飲食・小売店における注力すべき顧客を見極める「デシル分析」徹底公開
飲食店や小売店など、日々たくさんのお客様が来店するビジネスにおいて、お客様の購買傾向に基づいたコミュニケーションを取ることはとても重要です。購入金額の高いロイヤルカスタマーについては、離脱させずに更に自店舗のファンになってもらえるかということが大切ですし、購入金額のまだ低いお客様については、もっと購入してもらう施策が必要となってきます。
そのためにはお客様の購買傾向に基づいた分析が必要になるのですが、そのような顧客分析方法の一つが「デシル分析」となります。「デシル分析」を学び、自店舗の売上成長へと役立てていただければと思います。
この記事の目次
デシル分析とは何か
「デシル分析」とは、顧客分析の中で最も初歩的な分析方法の一つで、顧客を累積購買金額の高い順に10等分する分析方法のことです。
例えば、全部で1,000名の顧客がいる場合で簡単に説明します。まず顧客を、累積購買金額が高い順に100名ずつ10のグループに分けます。次に、各グループごとに分析を行います。このようにすることで累積購買金額グループ毎の購買傾向を詳しく理解することができるため、顧客の利用状況に合わせた施策を行うことができます。
具体的には、来店頻度が高く多くの商品を購入していただいているグループには、自店舗のロイヤルカスタマーとして、これからも通い続けてもらえるようなコミュニケーション施策を行う。一方で新規来店してくれたお客様や、1-2回程度の購入に留まっているライトユーザーグループには、再来店を促す・2回目を手に取りやすくするといった「リピーター化」を目指す施策を行う……といった内容です。きめ細やかなコミュニケーションは、顧客に対しても良い印象を残すでしょう。
デシル分析以外の顧客分析方法には、RFM分析やCPM分析、セグメンテーション分析などがあります。
ぜひ、それぞれの違いについて覚えておきましょう。
デシル分析で解決できる課題とは
それでは、デシル分析はどのようなときに有効な分析方法なのでしょう。
店舗運営していく上で、次のような悩みはないでしょうか。
- 自店舗にとって売上貢献度の高い顧客がわからない
- いろいろな顧客がいるにも関わらず、どの顧客にも一辺倒な施策をしてしまっている
- 顧客データは溜まっているが、有効な使い方がわからない
- 顧客によって販促施策を変えたいが、適切な予算配分の方法がわからない
様々な顧客がいる中で、それぞれの顧客に対し、なるべく効率良く売上アップに繋がるような施策・コミュニケーションを取りたい飲食・小売店にとって、まず初めに取り組める顧客分析方法として、デシル分析は有用です。
特に、会員カードやアプリ等で顧客管理をしているものの、全員にダイレクトメールやクーポンなどを発行しているような企業・店舗にとって、まず取り組むべき分析方法となります。
デシル分析をすることで、
- 自店舗にとって売上貢献度の高い顧客が分かる。同時に売上貢献度の低い顧客も分かる
- それ故、売上貢献度に応じた顧客別にマーケティング施策やコミュニケーションを取ることができる
- 結果として、かけるコストに対して売上の最大化へ繋げることができる
このようなことが可能になります。
デシル分析に必要なPOSデータ
さて、ではどのようにデシル分析を行っていくのか説明します。
デシル分析を行うためには、分析の元となる「データ」が必要です。
そのデータとは、日々の購買実績が蓄積されているPOSデータになるのですが、一点だけ注意が必要です。
それは、
デシル分析とは顧客の購買金額に基づいて区分していくため、一人一人の顧客がいくら使っているのかが分かる必要がある
ということです。従って、蓄積されているPOSデータの中に、顧客名や会員IDなど、レシートごとに「誰」が購入したのかが分かるような管理となっていることが必要です。
この顧客管理が出来ていない状態ですとデシル分析は行えません。まずは顧客情報を取る仕組みを作りましょう。
上図のように、お客様の日々の購買状況が蓄積されていることが必要です。
デシル分析を行うためにはまず、上のPOSデータで言うと、列Hの「会員ID」が必要です。
「会員ID」のように、一人のお客様に対してユニークとなるデータがあることで、デシル分析が可能となります。
そして、列Gの「商品売上」も必要です。売上データについては、POSを導入している店舗であれば必ず蓄積されているはずですが、デシル分析は顧客を購買金額ごとに分類するため、「誰がいくら」使っているのかを把握できる必要があります。
デシル分析の具体的なやり方
それでは、POSデータからデシル分析を行う方法について説明していきましょう。
POSデータの販売実績のローデータのままですと、先ほどの表のように、注文ごとにデータが並んでいるので、これを顧客ごとにまとめる必要があります。
エクセルを使ってローデータをまとめる方法として、活用できるのがピボットテーブルという機能になります。
上図の通り「ピボットテーブル」という機能がエクセルにはあるので、そちらを使います。
そうすると下図のようにピボットテーブルが生成されます。
ピボットテーブルが生成されたら、顧客ごとの(今回の例では会員IDごと)売上を整理していきます。
ピボットテーブルのフィールド箇所をご確認ください。
この中の「行」フィールドに「会員ID(顧客単位で振り分けられている項目)」をドラッグ&ドロップします。
次に、「値」フィールドに各顧客の購買金額合計となる項目(上図の例では「商品売上」)をドラッグ&ドロップします。
すると、上図のように、顧客ごとの累積購買金額が表としてまとまります。
このままだと、「行」フィールドに入れた会員IDの昇順で並んでしまっているので、累積購買金額の高い順で並び替える必要があります。
その場合は、表の購買金額が表示されているセルのいずれかにカーソルを合わせ(上図の例ではB列の4行目以下の商品売上の金額のいずれか)、エクセル上部の「データ」タブの中にある「並び替え」の、ZからAに矢印が引っ張ってあるアイコンをクリックしてください。そうすると上図のように、累積購買金額の大きい順に顧客が並び替えされます。
次に累積購買金額順に並び変えされた顧客に対して、デシル1~デシル10までのグループ化を行います。
綺麗に10等分できない場合は、0.1の位を四捨五入していただいて構いません。
例えば今回の例でいうと、下図のように全部で3,037人の顧客がいるため、303人あるいは304人ずつデシルレベルを振り分けていきます。
最後に、各デシルレベルに属する顧客が、自店舗にとってどの程度の売上貢献度があるのか整理します。
上図のように整理されます。
整理するにあたっても、エクセルの関数を活用することで、簡単に計算できます。
次の計算式を参考に、ぜひご自身でもやってみてください。
【デシル分析表の作成方法】
- 顧客数
COUNTIFS関数を使うことで、各デシルレベルの顧客数を計算することができます。
COUNTIFS関数は、条件に合うセルの数をカウントする関数になります。
例えば、上図のデシル1の顧客数(セルF4)に入る計算式は、
=COUNTIFS(C:C,E4)
となります。 - 売上合計
SUMIFS関数を使うことで、各デシルレベルの売上(購買金額)を計算することができます。
SUMIFS関数は、条件に合うセルに入力されている数字を合計する関数になります。
例えば、上図のデシル3の売上(セルG6)に入る計算式は、
=SUMIFS(B:B,C:C,E6)
となります。 - 売上比率
各デシルレベルの売上の全体に占める割合を計算します。
例えば、上図のデシル5の売上比率(セルH8)に入る計算式は、
=G8/G$14
となります。「$」記号を使うと固定されるので、一カ所計算すればコピー&ペーストすることで、全てのセルに反映させることが出来るので便利です。 - 累積売上比率
累積売上比率を計算することで、どこまでのデシルレベルでどの程度の売上貢献度を占めるのかが把握できます。 - 一人あたり売上金額
デシルレベルごとの一人あたり売上金額(計算式は売上合計÷顧客数)を計算することで、デシルレベルを上げるために必要な顧客単価が把握できます。顧客単価が上がれば売上も引きあがっていくため、全体を底上げしていく上で重要な指標となります。
上図の例ですと、上位30%で、3分の2程度の売上を上げていることが分かります。また、半数の顧客で80%以上の売上を上げています。
このようにデシル分析により、売上貢献度別に顧客をグルーピングすることができるので、どの顧客に対してどんな施策を打つべきなのかの検討精度が上がります。
もちろん、どの顧客層にどんな施策やコミュニケーションを講じていくかは別途議論が必要ではありますが、初歩的な顧客分析方法であるデシル分析でも、ある程度有用な示唆を得ることができるのです。
最後に、覚えておいて頂きたい分析のポイントですが、あまり長い期間の売上データを用いると、過去に一度だけ大量購買あるいは高額商品の購買をし、その後一度も購買していない顧客が、デシルレベルの上位グループに入ってしまう可能性があります。そうすると実態とはズレた分析結果となってしまうため、例えば期間を一定期間に絞って実施することをお勧めします。
あるいは、冒頭でもご紹介しましたが、金額だけでなく購買頻度や最新購買日なども組み入れた、中級者向けの顧客分析方法で「RFM分析」にもチャレンジしてみても良いと思います。
いずれにせよ、デシル分析により売上貢献度の高い顧客層が把握でき、それによりマーケティング施策や顧客とのコミュニケーション施策の検討に落し込むことができるので、顧客分析のスタートとしては有用な分析方法と言えるでしょう。
まとめ
- デシル分析は、飲食店・小売店に有用な顧客分析手法のうち、最も初歩的な手法
- 顧客ごとの売上貢献度を把握できておらず、一辺倒な施策になっている店舗にとってデシル分析は有用
- POSデータに会員ごとのユニークな情報が入っていることが前提だが、エクセルのピボットを使用することでデシル分析は可能
- デシル分析とは顧客を売上貢献度別に10等分する分析方法で、区分された顧客グループの売上貢献度合いに応じ、マーケティングやコミュニケーション施策に落し込んでいく
「デシル分析」は、店舗の売上を上げるための一つの顧客分析手法として、はじめて顧客分析を行うという方に特に有効です。デシル分析により、お客様の購買金額に応じてマーケティング施策や顧客とのコミュニケーションを図ることができるので、売上改善の効率性も上がっていくでしょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト
慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。主に中堅規模(数百億)以上の企業をメインクライアントとしたプロジェクトに従事。小売業、飲食店、メーカー等、幅広い業種において、中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等の実績を有する。独立後も製造業や小売業、サービス業に至るまで大小様々な企業の課題発見に従事、成果を上げる。特にデータ分析においては、複数のコンサルファームにもアサインされる実力を有する。その他、AI関連スタートアップや教育関連企業からもデータ分析支援の依頼を数多く受けている。
2013年9月「問題解決のためのデータ分析」(2019年2月に新装版)、2019年10月「会社の問題発見、課題設定、問題解決」を出版。
KUROCO株式会社では、中小企業向けのデータ活用支援(分析、可視化、教育)を展開。
https://cm-consulting.jp/