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「有限会社」は株式会社や合同会社の設立とどんな違いがあるのか?

名刺や看板でよく目にする有限会社。法律改正によって新規設立はできなくなりましたが、株式会社や合同会社とは異なる法人格として今も存在し続けています。ここでは、有限会社がどういう会社組織で、株式会社や合同会社と何が違うのか解説します。

この記事の目次

有限会社は新たに設立できない

「有限会社」は2006(平成18)年5月1日の会社法改正によって廃止され、現在では新規に作ることのできない法人形態です。現在も存在する有限会社は、2006年4月30日以前に作られた会社となります。では、なぜ有限会社は廃止されたのでしょうか。

有限会社を設立できない理由・経緯

かつての株式会社は、最低でも資本金は1,000万円以上、取締役3名以上に監査役1名以上を揃えないと設立することができませんでした。事業を始める方にとってかなり高いハードルです。

もう少し小さい規模でもスタートできるように、資本金300万円以上あれば設立することができるようにしたものが有限会社です。有限会社という呼称は、株式を発行して資本金を調達できない制限付き(有限)であることに由来します。

法改正後、簡単な条件で株式会社が設立できるようになりました。会社設立のハードルが下がったのに伴い、有限会社という制度そのものの必要性がなくなってしまったため、有限会社法を廃止して株式会社に一本化することに。そのため、現在では新規に設立することができないのです。

今の有限会社とは

有限会社法はなくなりましたが、現在も有限会社という法人格は残っています。かつて日本には多数の有限会社が存在していました。一斉に株式会社に名前を変えると、会社の看板や名刺、HPや会社案内などすべてを作り替える必要があります。これに中小企業が猛反発。政府が妥協策として法改正以前に有限会社だった会社は、法人名に「有限会社」という法人格を残しても良いこととしました。これを特例有限会社と呼びます。

なお、有限会社の一般原則を規定していた「有限会社法」は既に存在せず、有限会社は株式会社と同じ「会社法」という法律に基づいて運営することになっています。

会社法で定められている会社法人とは

個人事業と会社組織(法人)の大きな違いは、「資本(お金を出す人)」と「経営(お金を運用する人)」が一体なのか分離されているのかという点です。個人事業は資本と経営が一体であるため、自らの資金で商売を始め、それによって得た利益はすべて自分のものになります。しかし、会社組織の場合は出資者がお金を出し、その元手を経営者に任せて運用させ、得た利益を出資者で分け合います。

会社法ではこの「出資」と「経営」の責任範囲の違いによって「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4つの会社形態が存在します(有限会社は株式会社の中に含まれます)。会社のほとんどは「株式会社」「合同会社」の形態をとっており、「合名会社」「合資会社」の形態を取る社は酒蔵など特殊な業態の事業に限られます。

新しくなった株式会社について

会社法改正によって、株式会社が簡単に設立できるようになった一方で、問題点も生じています。計画性がない状態で立ち上げた結果、短期間で倒産してしまったり悪用されたりと、信用度が会社名だけでは判断しにくくなったことも事実です。

「新たに登場した」合同会社について

2006年の改正によって新たに誕生した会社形態が「合同会社」です。法人設立時に定款認証費用(公証役場で定款が法的に不備がないことを証明してもらうための費用)がかからないことや、法務局に対する登録免許税(法務局のデータベースに公的に法人情報を登録するための行政手数料)が株式会社の15万円より低い6万円であることから、時間的・費用的に設立しやすい形態だといえます。

合同会社の最大の特徴は、議決権(会社の重要な方針を決める権利)の数を出資比率合わせなくてもよい点です。株式会社の場合、議決権の数は基本的に出資している株式数と同じになります。つまり、出資金額が50%超となった時点で実質的にその会社を支配したことになります。

対する合同会社は、出資比率に関わらず議決権の割合を自由に決めることができます。仮に資本金の出資比率が10対90であったとしても、議決権割合は50対50とできます。また、20対80のように議決権を逆転させることもできます。アイデアやノウハウを持つものの資本力が弱い企業が、出資比率の高い企業に実質的に乗っ取られることを防げるのです。

有限会社・株式会社・合同会社の基本的な違い

いわゆる「営利を目的とする企業」が新たに会社組織で事業を行う場合には、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」のいずれかの法人形態を取るのが一般的です。新たに設立はできませんが「有限会社」を買い取って事業を行うケースもあります。

それぞれの法人組織を簡単にまとめると以下のようになります。

会社形態のまとめ

実際の組織運営では「株式会社」「合同会社」「有限会社」のいずれかを使うケースが大半です。ここではそれぞれの基本的な違いなどについて見ていきましょう。

有限会社とは

有限会社は、資本金が300万円以上あれば設立ができる代わりに株式の発行を制限する(有限)会社として設立が認められていた法人形態です。現存する有限会社は少なくとも設立から13年以上の社歴があり、資本金は最低でも300万円以上あるということになります。

有限会社は新しく設立できませんので、もし有限会社で事業展開をしたいと思った場合には、過去に設立された有限会社の出資を買い取ることで、引き続き有限会社として活動することもできます。

しかし、有限会社を買い取った場合、「商号(会社名)」を変更してしまうとその時点で「有限会社」という法人格は名乗れなくなりますので注意が必要です。

株式会社とは

株式会社は、日本で最も使われている代表的な法人格です。以前は資本金を1,000万円以上用意し、役員だけでなく監査役なども必要だったため、「株式会社=しっかりとした会社」というイメージが今でも根強くあります。

株式会社の特徴の一つに、株式を発行することで第三者から資本を集めやすい点があります。合同会社と違い、株式の保有割合によって会社の支配権が決まるため、株主の力関係が分かりやすく、投資家や銀行などの利害関係者が出資の判断がしやすいといえます。

なお、株式会社の形態を取る会社の中に、「持ち株会社」というものが存在します。これは、株式を保有することを目的として設立する会社のことです。株式保有のみを目的とする「純粋持ち株会社」と、親会社自ら事業を持ちながら子会社の株式も保有する「事業持ち株会社」の大きく2つの事業形態があります。持ち株会社は、株式を保有するという目的を明確にしているという点で特定目的会社と呼ばれます。会社組織としては、「株式会社」「合同会社」などを利用したり、「一般社団法人」「公益財団法人」など非営利型の法人格を利用したりと、多様な形態が存在します。

合同会社とは

法人設立にかかる時間とコストを抑えられる合同会社。役員(業務執行社員)に任期がないため、自主的に役員を変更しないかぎりは、役員変更に伴う登記費用もかかりません。そのため小規模な事業や、出資を外部から調達しない会社、ジョイント・ベンチャーのように、特定の企業との間だけ資本提携がされる場合などに向いています。

有限会社・株式会社・合同会社のメリットとデメリット

ここでは、株式会社、有限会社、合同会社のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

会社形態のメリット・デメリット

有限会社のメリット・デメリット

有限会社(特例有限会社)は、先述のとおり近年信用度が増しています。金融機関は創業年数も評価のポイントとして見ており、有限会社の時点で「ある程度の歴史がある」と評価してもらえます。この点は大きなメリットといえるでしょう。

一方、有限会社は、株式市場に上場することができません。株式会社とは異なり株式公開による資金調達ができないため、多額の資金が必要な場合に資金の調達方法が限られる点はデメリットといえるでしょう。

株式会社のメリット・デメリット

株式会社のメリットは、認知度の高さです。株式を新規に発行して第三者に割り当てる形での資金調達しやすく、また、金融機関からの借入もしやすい点もメリットといえます。

デメリットは、現在は資本金1円から簡単に設立することができるため、以前に比べると株式会社に対する信頼性が低くなっている点です。株式会社にとって資本金額は重要な位置づけのため、資本金を1万円や10万円で株式会社を設立した場合、銀行から借入をするときに非常に苦労したり、大手企業と取引ができなかったりします。設立時の資本金は、最低でも100万円以上とすることをおすすめします。

先述の持ち株会社のメリット・デメリットについても触れておきたいと思います。最大のメリットは、意思決定の速さにあります。基本的に、持ち株会社は株式と金融資産しか保有しないので、経営陣を最小限に抑えることができます。また、ホールディングスについては、会社の株式を買い取って子会社化し、不必要な会社は株式を売却して資本関係を解消するだけなので、主軸の事業成績によって意思決定が左右されにくい点もメリットといえます。

デメリットとしては、持ち株会社としての会社を新たに設立する必要があるので、税務申告や事務的な手間とコストが余計にかかります。

合同会社のメリット・デメリット

合同会社のメリットの一つに、会社設立時の費用が株式会社に比べて安い点があります。株式会社と比較して定款認証費用や登録免許税など法定費用だけでも14万円、司法書士などに支払う報酬も加えると17~18万円、設立費用が安くなります。出資金額に左右されずに会社の議決権を設定することができる点もメリットといえるでしょう。

デメリットの一つが、運用開始から10年以上が経過して認知度が上がってきたとはいえ、株式会社に比べると未だ認知度が低いという点です。また、合同会社のメリットとして設立費用を押さえられるという情報がネット上にあふれているので、「創業資金が乏しい会社が選択する設立方法」という先入観を持たれるケースがまれにあります。

もちろん、しっかりと業績を作っていけば気にするほどでもありません。しかし、合同会社は株式会社と違い、株式を発行して資本増強するという考え方があまり存在しないので、創業間もない時期や業績が苦しい時期に金融機関に借入の相談に行く場合は、資本金が少ないと厳しい対応を取られることがあります。

まとめ

  • 有限会社は新規設立ができないために信用度が高い
  • 合同会社は設立費用が安いが資金調達の面で株式会社より苦戦する可能性あり
  • 株式会社は資本金1円からでも簡単に設立できるようになったため相対的に信用度が下がってきた
  • 持ち株会社は事業効率化と意思決定のスピードを高める特定目的会社

有限会社がどういう会社組織で、株式会社や合同会社と何が違うのか解説してきました。一口に法人設立といっても、法人形態や特徴に大きな違いがあります。それぞれのメリット・デメリットと、これから自分がどのようなビジョンで事業展開していきたいのかによって、法人組織を使い分けることが何より大切といえるでしょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住

中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。

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