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福利厚生費はなぜ必要?経費として処理する方法など解説

福利厚生の充実は、働く人のモチベーションアップに繋がる一方で、会社側の費用負担は大きくなります。厳しいビジネス環境化において、経営者としてどのように福利厚生費を取り入れていくべきか検討して頂くため、福利厚生の目的や有効的な活用方法などを解説していきます。

この記事の目次

福利厚生費とは?その目的は?

福利厚生費は「通常支払う報酬や給与にプラスして支払う非金銭的報酬」を言います。報酬や給与とは別に提供することで、貰う側に税金等の負担なくベネフィットを享受してもらうことが出来ます。この結果、組織への貢献度を高めると共に、やる気を高めて労働力向上や効率化を図る目的があります。例えば、社宅を提供して離職防止につなげたり、運動施設との契約により社員割引を提供して、社員の健康増進や労働能率を高めることが挙げられます。

会社が必ず入らなければいけない福利厚生とは?

福利厚生には、法人を設立すると必ず提供しなければならない「法定福利厚生費」と、それ以外の企業が自由に決められる「法定外福利厚生費」があります。個人事業主は基本的に対象とはなりませんが(常時5名以上の雇用がある場合は対象)、法定福利厚生費として「社会保険料等」があります。例外を除いて役員のみでも「厚生年金、健康保険料(40~64歳の方は介護保険も含む)」の加入が必要で、従業員を雇用するとこれに加え「雇用保険」の加入が必要になります。

・社会保険料加入区分表

  個人事業主 法人
事業主、役員等 国民年金、国民健康保険 厚生年金、健康保険、介護保険(40~64歳)
従業員 国民年金、国民健康保険、雇用保険 厚生年金、健康保険料、介護保険(40~64歳)、雇用保険

法律で義務化されていない福利厚生費はなぜ必要か

法定福利厚生費は法律で義務化されている福利厚生費のため、「企業努力による差別化」は出来ません。一方で、法定外福利厚生費は、働く人のニーズにマッチし、かつ同業他社と比べて良い内容であれば、働く人のやる気は高まります。また、法定外福利厚生費を人事戦略として他社と差別化することで、「働く人にフォーカスした組織」を構築できれば、入社意欲が高まり、優秀な人材の確保に繋がります。また、社員の定着率も高まり組織力も向上します。そのため、福利厚生費を単なる出費としてみるのではなく、いかに働く人のためになるかを考え、プランを導入する必要があります。なお、一般的には福利厚生と言えば、法定外福利厚生費を指すことが多いです。

福利厚生費を経費として処理する方法

福利厚生費は前述の通り、金銭以外の報酬ですが、税務上の損金(経費のようなもの)として取り扱いたい場合には、以下の点に注意する必要があります。

  1. 会社の役員・従業員すべてを対象としている(全員が使える)
  2. 社会通念上(常識的に考えて)、金額が多くない
  3. 支出内容が現金に類似する物、もしくは現金ではないこと

これらの条件をクリアできていない福利厚生費は、税法上損金として取り扱うことが出来ない場合があるので注意が必要です。また、これに加えて、全員が使えるという意味で、「福利厚生規程」を作成し全役員及び従業員に周知しておく必要があります。

(参考)経費と損金の違い
経費は会計上の「収入から控除できる事業的支出」を指します。一方、損金は税務上の取り決め(損金か否かの区分や限度額)により、所得(収入と同じようなもの)から控除することができるものです。
一般的に「これは経費にならない」というときに、2つのパターンがあります。一つは、そもそも事業的支出ではないものと、もう一つは「損金扱いにできない」という理由から税務上の経費として扱えないものです。
例えば、「福利厚生の目的で全役員・従業員で海外旅行に行った」というケースがあったとします。後で記載する“社員旅行や研修旅行の要件”を充たさなければ、「税務上の福利厚生費」として処理が出来ず、損金否認という扱いを受けます。しかし、収益から控除できる事業的支出である点は変わりませんので、会計上は「福利厚生費」として処理することになります。このように、会計上は経費であっても、税務上は損金扱いにできないというケースもあります。

間違えやすい福利厚生費の例(役員・従業員すべてを対象としていない場合)

「役員のみ」を対象としている福利厚生費は損金にできません。例えば、役員のみが無償で使える高級リゾートの会員権や、役員のみで行った宴会や旅行などです。他に間違えやすいものとして、「一部の社員、役員」を対象とした医療保険の加入なども福利厚生費として取り扱う事ができず、税務上損金にはならないので注意が必要です。

金額の考え方

イメージしやすい福利厚生費として、通勤手当、住宅手当、社員旅行(研修旅行等)、食事代、健康診断、慶弔見舞金などがありますが、それぞれに「損金にできる金額の限度」が定められています。明確な基準があるものと、社会通念上(常識的に考えて)の範囲内で認められるものがあります。以下の例示以外の福利厚生費は、損金にできるか否かケースバイケースですので、ご自身の事業規模と費用対効果を検討した上で、税理士に相談してください。

・一般的な福利厚生費の要件と限度額

通勤手当 公共交通機関で通う場合:1カ月当たり15万円が上限
自動車や自転車で通う場合:距離によって限度額変動
(参考)国税庁 通勤手当の非課税限度額引き上げについて
https://www.nta.go.jp/users/gensen/tsukin/index2.htm
社宅利用料

以下の計算式によって算出した合計金額以上を徴収することで全額福利厚生費として処理可能

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

(参考)使用人に社宅や寮などを貸したとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm
※算定式が複雑のため実務的には家賃相場の50%程度徴収する事が多い

社員旅行や研修旅行の旅費

以下の要件を全て満たせば福利厚生費として全額経費処理が可能

  1. すべての従業員が参加対象となっていること
  2. 参加人数が対象者全体の50%以上であること
    ※支店、部署で開催の場合その人数の50%の参加
  3. 社員旅行期間が4泊5日以内であること
    ※海外旅行の場合、現地での滞在日数で計算

(参考)国税庁 従業員レクリエーション旅行や研修旅行
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2603.htm

食事代

以下の要件を全て満たせば福利厚生費として全額経費処理が可能

  1. 役員、社員が食事代金の50%以上を負担
  2. 企業側負担が一人あたり月額税抜3,500円以下

(参考)国税庁 食事を支給した時
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm
(※)夜勤や深夜勤務者へ夜食などの現物支給が難しい場合には、例外的に税抜300円まで現金支給が認められる

健康診断の費用

以下の要件を全て満たせば福利厚生費として全額経費処理が可能

  1. 全員が受診対象者であること
  2. 対象従業員全員に対して企業が費用を負担していること
  3. 著しく高額な検診・検査費用でないこと(人間ドッグの費用も可能)
  4. 企業が医療機関に直接支払いを行っていること

(参考)国税庁 人間ドッグの費用負担
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/03.htm

慶弔見舞金

以下のような慶弔見舞金は、常識の相場範囲であれば全額福利厚生費として処理が可能

  1. 結婚祝い
  2. 出産祝い
  3. 見舞金、香典などの慶弔費
  4. お祝いの品、花輪の費用

なお、これらの範囲内であれば、勘定科目「福利厚生費」として登録できますが、限度を超えたり、要件を満たさない場合は、後述しますが「給与(役員報酬)」や「交際費」として処理されることになり、税務上の経費として扱われない可能性があります。

現金と現金に類似する物の扱い

現金支給したものは、福利厚生費として処理する事が出来ません。また、同様に「現金に類似する物」を提供した場合も、福利厚生費として処理することは認められていません。例えば全国共通商品券やギフト券については、即時現金化可能なものとして、支給しても「福利厚生費」として処理する事が出来ません。ただし、ギフト券の中でも「旅行ギフト券」については、以下の条件をクリアした場合に限り福利厚生費として処理することが出来ます。

  1. 旅行券支給後1年以内に旅行に行くこと
  2. 旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なものであること
  3. 旅行実施後、報告書及び資料等を提出してもらうこと
  4. 旅行が1年以内に行われなかった場合、または一部しか使わなかった場合には、残った旅行券を会社に返還すること

(参考)国税庁 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたときQ&A
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/2591_qa.htm

パートタイマー、アルバイトと社員で何が違うか

福利厚生費は、「全ての役員・従業員を対象」としなければなりませんが、一般的にパートタイマーやアルバイト(以下、アルバイト等)を多く雇う飲食店、小売店などでは、アルバイト等も福利厚生費の対象としなければ全額経費とすることが出来ないのかという疑問があがります。短時間労働のアルバイト等なら「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と明確に通常の労働者(社員等)と区分されている関係から、福利厚生規程から除いてしまって差し支えありません。
ただし、上記の基準に該当しない短時間労働以外のアルバイト等がいる場合には、福利厚生規程の適用対象にする等の措置を予め取っておく方が良いと思います。福利厚生費は働く人のモチベーションに繋がるという点は変わりありませんので、費用対効果を考慮の上、短時間労働者の扱いを、規程に上手く取り入れていく必要があります。

注意!これは福利厚生費にならない

福利厚生費に似た性質を持つ経費として、給与(役員報酬)、交際費(会議費)などがあります。なぜ、福利厚生費として「現金もしくは現金に類似する物」の支給が認められないかというと、いつでも換金が出来ると、何にでも使うことが出来るため、給与や役員報酬と変わりないと判断されるためです。そのため、現金等での支給を福利厚生費として処理するには厳格な条件が設定されていて、もし条件を充たさなければ「役員報酬や給与」として処理されることになり「源泉徴収税(所得税)」の対象となります。
また、取引先を含めた懇親会等の経費については、一部福利厚生費になりそうですが「全社員対象」となるか否かで「交際費」としての処理が適切だと判断される場合があります。また、交際費は損金限度額(800万円)が設定されているので、この金額をオーバーしていれば損金として処理されません。つまり、課税の対象になります。

(参考)住宅手当と社宅利用の違い
住宅手当は、給与と一緒に「現金」で支給することになるため給与として処理され、個人の「所得税」の対象になります。一方で現物支給と言える社宅については、賃貸契約や売買契約を法人が結び、一旦会社が全額支払った後、役員及び社員から負担額を徴収する関係から「所得税」の対象外になります。また、徴収額が税務上の要件を充たせば、会社も福利厚生費として処理できるため、一石二鳥です。

まとめ

  • 福利厚生費は働く人のモチベーションアップや採用、離職防止に役立つ支出である
  • 福利厚生のつもりで支払った金額全てが損金にできるわけではなく、要件や限度額がある
  • 無理に現金支給しようとはせず、現物での提供を考える

福利厚生費は会社や事業主、働く人にとってプラスになる要素をたくさん含んだものです。しかし経費としての扱いが会社や事業主に任されている要素が多いため、費用対効果をよく考える必要があります。また損金として処理するには、厳格な要件を満たす必要がありますので、本章の内容をよく理解の上、双方にとって有効な福利厚生プランを構築してください。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/

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