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いくらになる?いつ支払う?住民税に関する疑問にお答えします

従業員を雇用する側の法人にとって、やや複雑な仕組みの住民税はしっかり理解しておきたいところです。住民税には個人住民税と法人住民税があります。今回は、個人住民税の概要や計算方法、注意したい点などについて見ていきましょう。

この記事の目次

住民税額について

なぜ、住民税のしくみや住民税額が複雑だと感じるのでしょうか。主な理由としては、収入(所得)によって納税額が異なることや、住民税の計算方法が分かりにくいことなどが考えられます。まずは、住民税のしくみなどについて確認してみましょう。

そもそも住民税って? いつから支払うの?

住民税は、都道府県や市区町村が行う日常生活と密接に結びついた行政サービスに必要な経費を、収入に応じて住民に分担してもらうことが望ましいという地方税の性格をよく表している税金です。道府県民税(東京都は都民税)と市町村民税(東京都23区は特別区民税)を合わせた名称が住民税となります。

  • 東京都で23区に在住の場合: 住民税 = 都民税+特別区民税
  • 東京都で23区以外に在住の場合: 住民税 = 都民税+市町村民税
  • 東京都以外に在住の場合: 住民税 = 道府県民税+市町村民税

住民税の納税額

道府県民税(東京都は都民税)と市町村民税(東京都23区は特別区民税)は、それぞれ「均等割」と「所得割」に分けられ、「均等割」と「所得割」を合算したものが住民税の納税額となります。

均等割

個人の所得金額にかかわらず一定額を納付します(住民が費用を広く一律に負担するという考え方から)。

所得割

個人の所得金額に応じて納付します。

例)
東京都練馬区の場合

均等割:合計5,000円
都民税(道府県民税)1,500円、特別区民税(市町村民税)3,500円
所得割:合計税率10%
都民税(道府県民税)税率4%、特別区民税(市町村民税)税率6%

住民税の課税基準

国籍を問わず、その年の1月1日現在の住所地で、前年の1月から12月までの1年間の所得に対して課税されます。例えば、1月2日に転居した場合でも、1月1日に居住していた住所地にその年の住民税を納付することになります。

住民税の申告

以下の要件に該当しない場合は、申告する年の3月15日までに住民税の申告をする必要があります。また、非課税の場合でも申告が必要となる場合があります。

住民税の申告が不要となる主な要件

  1. 前年中の所得が給与所得のみで、勤め先から給与支払報告書が提出されている人
  2. 前年中の所得が公的年金に係る雑所得のみで、源泉徴収票に記載された控除以外に申告すべき控除がない人
  3. 所得税の確定申告をした人

住民税の納付

普通徴収

自営業者などの場合、送付される納税通知書によって、1年分の税額を一括(6月末まで)もしくは4回(6月・8月・10月・翌年の1月の末日)に分けて納付します。

特別徴収(給与から)

会社員の場合、会社などの給与支払者(特別徴収義務者)が、税額を6月から翌年5月までの年12回に分けて、毎月の給与支払の際に、納税者の給与から差し引き(給与天引き)、納税者に代わって納付します。

特別徴収(年金から)

公的年金受給者の場合、4月から翌年2月までの年6回(偶数月)に、受給される公的年金から差し引かれます。

住民税の計算方法が複雑になる理由は?

以下の項目から、住民税の計算方法が複雑になる理由について確認してみましょう。

所得控除が所得税と異なる

所得税と異なる主な所得控除は、以下の通りです。

人的控除(主なもの)

  • 基礎控除:33万円(所得税:38万円)
  • 配偶者控除:~33万円(所得税:~38万円)
  • 一般扶養控除:33万円(所得税:38万円)
  • 特定扶養控除:45万円(所得税:63万円)
  • 老人扶養控除(同居老親):45万円(所得税:58万円)
  • 老人扶養控除(同居老親等以外):38万円(所得税:48万円)

生命保険料控除

  • 新契約:上限2.8万円(所得税:上限4万円)
  • 旧契約:上限3.5万円(所得税:上限5万円)

地震保険料控除

  • 住民税:上限2.5万円(所得税:上限5万円)

上記のように、住民税の所得控除額は、所得税より少なくなっています(所得税と住民税の人的控除額の差については、後述の調整控除額を参照)。

均等割は自治体により異なる

均等割の金額は、自治体により異なるため、全国一律ではありません。

例)
東京都練馬区は、合計5,000円(特別区民税(市町村民税)3,500円、都民税(道府県民税)1,500円)ですが、神奈川県相模原市では、合計5,300円(市町村民税3,500円、道府県民税1,800円)など。

調整控除額

所得税と住民税の人的控除額の差に基づく負担増を調整するため、住民税所得割額から調整控除額を減税 (税額控除)するというものです。

整控除額の算出方法例(東京都練馬区の場合)

  • 合計課税所得金額が200万円以下

人的控除額の差の合計額と住民税の合計課税所得金額のいずれか少ない額の5%(特別区民税3%、都民税2%)

  • 合計課税所得金額が200万円超

{人的控除額の差の合計額 - (住民税の合計課税所得金額※-200万円)}の5%(特別区民税3%、都民税2%)
ただし、この金額が2,500円未満の場合は2,500円となります。

住民税の計算方法

均等割については、個人の所得金額にかかわらず一定額(自治体によって金額が異なります)を納付しますが、所得割については個人の所得金額に応じて納付します。

所得割の計算方法

  1. 所得の計算
    会社員の場合:給与の収入金額-給与所得控除 = 給与所得(以下:所得)
    自営業者などの場合:売上-経費 = 所得
  2. 課税所得の計算
    所得-各種所得控除 = 課税所得
  3. 所得割の金額計算
    課税所得×税率 = 所得割の金額
  4. 差引所得割の金額計算
    所得割の金額-調整控除額 = 差引所得割の金額

住民税額は、均等割の金額と差引所得割の金額の合計額となります。

実際にいくらになるか計算してみよう。

例を挙げて、実際に計算してみましょう。

例)
東京都練馬区に在住のAさんの場合

給与収入:220万円(給与所得控除後の給与所得:136万円)
社会保険料控除:19万円
基礎控除:33万円
均等割の金額:合計5,000円
特別区民税(市町村民税)3,500円、都民税(道府県民税)1,500円

所得割の金額

  1. 所得(給与所得)の計算
    給与所得控除後の給与所得:136万円
  2. 課税所得の計算
    各種所得控除の合計金額 = 19万円(社会保険料控除)+33万円(基礎控除)= 52万円
    課税所得 = 136万円(給与所得)-52万円(各種所得控除の合計金額)= 84万円(千円未満切り捨て)
  3. 所得割の金額の計算(所得割の税率:特別区民税6%、都民税4%)
    特別区民税:84万円(課税所得)×6% = 50,400円
    都民税:84万円(課税所得)×4% = 33,600円
  4. 差引所得割の金額計算
    Aさんの課税所得の金額は84万円ですので、調整控除額は合計課税所得金額が200万円以下の要件に該当します。
    東京都練馬区の場合の調整控除額
    人的控除額の差の合計額と住民税の合計課税所得金額のいずれか少ない額の5%(特別区民税3%、都民税2%)
    Aさんの人的控除額の差額:所得税38万円-住民税33万円 = 5万円
    Aさんの合計課税所得金額:84万円
    Aさんの人的控除額の差額(5万円) < Aさんの合計課税所得金額(84万円)となりますので、調整控除額は以下のとおりとなります。
    特別区民税の調整控除額:5万円×3% = 1,500円
    都民税の調整控除額:5万円×2% = 1,000円
    それぞれの差引所得割の金額
    特別区民税:50,400円-1,500円 = 48,900円
    都民税:33,600円-1,000円 = 32,600円
    差引所得割の合計金額は、48,900円+32,600円 = 81,500円

こんな時は注意! なポイント

住民税で注意しておきたい主な例を以下に挙げます。

会社員で特別徴収されていた人が年の途中で退職した場合

退職などで、その翌月以降に特別徴収することができなくなった場合、以下の要件に該当しないケースでは、残りの税額を普通徴収の方法で納付することになります。

普通徴収に該当しない要件

  1. 会社などに再就職し、就職先の会社で引き続き、特別徴収される場合
  2. 退職の際に給与・退職金等から残りの税額を一括して差し引かれる場合

住民税の納付は、1年以上の時間差がある

前述のとおり、退職などで残りの税額がある場合は、普通徴収などの方法で納付しますが、翌年の住民税は退職した年の収入に応じて決まります。場合によっては想定を超える高額な住民税額となるケースがあります。

個人事業主と会社員で違いはあるの?

所得割の所得の計算で、会社員の場合は「給与所得(給与所得控除後の金額)」、個人事業主(自営業者など)の場合は「所得(売上-経費)」という違いなどはありますが、個人事業主と会社員で異なるということは特にありません。

 

まとめ

  • 住民税は道府県民税(東京都は都民税)と市町村民税(東京都23区は特別区民税)を合わせたもの
  • 所得割については個人の所得金額に応じて納付するため計算が必要に
  • 個人住民税が試算できるWebサイトの活用も便利
  • 住民税の納付には1年以上の時間差があるので要注意

個人住民税の計算方法について解説してきました。複雑で分かりにくいと思っている人も多いかもしれませんが、全体的な計算の流れは所得税の計算式に似ています。住民税のしくみや計算方法などを理解するだけではなく、自治体等で提供している個人住民税が試算できるWebサイトなどをうまく活用してみてください。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

中田 真(なかだ まこと)ファイナンシャルプランナー

中田FP事務所 代表/CFP®認定者/終活アドバイザー/NPO法人ら・し・さ 正会員/株式会社ユーキャン ファイナンシャルプランナー(FP)講座 講師/元システムエンジニア・プログラマー。給与明細は「手取り額しか見ない」普通のサラリーマンだったが、お金の知識のなさに漠然とした不安を感じたことから、CFP®資格を取得。現在、終活・介護・高齢期の生活資金の準備や使い方のテーマを中心に、個別相談、セミナー講師、執筆などで活動中。https://nakada-fp.com/

 

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