登記事項証明書(登記簿謄本)とは?取得方法や手数料、種類を詳しく解説

銀行の法人口座を開設するときなどに提出を求められる会社の「登記事項証明書」。「登記簿謄本とは違うもの?」「急ぎ提出が必要だけど、どうやったら取得できる?」など、疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか。この記事では、登記事項証明書の概要をはじめ、取得方法や必要な手数料などをわかりやすく解説します。
この記事の目次
登記事項証明書とは?
登記事項証明書とは、法務局に登録された不動産や法人の情報を証明する書類です。法務局の窓口で取得することができるほか、オンラインや郵送でも取得できます。
登記事項証明書は公的な機関による証明書であるため信頼性が高く、銀行取引や不動産契約などあらゆるビジネスシーンで使われます。現在は登記情報をデジタルデータで管理していますが、昔は「登記簿」という用紙に手書きで記録されていたため「登記簿謄本」と呼ばれていました。現在でも、昔からの慣習で「登記簿謄本を取ってください」と言われることがありますが、その場合は登記事項証明書を取得しましょう。
法務局に登記される情報は大きく分けて「不動産登記」「商業(法人)登記」「成年後見人登記」「債権・動産譲渡登記」の4種類があり、その中でも「不動産登記」と「商業(法人)登記」がよく使われます。今回は特に法人の事業者に関係が深い「商業(法人)登記」を解説していきます。
商業(法人)登記の登記事項証明書にはおもに下記の情報が記録されています。
- 会社名(商号):法人の正式名称
- 本店所在地:会社の主たる事務所の所在地
- 代表者名:会社を代表する人物の氏名
- 設立年月日:会社が設立された日
- 資本金:設立時およびその後の増資など、資本金の額
- 事業目的:会社が行う事業内容
- 役員情報:取締役や監査役の氏名、就任状況
- その他:定款の変更履歴や、その他法務局に届け出た事項
登記事項証明書は4種類
登記事項証明書には、下記の4種類があります。「商業(法人)登記」の登記事項証明書を取得する場合、どのような内容の情報が必要かによって取得すべき登記事項証明書の種類が変わります。それぞれの特徴を解説しますので、どの証明書を取得すべきか使用目的と照らし合わせてから取得しましょう。
おもな記載内容 | おもな使用目的 | |
---|---|---|
1.現在事項証明書 |
いま有効である登記事項
|
銀行手続きや不動産契約などで自分の会社の現状を証明する場合
|
2.履歴事項証明書 |
3年以内に変更があった事項の記載を含む登記事項
|
会社の信用情報の確認や、過去の状況を知りたい場合
|
3.閉鎖事項証明書 |
登記記録が閉鎖された情報
|
登記記録が閉鎖された情報について確認したい場合
|
4.代表者事項証明書 |
他の役員情報や資本金額などを含む代表者の情報
|
代表者に関する情報だけが必要な場面
|
1.現在事項証明書
「現在事項証明書」は、いま有効である登記事項が記載されている登記事項証明書です。現在の登記事項のみが記載されているので過去に登記されていた内容などは記載されません。
銀行手続きや不動産契約などで自分の会社の現状を証明する場合などは現在事項証明書を取得します。
<「現在事項証明書」の見本>
出典:著者提供画像を一部加工
2.履歴事項証明書
「履歴事項証明書」とは、会社の現在の情報に加えて、過去の一定期間(3年前の年の1月1日以降)の変更履歴も記載されている登記事項証明書です。
例えば3年以内に本店を移転していたり、取締役などの役員が変更されていたりする場合、現在事項証明書には現在の本店住所や役員氏名だけ記載されますが、履歴事項証明書の場合には移転前の本店住所や過去の役員氏名も記載されます。
会社の信用情報の確認や、過去の状況を知りたい場合は、履歴事項証明書を取得します。
<「履歴事項証明書」の見本>
出典:著者提供画像を一部加工
3.閉鎖事項証明書
「閉鎖事項証明書」は、会社を解散した場合や本店を移転して管轄法務局が変わった場合など、登記記録が閉鎖された情報について確認したい場合に取得する登記事項証明書です。
前述の履歴事項証明書はおおよそ過去3年分の登記情報しか記載されないので、それ以前の登記履歴を確認したい場合に使用します。
<「閉鎖事項証明書」の見本>
出典:著者提供画像を一部加工
なお、現在事項証明書、履歴事項証明書、閉鎖事項証明書は、すべての事項が記載してある「全部証明書」と一部の情報のみを記載した「一部証明書」をそれぞれ選ぶことができます。
「全部証明書」のほうが記載されている情報が多いので、一部の情報のみを提示したい特別な理由がなければ「全部証明書」を取得するのがよいでしょう。
4.代表者事項証明書
「代表者事項証明書」とは、会社の登記情報のうち、特に代表者の情報のみを記載した登記事項証明書です。
代表者の情報は「現在事項証明書」や「履歴事項証明書」にも記載されていますが、これらの証明書は他の役員情報や資本金額など、代表者以外の情報も含まれています。「代表者に関する情報だけが必要」という場面では「代表者事項証明書」を取得します。
<「代表者事項証明書」の見本>
出典:著者提供画像を一部加工
登記事項証明書が必要な場面とは?
それでは具体的に、どのような場面で登記事項証明書が必要になるのか、またそれぞれの場合でどの種類の登記事項証明書を取得することが多いのかをみていきましょう。
銀行で法人口座の開設や融資を申し込むとき
銀行で新たに法人の預金口座を開設する場合や新規で融資を申し込む際には、会社の所在確認として必ず登記事項証明書が求められます。
近年はマネーロンダリングや反社会勢力に対する取引を防止するために本人確認が厳格に行われるようになっており、口座開設や融資の実行まで時間がかかる場合が多いです。時間に余裕をもって手続きに臨みましょう。
登記事項証明書は現在の情報が必要なので「現在事項証明書」を求められることが多いですが、「現在事項証明書」の情報も含めて記載されているため「履歴事項証明書」でも問題ありません。
法人名義で保険の手続きをするとき
火災保険や自動車保険、生命保険などに法人名義で加入しようとする場合も、会社の所在確認、代表者確認のために登記事項証明書が必要です。
登記事項証明書は現在の情報が必要なので「現在事項証明書」を求められることが多いですが、「現在事項証明書」の情報も含めて記載されているため「履歴事項証明書」でも問題ありません。
登記内容を変更するとき
法人の登記内容を変更したい場合は、改めて法務局に登記が必要です。
登記情報は法務局にデータで管理されているため、あえて登記事項証明書を取る必要はありませんが、自分の会社の登記内容を確認しておきたい場合には「履歴事項証明書」を取ることで過去から現在までどのような登記がされたのかを知ることができます。
事業許認可の申請をするとき
飲食店や美容室、介護施設などを営業するために市区町村や保健所の許可を取る必要がある場合、許認可の申請の際に登記事項証明書が必要となるケースがほとんどです。
登記事項証明書が必要かどうかは許可申請を行う相手先によって変わるので事前に問い合わせて確認しておきましょう。
オフィスや店舗の賃貸契約を結ぶとき
法人でオフィスや店舗の賃貸契約を結ぶ際にも登記事項証明書が必要です。
近年は不動産の賃貸契約は保証人の代わりに信用保証会社を利用することが多く、その際に会社の所在確認や代表者確認、信用調査があります。登記事項証明書は基本的には「現在事項証明書」で問題ありませんが、「履歴事項証明書」が欲しいという不動産業者もいるため事前に確認が必要です。
補助金や助成金の申請を行うとき
行政やハローワークに対して補助金や助成金を申請する場合、申請書類に合わせて登記事項証明書が必要です。
基本的に公的な書類は登記事項証明書に記録されているとおりに記載する必要があるので、略称や屋号で記載するのではなく正式名称を使います。登記事項証明書は現在の情報が必要なので「現在事項証明書」を求められることが多いですが、「履歴事項証明書」でも問題ありません。
新規取引先と契約するとき
特に行政や上場企業などと取引をする場合には自社の情報を開示するために登記事項証明書を提出する場合があります。
ただ会社の情報だけなら国税庁のホームページから「法人番号検索」をすることで存在の確認ができますし、インターネット検索で事業内容なども確認できるようになっていますので、あえて登記事項証明書の提出を求められることも少なくなってきているようです。もし登記事項証明書が必要といわれたら用意するスタンスでよいでしょう。
決算申告するとき
法人の毎年の決算で税務申告をする際に、登記事項証明書を取得する必要はありません。ただし、取締役として登記されている役員は数年に1度、役員の任期満了に伴う改選の登記が必要です。
役員の任期は会社によって違いますので決算のタイミングで登記が必要かどうかを再確認するようにしましょう。
登記事項証明書の取り方と手数料
登記事項証明書を取得する方法は、大きく分けて「窓口で取得する」「オンライン申請で取得する」「郵送で取得する」の3つがあります。
法務局の窓口で直接取得する場合は即日で手に入れることができますが、郵送やオンライン申請の場合には数日から1週間程度かかります。
窓口申請 | オンライン申請 | 郵送申請 | |
---|---|---|---|
メリット |
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デメリット |
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|
手数料 | 1通 600円 |
郵送 1通 520円 |
1通 600円 |
取扱時間 | 平日の午前8時30分から午後5時15分 | 24時間(午後5時15分以降に申請した場合には翌業務日に受付) | いつでも受付(申請書が到着した時点で申請受付) |
それぞれの申請方法の特徴と手数料についてみていきましょう。
法務局(登記所)の窓口で取得する
法務局が営業している平日の午前8時30分~午後5時15分に直接窓口へ行き、申請する方法です。
この方法は、申請後すぐに登記事項証明書を受け取れるというメリットがあります。窓口が混んでいなければ10分程度で取得できる場合もあるでしょう。
また、申請書の記入内容に不明点があるときは、窓口で担当者に相談しながら申請できる点も安心です。急いで登記事項証明書が必要な人や、申請方法が不安な方におすすめです。
<登記事項証明書交付申請書の見本>
出典:法務局「登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式」
オンラインで取得する
法務局のオンライン申請システムを利用する方法です。
自宅やオフィスから申請できる手軽さが魅力で、手数料が窓口や郵送よりも安い点もメリットといえるでしょう。また、申請後は、登記事項証明書を法務局で受け取ることも、郵送で受け取ることも可能です。
ただし、オンライン申請システムの操作に慣れる必要があり、本人確認の手続きも必要です。法務局に行く時間がない人、手数料を抑えたい人、パソコン操作に慣れている人に向いています。
詳しくは法務局のWebサイトを確認してください。
法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
郵送で取得する
申請書を郵送して、登記事項証明書を郵送で受け取る方法です。
法務局のWebサイトから申請書をダウンロードして、必要事項を記入し、収入印紙を貼って、返信用封筒を入れて送ります。法務局に行く必要がない点がメリットですが、準備にやや手間がかかる点や、申請から受け取りまで数日~1週間程度かかる点は注意が必要です。
法務局が遠方にあり足を運ぶのが難しい人や、時間に余裕がある人におすすめの方法です。
申請書は下記のWebサイトからダウンロードすることができます。
法務局「登記申請書・登記事項証明書等の様式のダウンロード」
登記事項証明書に関するよくある疑問
登記事項証明書に関するよくある疑問についてQ&A形式でお答えしていきます。
Q.登記事項証明書は誰でも取得できる?
A.はい、登記事項証明書は誰でも取得することができます。
法人の登記情報は公的に開示されているものがほとんどなので個人情報と違い申請すれば誰でも取得することが可能です。一方で、法人の印鑑証明を取得する場合には、代表者本人か委任状が必要です。登記事項証明書と印鑑証明がセットで必要となる場合が多いので気をつけましょう。
Q.登記事項証明書を取得する際に必要なものは?
A.収入印紙を貼る必要がありますので申請手数料(1通490円~600円)が必要です。印鑑や身分証明などは不要です。
Q.登記事項証明書に有効期限はある?
A.登記事項証明書自体に有効期限はありません。
しかし、提出先によっては「発行から6カ月以内」などの有効期限を設けている場合もあります。提出先に、有効期限があるかどうか、いつ発行されたものであれば有効か、直接問い合わせてみましょう。
Q.登記事項証明書をすぐにもらえる方法はある?
A.登記事項証明書は窓口で申請をすれば早ければ10分程度で発行されます。
ただし、窓口での申請の場合は申請書を記入して収入印紙を購入する時間も必要なので、混雑を回避したいのであれば事前にオンラインで申請と納付を済ませておき、窓口で証明書を受け取るのがおすすめです。
法人設立・開業の準備を効率化するには?
会社を設立して事業を始めるには、登記事項証明書の取得以外にも、さまざまな手続きや準備が必要です。許認可の申請、銀行口座の開設、オフィス探し、従業員の採用など、やらなければならないことが山積みで、時間も労力もかかります。
「なるべくスムーズに開業準備を進めたい」「本業に集中したい」という人は、開業を支援するサービスの活用も検討してみましょう。例えば「Air ビジネスツールズ」の「開業支援セット」は、会計、決済、売上管理・分析、予約・受付管理など、ビジネスに必要な14のサービスをまとめて提供しているほか、相談も受け付けています。上手にこういったサービスも活用しながら、スムーズな開業準備を進めましょう。

まとめ
- 登記事項証明書と登記簿謄本は同じもの
- 登記事項証明書はさまざまな場面で提出を求められるので事前準備が必要
- 登記事項証明書は提出先によって種類と有効期限が異なるので提出先に事前に確認をしておく必要がある
新たに法人を設立したばかりの方にとっては、登記事項証明書の取得は複雑に感じるかもしれませんが、ポイントをおさえれば手続きは難しくありません。
さまざまな場面で登記事項証明書の提出が必要となりますので、事前の備えをするようにしていきましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
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穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士
税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住
中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。