのは接客、特に声がけのタイミングを意識していきたいです。
お客さまが退店されたあと、テーブルを片付けながら他のお客さまの様子を観察する。「これどんなのだろう」とメニューを見ながらつぶやいているのを聞き逃さないようにする。とはいえ、お客さまの立場では、独り言で店員が近づいてきたら怖いでしょう。だから、近くを通りがてら「これはこんなのですよ」みたいにさり気なく説明をしてみる。良いか悪いかはわかりませんが、注文してくださる方もいらっしゃるので、役に立っているのかなと思います。
メニューを見ながら悩んでるときには「何か分からないことがあったら、お尋ねください」という一声を掛けておく。そうすると「これってどうなんですか」とついでに聞かれたり、「もうちょっと考えてから、注文します」と言っていただけるもの。通りすがりでもお客さまの行動を見逃さないよう気を配っています。
ただ、いまは厨房に入って調理を担当することが多いので、ホールまで自分の目が行き届かない状況です。スタッフの接客の質をあげるための教育はもちろん欠かせませんが、店舗スタッフ全員がお互いの技術を見て学んでほしいと考えています。自分自身もどんどん他の人の接客から、学びたいですね。
長く働いていると、慣れも出てきてマンネリ化する。もちろん必要のないところで手を抜くことも大切です。しかし、毎回同じお客さまが来るわけではありません。いろいろな方が訪れるので、そのお客さんに合った接客を心がけていきたいと考えています。
まとめ
メニュー数を絞り、原材料費を削減させたり提供時間を短縮させることが一般的なカフエ経営。しかし、aditoではその逆をいくような方針で経営をしています。それもひとえに「お客さまのため」を目指した結果。そんなホスピタリティがお客さまにも伝わり、最寄り駅より15分という不利な立地でも15年間も愛されるお店となったのではないでしょうか。
adito(アヂト)
東急田園都市線「駒沢大学駅」から徒歩15分ほど歩いたところにあるカフェ。居心地の良さにこだわったという店内には、小説や漫画も置かれている。
住所:東京都世田谷区駒沢5-16-1
電話番号:03-3703-8181
交通:東急田園都市線:「駒沢大学」下車徒歩15分
休日:水曜定休(祝日の場合は営業)、年始
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
高根 千聖(たかね ちさと)編集者
株式会社ZINEの編集者。編集プロダクションで週刊誌の編集・ライター業務に従事。その後、制作会社にて紙媒体やWEBサイトのディレクション、編集・ライター業務に携わる。得意ジャンルはビジネスやグルメ、芸能など。