自分らしいお店づくりを応援する情報サイト

Airレジ マガジン > 経営ノウハウ記事 > 飲食店・小売店が「クラウド会計システム」を採用するメリットは?

飲食店・小売店が「クラウド会計システム」を採用するメリットは?

福島 悠(ふくしま ゆう)公認会計士

近年、個人事業主や資本金1円起業が増えました。しかし一方で会計の知識が無いため、確定申告や決算が出来ない事業主も増えていました。このような現状に対して、クラウド会計は解決策を提案しています。また、業務効率化の側面からも期待出来るため、他の会計システムとの比較を含めて紹介します。

この記事の目次

クラウド会計システムとは

最近よく耳にする“クラウド”ですが、クラウドは日本語で雲を意味しています。元々システムエンジニアがネットワークを示す際に“雲”を用いていたことから“クラウド”という言葉が用いられるようです。クラウドの特徴として、アプリケーションやシステムをダウンロード、インストールすることなく、インターネット上でアプリケーションやシステムを利用する事が出来ます。つまり、「クラウド会計システム」とは、クラウド上にある会計ソフト(事業活動における取引やお金の動きを全て入力・仕訳、集計・レポート、帳簿・決算書類の作成までできるシステム)を、インターネットを通じてどこからでもID・パスワード等でログインでき、データ入力や会計処理ができる仕組みです。
従来は、アプリケーションソフトのCDを購入してきてパソコンにインストールする、もしくはインターネット上で購入したものをダウンロードしてから、インストールしていました。また、アプリケーションや入力したデータは端末に保存されていることから、同じデータを別のパソコンから閲覧するには、サーバーを経由するか若しくはメールで送受信を行って確認するしかありませんでした。

会計ソフトを導入しない場合は、紙で帳簿を付けることになりますが、それには簿記や会計などの知識が必要です。それらの専門知識がない、または一定規模以上の事業を運営するには、会計ソフトの導入は必須と言えます。近年、クラウド技術が提供されてからは、会計ソフトもクラウド化されたものが増えてきました。

会計をクラウド化することのメリット

1.情報漏洩リスクの低下

会計情報は非常に機密性の高い情報です。会計データの中には「取引先」の情報が保管されていますので、見る人が見れば「取引先の信用情報(入出金実績や売上実績等から)」を推測する事が出来てしまいます。従来型の会計ソフトの場合、入力担当者が一人であればリスクは非常に少ないのですが、2人、3人と増えていき、また税理士等の顧問先が増えてくれば、情報を共有するためにデータ送信の頻度が増えます。そうするとデータを送る際に誤って別の人に送信してしまう可能性も増加することになるため、企業情報の漏洩リスクが高まっていきます。この点クラウドサービスは、担当者が何人増えようと同じデータを閲覧することが出来るため、ID・パスワードなどログイン情報の漏洩さえ防げれば人為的なエラーによる情報漏洩リスクはほとんどなくなります。
さらに、データがインターネット上にあるため情報漏洩リスクが高いと思われがちですが、クラウドサービスの提供会社には複数のセキュリティのプロが在籍して監視等しているため、仮に社内にシステムエンジニア(若しくはITに詳しい人)がいなくても、パソコンのセキュリティソフト程度の対策でも、クラウドサービスなら堅牢なシステムの構築が可能と言えます。

2.業務効率化

「ログイン情報」さえ管理できれば誰でもどこからでも、リスクなくデータを閲覧することが出来ます。つまり担当者が複数名いても、物理的なデータのやり取りをする必要がなく、ソフトが入っていない端末でも作業を進めることができます。
またクラウドサービスは、「機能追加や性能を向上させやすい点(拡張性)」も優れています。今主流であるAPI (Application Programming Interface) ※技術はクラウドサービスと非常に相性がよく、これらの技術を使って、他のクラウドサービスやインターネットサービスとタイムリーにデータ連携することが出来ます。たとえば、銀行口座の入出金データやクレジットカードの利用情報等をクラウド会計に取り込み、会計上の「記帳」(口座情報の記録や取引内容の登録)を自動的に行うなど、作業を簡略化できます。
クラウド会計に登録した取引から、ネットバンキングに振込情報を送ることもできます。従来のインストール型のシステムでも同様にAPI技術を用いているものもありますが、他との接続が難しいなど連携が制限されていることが多く、拡張性はクラウドシステムに比べて劣ります。
また、OCR技術(領収書等の文章をスキャニングしてデータ上の文章に変換する技術)とクラウドストレージ(クラウド上のデータ保存場所)を応用した仕組みにより、レシートをカメラで撮影してクラウド会計にアップロードすれば、取引を自動登録するなど、APIで連動出来ないものでも入力を簡素化出来ます。

※(参考)APIとは
APIは自社のソフトウェアやアプリケーションの仕様を一部公開して、他のソフトウェアやアプリケーションと機能を共有するものです。つまり相互に互換性のあるプログラムを効率的に開発することが出来るようになり、システムの連携が可能になります。

会計をクラウド化するのに向いているのはこんな店

会計データは量が膨大で、作成するのに相当手間がかかります。帳簿作成については「1取引1仕訳(帳簿への記録)」が原則として扱われていますから、取引件数の多い企業は非常に手間がかかる事になります。そこでクラウド会計を導入しAPI機能等を利用する事で、業務効率化を図ることが出来ます。

飲食店の場合

飲食店についても「1取引1仕訳」が原則になっているので、一人一人のお客さんのお会計を1つずつの仕訳として記帳していく必要があります(白色申告個人事業主は日々の売上でも可能)。つまり、一日50組ほど入店がある場合には、売上記帳だけで50仕訳を記帳しなければなりません。
これに対してレジシステムとAPI連携しているクラウド会計を用いれば、売上に関する全ての取引を自動で読み取るようになりますので、非常に効率的に記帳が進められます。取引(販売・支払い)件数の多い飲食店は、クラウド会計に向いていると言えます。

※(参考)時給計算から割り出したコスト削減額

  1. 1時間の時給1,300円
  2. 1仕訳に係る時間10秒
  3. 一日の来客数平均50組
  4. 月の営業日数25日

1,300円/時×(10秒×50組×25日)/3,600秒(60秒×60分)= 4,513円
売上記帳だけでも4,513円分のコストが減るため、他のAPIとの連動を駆使すれば更なるコスト削減を目指せます。

小売店の場合

小売店では近年、実店舗とECサイトを併用する店が増えました。その結果、従来のExcel管理だけでは、リアルタイムな在庫一元管理が難しく、在庫不足や管理ミスによる機会損失などが増えるため、“在庫管理システム”を導入する企業も増えました。また小売店は、飲食店と同様に日々の売上件数が非常に多いため、会計帳簿作成も手間がかかります。そういう意味で、小売店の場合には“レジシステム”と“在庫管理システム”をAPIにてクラウド会計と連動すれば、飲食業以上に業務効率化を図ることが出来ます。売上件数が多く、在庫管理システムを導入している小売業も、会計のクラウド化でメリットが出やすい業種です。

個人事業主や小規模企業の場合

業種に関係なく、個人事業主や小規模企業は、事業主や代表自らが帳簿を作成するケースが多いですが、「帳簿の付け方」を知らない人が多いようです。クラウド会計は「帳簿作成初心者向け」に設計されているものが多く、専門知識がなくても比較的簡単に帳簿を作成できるようになっています。また、普段はパソコンで作業する人でも、スマートフォンなどにアプリケーションをインストールしておけば、電車移動などの時間を利用して記帳を進めることができます。簿記や会計の知識がない人や、移動の隙間時間を有効活用したい人には、クラウド会計の利便性が高いと言えます。

様々な会計システムのタイプ別比較

会計システムには、スタンドアロン型(インストール型)とERP型、クラウド型の三種類のタイプがあります。それぞれ企業規模や業種によって使い分けが出来るため、比較してご紹介します。

スタンドアロン型(インストール型)

多くの中小企業や会計事務所で用いられている会計ソフトです。システムが端末依存のため入力速度が非常に早く、会計の素養がある人が利用すると本領を発揮します。一年毎にバージョンが変わるためバージョンアップが必要で、また保守費もかかってきます。

  • メリット
    端末依存ですが、ERP型やクラウド型と比較すると入力の反応速度が速い
    セキュリティ面では人為的な情報漏洩リスクのみなのでコントロール可能
  • デメリット
    関与者が増えることで人為的な情報漏洩リスクが倍増
    会計システム入力は早いが、他のシステムとの連動は同一ブランドに限定されがち
    税制改正への対応や機能のバージョンアップには、都度ソフトの更新作業が必要

ERP型

大規模法人などで用いられている会計システムで、社内の大型サーバーをデータセンターとして構築されています。会社内の業務オペレーションとシステムをリンクさせています。例えば販売管理システムや在庫管理システム、人事労務システムなどのデータが逐一会計システムに連動されるため、連動時のミスもほとんどありません。

  • メリット
    複数の業務担当者の情報をやり取りなく自動で連動してくれる(二重入力が減る)
    セキュリティが自社依存のためコントロール可能
  • デメリット
    導入コスト及びランニングコスト共に高額になる(IT担当等の設置も必要になる)
    他のシステムとの汎用性が低く、連動する場合その都度開発コストがかかる

クラウド型

これまで説明してきた通り、データをクラウド上に保管し、ログイン情報があればどこでも誰でもデータを入力・確認できる会計システムです。最近は各種のクラウドサービスが増えており、業務効率化(API連携やOCR等)の側面ではスタンドアロン型やERP型よりも優れています。クラウド会計には便利な機能が沢山ありますが、特有の設定(API設定等)をする場合には、システムに詳しい方(サービス提供会社等)からアドバイスを貰うのが望ましいです。

  • メリット
    インターネット上で契約・購入手続きをすれば、すぐに利用できる
    業務効率化という側面で開発されていることが多いため、会計業務が楽になる
    月額費用内に保守費も含まれていて比較的安価
    端末に依存しないためスマートフォン等を用いればどこでも作業を進められる
    会計知識が無くても、仕訳が出来るインターフェイスが用意されていることが多い
    自動更新でソフトのバージョンアップが可能
  • デメリット
    ログイン情報が流出すると全てのデータを抜き取られてしまう
    インターネットに接続されていないと利用できず、スタンドアロン型やERP型と比較すると入力の反応が遅くなりがち
    他システムとのデータ連携など幅広くラウド会計の恩恵を受けるには、API設定をしなければならない

クラウド会計システムをおすすめするケース

従来の会計システム(スタンドアロン型)を導入している多くの企業が抱える悩みは、「会計業務の煩雑さ」です。売上に関する帳簿作成、仕入や材料費などに関する帳簿作成、現金取引、預金取引の区分等を仕訳けることが難しく、煩雑さを感じている方が多いです。会計の知識が無い個人は入力作業以上に調べものに時間がかかり、「確定申告」のタイミングまで会計作業を持ち越してしまいがちです。
本来帳簿作成は、自社の財政状態(貸借対照表)や経営成績(損益計算書)等を帳簿で見ることで、経営に役立てることを目的としていますが、年に一度の確定申告の時しか作成しないのであれば、その目的は達成されません。以下のような課題に思い当たる経営者や担当者の方は、クラウド会計システムの導入をおすすめします。

確定申告の直前まで仕訳入力など会計業務を放置しているケース

<ケース>
会計データを作成するには、材料費や移動費、接待費等の事業に関係する経費のレシートや領収証、通帳を見ながら取引を1つずつ仕訳している。日々の業務に追われ、確定申告の直前まで仕訳入力など会計業務を放置している。

<ケースの課題>
確定申告前にレシートを集めるところから始めなければならず、店舗経営をしながらの会計業務には半月~1ヵ月程度時間がかかっている。

<クラウド会計の導入で変わること>
会計システムにレジシステムを連動させることで、売上データの作成時間がほぼ“0”になります。材料費などの経費についてもクレジットカード決済にして、会計システムと連動することで、作業時間を大幅に減らすことが可能です。また、毎年1回しか出来ていなかった利益の計算が、何もしなくてもシステムで自動的に仕訳されるため、概算利益を月単位で把握出来るようになります。確定申告の時期も細かな仕訳入力のみで済むようになるため、2日程度で完了することが可能です。

複数の担当による入力データのやりとりに問題があるケース

<ケース>
売上と材料費等については担当者Aが入力し、その他の経費関係については担当者Bが入力を担当している。Aが入力しているときは、Bは会計システムに入力できないため、BはExcelに自分が担当の領収書データをまとめている。Aの入力作業が終わったら、Bにデータを送信し、BはExcelを元に会計システムに入力し、完了後はBからAへデータを送信している。

<ケースの課題>
BはExcelと会計システムに、同じ情報を2度入力するため、業務量が増えている。AB間で
ファイルのやり取りがうまくいかない場合には、間違って最新ではないファイルに入力してしまうなどの問題も発生している。

<クラウド会計の導入で変わること>
AとBに会計システムの入力権限を与えることで、Aの作業中でもBが入力出来るようになり、Bの2重登録の手間がなくなります。また、ファイルデータのやり取りがなくなるため、古いファイルに入力するリスクもなくなり、業務効率が上がります。

まとめ

  • クラウド会計により場所を選ばず複数で同時に作業を進められるようになる
  • APIやOCR技術によりクラウド会計の機能拡張ができ、さらに業務の効率化が図れる
  • クラウド会計の恩恵を受けるには、初期設定が必要(多少の知識も必要)

会計帳簿は、企業の全ての取引を記録する必要があるため、膨大な量になります。様々なクラウドサービスが提供されている現代では、API技術とクラウド会計とが高い親和性を持ちます。クラウドサービスは日々進化を続けています。今後ますますクラウド会計の優位性が増していくと期待できます。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/

集客から会計、仕入れまで。お店の業務に役立つAir ビジネスツールズ。