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合同会社(LLC)の設立方法とメリット・デメリットを専門家が解説

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

最近では認知度が高まってきた合同会社。起業されるかたは、他の会社形態との違いをしっかりと理解し検討したいものです。そこで本記事は、合同会社のメリット・デメリットや設立方法について解説します。

この記事の目次

合同会社とは

合同会社(Limited Liability Company=略称:LLC)は、2006(平成18)年の会社法改正によって新たに誕生した会社形態です。アイデアやノウハウを持つ人たちが一緒に共同参画(合同)し、事業を立ち上げることを推進するために作られました。

出資金の割合と議決権の割合を別々に設定することができるため、資金力の強い者が支配権を持ったり、配当を独占したりすることを回避できます。アイデアのあるベンチャーなどに向いている会社形態といえるでしょう。

株式会社との違い

株式会社との最大の違いは、株主の議決権を出資割合にしなくてもよい点です。株式会社の場合、議決権の50%超の株式を保有すると実質的にその会社を支配できます。つまり、出資比率が高いほど発言力が強くなるのです。

例えば、素晴らしいアイデアと100万円を出せる発明家と、アイデアはないが9,900万円を出せる資本家がいたとします。1億円の共同出資で株式会社を作った場合、株主総会の議決権は1対99となり、会社で利益が出た場合の配当割合も1対99となります。

一方、合同会社の場合、出資の割合に関わらず議決権の割合を自由に決められます。出資割合が1対99でも、議決権割合を50対50や80対20とできます。

詳しくは「メリット」の項で後述しますが、会社の設立費用が株式会社より低かったり、設立にかかる時間が株式会社に比べると短かったりする点も、大きな違いです。また、株式会社に存在する役員の任期は合同会社に存在しません。

個人事業主との違い

合同会社は法人の一形態であり、個人事業主とは大きく異なる存在です。例えば、個人事業主は他人から出資という形でお金を調達することができません(借入れでの資金調達は可能です)。一方、合同会社は法人であるため、第三者から出資を受けられます。出資を受ける必要性や予定がある場合は、合同会社を含め法人組織で事業を始めることが選択肢となるでしょう。

合同会社のメリット・デメリット

合同会社を設立して新しい事業を始めようと検討されている方もいらっしゃるかと思います。ここでは、合同会社で事業を始めるメリットとデメリットについて見ていきましょう。

メリット デメリット
  • 設立費用が株式会社より安い
    (約14万円以上)
  • 設立にかかる時間が短い
  • 役員改選の必要がない
  • 第三者に介入されにくい
  • 共同参画がしやすい
  • 認知度が低い
  • 上場できない
  • 資金調達の手段が制限される

合同会社のメリット

合同会社を選択するメリットには様々なものがあります。

まず、会社の設立費用が株式会社の場合よりも低くなります。会社を設立するためには法務局で登記が必要ですが、そのとき登録免許税などの法定費用がかかります。株式会社の場合は最低でも20万円(定款認証費用5万円、登録免許税15万円)かかりますが、合同会社は6万円(登録免許税6万円)で済むため、少なくとも14万円は法定費用が安くなります。少ない自己資金の中で事業を始めようとする方にとって14万円の差は大きいといえるでしょう。

また、合同会社の場合には「定款認証」というプロセスが不要なため、設立にかかる時間も株式会社に比べると短くなります。

さらに、合同会社には「役員の任期」がありません。株式会社の役員には任期があり最短で2年に一度、最長で10年に一度は役員を選び直す「役員改選」の登記を法務局で行う必要があります。その際にも登記費用がかかりますが、合同会社にはそれが不要なことも魅力です。

合同会社のデメリット

続いて合同会社のデメリットについても見ていきましょう。

合同会社の存在は徐々に認知されてきていますが、他の法人形態との具体的な違いについて、世間で完全に理解されているとはいえません。そのため、ネット上では「設立費用が安い」という部分がクローズアップされた記事が目立ちます。「合同会社=資金があまりない会社」という先入観を持たれるケースがあります。

また、合同会社は出資割合と議決権の割合が自由に設定できるため、第三者の投資家等が出資しにくい構造になっています。どれだけ出資しても議決権が獲得できないのであれば、そこの会社に出資するメリットが失われてしまうからです。そのため、株式会社に比べて資金調達の手段が少なくなります。また、株式会社のように株式を新規発行して第三者に販売するという概念がないことから、「株式公開」つまり証券市場に上場することもできません。

合同会社に向いているケースや業種

合同会社にはどのような業種が向いているのでしょうか。

まず、合同会社は不特定多数の第三者からの出資を想定していないため、事業化について特定のスポンサーがいる場合や、ジョイント・ベンチャーのように共同ビジネスをする相手が決まっている会社、第三者に介入されたくない会社に向いています。

創業時に金融機関からの資金調達があまり必要ではない会社も向いているといえるでしょう。コンサル業など、初期投資が少なくて済む業態や店舗や設備を必要としない事業がこれに該当します。

また、株式会社よりも設立・運用コストが安いという理由から、持ち株会社、不動産保有会社、MS法人など節税や特定の目的のために設立する会社も向いているといえます。

合同会社にかかる税金

合同会社を設立した場合には、どのような税金がかかるのか見ていきましょう。

法人税

法人が得た所得(利益)には法人税(国税)がかかります。計算方法は、基本的に23.20%、所得が800万円以下の場合は15%の税率をかけます。合同会社と株式会社に違いはありません。つまり、法人税のことのみを考えれば、合同会社であることによる有利・不利は特にないといえるでしょう。

法人住民税・法人事業税

法人の場合には、地方税の法人住民税と法人事業税も収める必要があります。納税先は、法人が所在する都道府県と市区町村です。所得がない(赤字の)会社は税額がゼロとなります(※均等割りを除く)が、法人住民税に関しては所得の金額に関係なく、均等割りがかかります。これは、その所在地で事業を行うための最低限の維持費という位置づけです。法人住民税も法人事業税も課税のされ方に株式会社と違いはありません。

消費税等

日本国内で事業を行う者(法人・個人問わず)は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、消費税等(消費税と地方消費税合わせて10%)を顧客から預かり、国に納める必要があります。基準期間とはその事業年度の2年前の属する事業年度。法人設立後の最初の2期は基準期間が存在しないため消費税の納税義務は免除されます(資本金1,000万円以上の法人は除きます)。消費税の計算方法は株式会社と同じです。

合同会社設立までの手順

合同会社の設立を決意したら、まず何から手をつければよいのでしょうか。ここでは、合同会社設立までの手順を簡単に説明していきます。

まずは定款を作成する

合同会社を設立するには、まず「定款(ていかん)」を作成します。定款とは、法人(会社)の存在を表す基本設計書のようなものです。法人とは法律によって人格を与えられた存在であり、新しく法人を創るためには理由が必要となります。その法人の設立目的や名前、住所などの基本的な情報をまとめたものが定款であり、この定款の内容に基づいて法務局で法人設立の登記を行います。

定款には、主に以下のような内容を記載します。

【定款に記載する内容】

項目 記載内容
①商号 会社の名前。名前の前後に「合同会社」という法人格を必ず入れる必要がある
②目的 具体的にどのような事業を行うのか、または行いたいのか
③本店所在地 会社の住所
④資本金 誰がいくら出資するのか
⑤議決権 誰がどれだけの議決権を持つのか
⑥業務執行社員 誰が会社を経営するのか、代表となるのか
⑦事業年度 決算日をいつにするのか

基本的に株式会社と設立の流れは同じになりますが、一番大きな違いは「定款認証」が必要ない点です。定款認証とは、公証役場で公証人に定款内容について不備がないという「お墨付き」をもらうこと。株式会社の場合、定款認証費用として50,000円、定款発行費用として2,000~3,000円かかりますが、合同会社の場合不要です。

定款を作成するときに注意していただきたいのが資本金の額です。現在は資本金1円から会社は作れますが、資本金が1円だと法人設立費用すら会社で出せない状況になります。ただでさえ、合同会社は株式会社に比べて出資が制限されるため、銀行などがネガティブに捉えることもあるわけです。創業時にある程度の資本金額(最低でも100万円以上)を用意しなければ、創業融資が厳しくなる可能性がある点を留意しておきましょう。

設立に必要なものを揃える

定款が作成できたら、次に法人設立に必要なものを用意します。主なものを以下にまとめました。

項目 内容
①法人の印鑑 会社の実印(代表者印)、銀行印、社判など
一通り作っておくと書類作成に便利
②個人の印鑑証明 個人の実印が必要なので、実印登録をしていない方は役場で登録が必要。印鑑証明は発行後3カ月以内のもの
③資本金 設立時に実際に定款に記載した資本金を出資者の通帳に集める
④不動産賃貸契約 賃貸物件を本店所在地とする場合、法人設立後でないと法人で賃貸契約ができない。事前に仮申し込みや個人で契約をするなどの対応が必要

法務局へ登記申請を行う

定款と必要書類が揃ったら、法務局へ法人設立の登記申請を行います。登記申請には主に以下のものが必要となります。

項目 内容
①登記申請書 法務局のHPにひな型あり
②添付書類 定款や社員就任承諾書など
③個人の印鑑証明書 各個人1通必要
④登録免許税 6万円

申請後、書類に不備がないのかをチェックする「補正期間」が数日から1週間程度あります。そこで特に問題がなければ法人設立が完了します。「法人の設立日」は、審査が完了した日ではなく、法務局に登記申請をした日となります。

合同会社の設立が完了したら、法人の登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書を2~3部ずつ発行しておきましょう。不動産の賃貸契約や法人口座の開設時、税務署への設立届提出時などに必要になります。

 

まとめ

  • 合同会社はベンチャーや初期投資が少ない会社におすすめ
  • 合同会社は株式会社よりも設立の費用が安い
  • 合同会社を設立した後の税金のかかり方は株式会社と全く同じ
  • 資本金の額はある程度用意しておくべき

合同会社は、以前に比べて認知度が上がり設立件数も増えてきたものの、未だにネガティブなイメージを持つ方がいることも事実です。会社の基盤がしっかりとしていれば気にする必要はありませんが、特に創業時は株式会社と大きな違いが出てきます。メリット・デメリットをしっかりと理解したうえで、ご自身の起業スタイルとして、合同会社が適しているのか判断するようにしましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士

税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住

中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。