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専従者給与ってなに?家族を従業員にするメリットは?わかりやすく解説

店舗スタッフの会話風景

専従者給与は、配偶者や親族など家族に対する給与ですが、原則として必要経費にはなりません。ただし、所得税法では要件を充たす場合のみ必要経費として認めています。この要件や専従者給与によるメリット、具体的な手続き、また「新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が悪化した場合も、専従者給与を支払う必要がある?」などの疑問にもお答えします。

この記事の目次

専従者給与の仕組みと目的は?

専従者とは、個人事業主と生計を一にしている(同居しているか否かに関わらず、生活費など家計を同じにしている)配偶者や15歳以上の親族などで、1年の内6ヵ月以上(若しくは従事できる期間の半分以上)その事業に専ら従事している「家族従業員」を指します。そのため専従者給与は、これらの要件を充たす方へ支払う給与です。
元々、親族への給与は「必要経費」になりません。親族への支払金額は曖昧になりやすく、無制限に認めてしまうと利益操作(税金を不当に安くしたりすること)に繋がってしまうことから、上記のような要件が設定されています。また、確定申告の制度として「青色申告」と「白色申告」の2つが用意されていますが、それぞれ若干、専従者給与の要件が異なっています。なお、専従者控除を受けた場合は、その親族に対する配偶者控除や扶養控除など、他の所得控除を受けることは出来ません。

青色事業専従者の要件

青色申告を採用する個人事業主が、親族への給与を必要経費として処理するためには、以下の要件を充たす必要があります。

  1. 青色事業専従者の要件
    ア.青色申告者と「生計を一にする」配偶者その他の親族であること
    イ.その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
    ウ.その年を通じて6ヵ月を超える期間(新規開業などの場合は、事業に従事する事が出来る期間の半分以上)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
  2. 青色事業専従者給与に関する届出書」を管轄の税務署に控除を受ける年の3月15日まで(その年の1月16日以後、専従者になる場合には開始の日の2ヵ月以内)に提出していること
  3. 2.にて届出をした金額の範囲内で給与を支払っていること
  4. 2.にて届出をした金額の範囲内で合っても、業務内容と比較して多額でないこと

これら4つの要件を満たしている場合に限り、親族への給与は「青色事業専従者給与」として支払った金額全てを、必要経費として処理することができます。なお、「生計を一にする」とは、同居しているか否かに関わらず、生活費など家計を同じにしていることを指します。

事業専従者控除(白色申告専従者の場合)

白色申告の場合の専従者控除は、青色申告と異なり金額の上限が決まっています。上限金額は以下のいずれか少ない方で計算されます。

  1. 配偶者の場合86万円、その他の親族の場合一人につき50万円
  2. 前年の事業所得の金額を「1+専従者の人数」で割った金額

なお、専従者の要件(前述ア,イ,ウ)は青色事業専従者と同じです。また、専従者控除を受ける場合には、収支報告書に専従者控除の金額を記入さえすれば、必要経費として処理することが出来ます。

専従者給与にまつわるQ&A

専従者給与の要件は理解できているものの、具体的にどのように支払えば必要経費になるのかわからない…という方も少なくありません。ここでは専従者給与に関連する質問を、Q&A形式で細かくお答えいたします。

(Q1)青色専従者給与として必要経費で処理したいのですが、青色専従者給与に関する届出書以外に税務署へ届出が必要な書類はありますか?
(A)青色専従者給与としての処理したい場合には、ご自身が青色申告者である必要があるので、「青色申告承認申請書」を青色申告する年の3月15日まで(新規開業の場合開業から2ヵ月以内)に税務署へ届出が必要です。また給与の支払いを開始することになるため、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も併せて提出が必要です。ケースによっては(Q3)の回答(A)に記載の通り、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出もおすすめします。
(Q2)専従者給与を月8万円支払った場合、源泉徴収などはどのように処理したらよいですか?
(A)毎年変わりますが、「給与所得の源泉徴収税額表」という表を見ながら源泉徴収の金額を計算していきます。表によると月8万円の方の場合、源泉税の金額は0円とされていますので、源泉徴収の必要はなく、8万円から何も天引きせずにお支払い下さい。
なお、月の給与が10万円の場合には720円の源泉徴収が必要になりますので、給与の支給額は9万9,280円になります。
(Q3)源泉徴収した金額はいつどこで払えばいいのでしょうか?
(A)源泉徴収した金額は、徴収した月の翌日10日までに納付書を作成し、郵便局や金融機関、税務署で納税する必要があります。なお、常時雇用する従業員数が10名以下の場合には「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を予め届出(期中で申請する場合、申請した翌日から適用)することで、1月~6月に支払うべき源泉税を7月10日までに、7月~12月に支払うべき源泉税を1月20日までに支払うという二回の納税で済むようになります。

(参考)納付書の記載例

毎月納税する場合の源泉税納付書の記載例
(年度欄に令和と印字された納付書の場合は01若しくは02と記載します)

※納期の特例を用いた場合の源泉税納付書記載例
(年度欄に令和と印字された納付書の場合は01若しくは02と記載します)

(引用)国税庁 「改元に伴う源泉所得税の納付書の記載のしかた

(Q4)新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が悪化してしまいました。この場合専従者への給与は必要でしょうか?また変更が必要な場合、税務署への届出は必要でしょうか?
(A)専従者は親族ですが、労働者ですので実際に労働してもらっていない場合には必ずしも給与の支払いは必要ありません。また、税務署へは上限の届出をしているだけなので、実際に支払いが無くても届出の必要はありません。
なお、この場合すでに「専従者」として税務署へ届出をしていますので、配偶者(若しくは扶養)控除を受けることはできません。例えば年間通して20万円しか給与を支払わなかったからと言って配偶者(若しくは扶養)控除38万円を選択することは認められていませんので、20万円の専従者控除として確定申告する必要があります。

専従者給与を用いた節税とは?

前述の通り、白色専従者控除は上限が決まっていますが、青色事業専従者の場合には、労働の対価として適正な金額であれば上限なく必要経費にすることが出来ます。どれだけ節税可能か、シミュレーショしながら解説します。

飲食店を営むAさんの店舗売上は年間2,000万円で、材料費は年間730万円でした。ホールスタッフとして妻以外に2名アルバイトを雇用していて、2名の合計給与は124万円。広告費や消耗品等に関する経費を合わせて年間100万円程度です。家賃は244万円でした。Aさんは青色申告(55万円控除)制度を利用しています。
(※基礎控除や青色申告特別控除所については2020年分の確定申告を前提)

妻に給与を支払わない場合

  1. 利益の計算
    2,000万円―(730+124+100+244)万円=802万円
  2. 事業所得の計算
    802万円―55万円(青色申告特別控除)=747万円
  3. 課税所得の計算
     747万円―(48万円(基礎控除)+38万円(配偶者控除))=661万円
  4. 所得税の計算
    (a)661万円×20%―42万7,500円=894,500円
    (b)89万4,500円×2.1%=1万8,700円(復興特別所得税)※百円未満切捨て
    (c)(a)+(b)=91万3,200円

上記の計算により、Aさんの所得税及び復興特別所得税の納税額は91万3,200円になります。

妻の給与月20万円(年間240万円)として青色申告専従者で必要経費処理した場合

  1. 利益の計算
    2,000万円―(730+124+100+244+240)万円=562万円
  2. 事業所得の計算
    562万円―55万円(青色申告特別控除)=507万円
  3. 課税所得の計算
     507万円―48万円(基礎控除)=459万円
  4. 課税所得の計算(妻の分)
    240万円―(80万円(給与所得控除)+48万円(基礎控除))=112万円
  5. 所得税の計算(青色申告者Aさん分)
    (a)459万円×20%―42万7,500円=49万500円
    (b)49万500円×2.1%=1万300円(復興特別所得税)※百円未満切捨て
    (c)(a)+(b)=50万800円
  6. 所得税の計算(妻の分)
    (a)112万円×5%=5万6,000円
    (b)5万6,000円×2.1%=1,100円(復興特別所得税)※百円未満切捨て
    (c)(a)+(b)=5万7,100円

Aさんと妻の税額を合計して55万7,900円です。青色専従者給与を使わない場合とでは35万5,300円の税金差額が生まれたことになります。

※参考

レジの既存データを使って手間なく専従者給与で節税するには?

専従者の給与を上限なく控除対象にするには、青色申告が前提ですから、原則「複式簿記」を用いて仕訳をする必要があり、一定の帳簿作成ルールに基づいて元帳などを作成しなければなりません。そのため、確定申告の時期まで何の準備もせずに青色申告をしようとすると、非常に手間がかかってしまいます。しかし、会計もITを活用すれば、企業取引のデータ化はさほど難しくありません。このデータを上手く用いて会計記帳を効率化し、青色申告をスムーズに実施することが出来ます。
例えば、飲食店・小売店でレジシステムや販売管理システムを使用している場合には、販売データがシステム内に格納されていることが多く、このデータを会計システムに連動させることで、会計処理の手間を減らすことが出来ます。
このように、専従者給与を用いた節税をしていきたい場合には、あらかじめスムーズに会計処理を行える会計システム(クラウド会計等)を選定し、会計システムとデータ連動が可能なレジシステムや販売管理システムを導入すると良いでしょう。

まとめ

  • 白色と青色とで専従者給与の金額に相違がある
  • 専従者給与を駆使すれば合理的な節税に繋がる
  • 周辺システムと会計ソフトのデータを連動することで専従者給与の恩恵を受けやすくなる

節税のためには、設備投資や必要経費を増やすという手法だけではなく、税法(法人税法や所得税法)の中にも節税が出来る要素はたくさんあります。専従者給与の活用はその中の一つであり、有効な方法です。例示に挙げたAさんのような税額のシミュレーションをしてみてください。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/

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