自分らしいお店づくりを応援する情報サイト

Airレジ マガジン > 経営ノウハウ記事 > 飲食店・小売店で有効なSWOT分析とクロス分析のやり方

飲食店・小売店で有効なSWOT分析とクロス分析のやり方

齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト

「SWOT分析」を聞いたことがあるオーナーも多いのではないでしょうか。自店舗の売上成長に向けての強みや弱み、機会や脅威を分析する分析方法です。このSWOT分析のS(Strength)とW(Weakness)、すなわち自店舗の強みと弱みについては、POSデータをクロス分析することで定量的に導き出すことができるのです。
ぜひ店舗売上成長に向けた戦略を考える上で役立ててみてください。

この記事の目次

飲食・小売店におけるSWOT分析とは

SWOT分析とは、自社の外部環境と内部環境を好ましい側面と好ましくない側面から整理する分析方法で、経営課題を考えたり事業機会を検討する場面に活用されることが多いです。

内部要因における「強み」と「弱み」、外部要因における「機会」と「脅威」の2軸のマトリクスで整理します。
内部要因については、ヒト・モノ・金やバリューチェーン等の自社の特徴について整理し、外部要因については、マクロ環境や業界環境、市場・顧客や競合環境などについて整理します。

SWOT分析により、自店舗の今後の戦略が導き出せるようになるのですが、そのためには下図でも示す通り、内部要因である自店舗の「強み」と「弱み」、外部要因である市場の「機会」と「脅威」を整理しなければなりません。

例えば、下図はある食品を販売している小売店の例になります。
内部要因については、自店舗が指示を受けている顧客層や他社にはない商品やサービスの特徴を「強み」として書き出します(下図はあくまでその一部を記載したものです)。
反対に「弱み」については、現在課題として感じられている点について、同じく顧客軸や商品軸、あるいは営業・販促・オペレーション面について記載します。
外部要因の「機会」については、自店舗にとってプラスとして働く環境について、「脅威」については反対にマイナスとして働く環境について書き出します。
SWOT分析は、自社の今後の戦略を構築する上でとても有用な分析方法の一つですので、ぜひ一度実践してみてください。

なぜクロス分析で自社の強み・弱みが把握できるのか

さて、SWOT分析について説明しましたが、まずは内部要因である「強み」「弱み」と外部要因である「機会」「脅威」について整理することが必要となってきます。
特に日本国内における飲食や小売店は、人口が減少して競合店舗も多く市場が飽和かつ成熟・衰退している業界になります。
従って、外部要因を正確に捉えることはもちろん大切なのですが、それ以上に自店舗(内部要因)の強みや弱みをしっかりと把握することがとても重要になってきます。

その強みや弱みを正確に把握するためには、何となく感じている定性的な感覚ではなく、定量的に知る必要があります。市場が成長してきた時代であれば、基本的に何かしら打ち手を行えばその分売上が上がってきましたが、今はそうではありません。市場が飽和、衰退している中、正しく自社の強みと弱みを把握し、その上で“確からしい蓋然性の高い”打ち手を講じていかなければ成果は出せません(それでも難しいくらいです)。

そのために有用なのが、POSデータによるクロス分析です。
クロス分析とは、異なる2軸の項目を組み合わせて傾向値を分析する方法です。

POSデータのクロス分析の場合、例えば、

  • 「年代別 × 商品別」の売上構成比から年代ごとに評価されている商品を把握
    →接客や販促施策において、年代に応じておすすめ商品を変えていく
  • 「時間帯 × 商品別」の売上から時間帯別(例えば、モーニング、ランチ、カフェ、ディナー)に評価されている商品を把握
    →店頭やメニューにおいて、時間帯ごとに品揃えや強化商品を変えていく
  • 「曜日別 × 性年代別」の売上から曜日別(例えば、平日と土日祝日)における購買力の高い(来店している)顧客の属性を把握
    →店頭や販促施策において、曜日ごとに品揃えやキャンペーン等を変えていく
  • 「会員種別 × 商品別」の売上から会員種別(例えば、新規顧客、ライト顧客、ヘビー顧客)における評価されている商品を把握
    →会員種別に応じて提案する商品を変えることでCRM強化に繋げる

といったように、2軸で傾向を把握することで、よりピンポイントな施策に落し込むことができるようになります。
また、どこの数字が大きく、どこの数字が小さいのかも定量的に把握できるため、自社の強みと弱みについても定量的に把握できるのです。

「POSデータを使ったクロス分析」徹底解説!

では、POSデータを使ってどのようにクロス分析していくのか説明していきます。

まずは元データ(POSデータ)を用意します。

まず、POSデータの管理画面から日々の注文明細データをダウンロードします。
注文明細データには、上図のように、注文IDや購入日時、商品IDや商品名、各商品の単価や購入個数、商品売上、そして会員管理している店舗であれば、会員IDなどもあるでしょう。
また、会員管理をしている場合は、各会員の性別や年齢なども取っているかと思います。

分かりやすいように、K列以降は黄色く塗っていますが、商品カテゴリについては、商品マスタデータから引っ張ってきます。商品マスタについては、POSに商品登録する際に各商品のカテゴリを登録しておけばデータとして管理されるので、注文明細のデータに商品マスタデータを紐づければ商品カテゴリ軸での分析が可能となります。
また、上図のL列やM列は、購入日時よりエクセル関数を使って導き出すことができます。

最後にクロス分析するに当ってのポイントがN列になります。
POSの注文明細データは、上図のように注文ID×商品IDで縦にずらーっとデータが並んでいるケースがほとんどです。

例えば、上図の2行目と3行目を見ると、A列の注文IDが「518124」で同一となっています。一方、C列の商品IDを見ると、2行目は「1953」、3行目は「1954」と異なるIDが記載されています。同じように、5行目と6行目(注文ID「518126」)や7~8行目、9~11行目、12~15行目も、注文IDは同一ですが、商品IDは異なります。これは、同じ顧客が複数種類の商品を購入したことを表しています。

従って、客数をカウントするに当り、A列の注文IDが同一の場合は0、異なった場合(異なる顧客)だった場合は1を記入するよう、if関数を用いて購入客数をN列に算出しています。
あくまで上図は一例ではありますが、POSデータから、「誰が」「何を」「いつ」購入して、その結果、「何人のお客様で」「いくらの売上を上げているのか」を導き出せるのです。

上図のように、POSデータを全て選択した上で、「挿入」タブの一番左にある「ピボットテーブル」をクリックして、「ピボットテーブルの作成」でOKボタンを押します。

すると、上図のようなピボットテーブルが作成されます。
これで準備はできました。あとは「ピボットテーブルのフィールド」を操作することで、クロス分析ができます。

例えば、上述した

  • 「年代別 × 商品別」の売上構成比から「年代ごとに評価されている商品」を把握

について、ピボットテーブルで検証してみましょう。
商品数が多いので、「商品カテゴリ」でやってみます。

ピボットテーブルのフィールドにある各項目の中から、「年齢」を行に、「商品カテゴリ」を列に、そして「商品売上」を値にドラッグ&ドロップすると、上図のようになります。
これでもう「年齢」×「商品カテゴリ」のクロス分析が出来てしまいます。
しかし、この1歳単位のままですとセグメントが細かすぎるので、「年代」にサマライズしたいと思います。

上図のように、「20代以下」に当る、18歳~29歳を選択します。そして「分析」タブの中から「グループの選択」を押してみましょう。

すると、上図のように「グループ1」という新たなラベルが生成されます。これは先ほど選択した18歳~29歳を合計した値となります。ピボットテーブルのフィールドの「行」部分にも「年齢」の上に「年齢2」という項目が新たに出来ていることが分かります。

「グループ1」のままだと分かりづらいので、「20代以下」とテキストを打ち込めば名称が変わります。
同じように、30代は30歳~39歳を選択して「分析」タブの「グループ選択」を押し、新たにできた項目の名称を「30代」に変更、40代、50代、60代以上についても同じように行います。

そうすると、上図の通り、「年代別×商品カテゴリ別」のクロス分析表が出来上がります。
このままでは数字の羅列で分かりづらいので、例えば構成比グラフを作成することで、各年代の評価されている商品カテゴリが分かります。

上図のように、どこでも良いので作成したピボットテーブルのセルを選択してある上で、「挿入」タブで「ピボットグラフ」を選択し、作成したいグラフを選んでください。

例えば、「100%積み上げ縦棒」グラフを選択すると、上図のようになります。

このようにエクセルのピボットテーブルを使ってPOSデータをもとにクロス分析することで、自店舗の強みや弱みが定量的に把握できます。

例えば、上図の場合は、20代以下については他の年代と比較してカテゴリHの売上構成比が高い一方で、60代以上においてはカテゴリDの構成比が高くなっています。これだけでも年代ごとの特性がある程度定量的に導き出せます。ここから先に時系列で変化を分析したり、商品カテゴリから商品単品へ詳細化していくことで、年代ごとに評価されている(強みとなっている)商品が把握でき、MD構成や接客、販促施策等へ活用できるのです。

同じように、「時間帯 × 商品別」のクロス分析により時間帯別に打ち出す商品施策に繋げたり、「曜日別 × 性年代別」のクロス分析の結果を曜日別キャンペーンに活用したり、POSデータで取得できる項目をクロス分析することで、自店舗の強みや弱みが把握でき、具体的な施策へと繋げることができるのです。

まとめ

  • 飲食店・小売店にとって、SWOT分析は、自社の今後の戦略を構築する上でとても有用な分析方法の一つ
  • SWOT分析の内部要因である「強み」「弱み」は、POSデータを使ったクロス分析で定量的に把握することができる
  • クロス分析は、POSデータをエクセルを使って整理し、ピボットテーブルを使うことで簡単に様々な組み合わせで分析が可能
  • クロス分析の結果に基づいて具体的な施策へ落し込むことができる

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト

慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。主に中堅規模(数百億)以上の企業をメインクライアントとしたプロジェクトに従事。小売業、飲食店、メーカー等、幅広い業種において、中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等の実績を有する。独立後も製造業や小売業、サービス業に至るまで大小様々な企業の課題発見に従事、成果を上げる。特にデータ分析においては、複数のコンサルファームにもアサインされる実力を有する。その他、AI関連スタートアップや教育関連企業からもデータ分析支援の依頼を数多く受けている。
2013年9月「問題解決のためのデータ分析」(2019年2月に新装版)、2019年10月「会社の問題発見、課題設定、問題解決」を出版。
KUROCO株式会社では、中小企業向けのデータ活用支援(分析、可視化、教育)を展開。
https://cm-consulting.jp/