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「法人化」するならいつ?ベストなタイミングを見極めよう

福島 悠(ふくしま ゆう)公認会計士

法人化

事業の規模が大きくなったら法人化するのか? 開業してから2年経過したら法人化した方がいいのか? 経営者ならば様々な理由で法人化を検討し始めることと思います。しかしながら、法人化するタイミングはいつがベストなのか分からず悩んでいる方も少なくありません。ここでは法人化の方法やベストなタイミング、税金等のシミュレーションを含めて解説していきます。

この記事の目次

「法人化」とは

法人化とは、個人事業主や不動産オーナー、サラリーマンの副業など、今まで何らかの事業を行っていた人が株式会社や合同会社などの法人組織を設立し、その法人組織内で引き続き同じ事業を行うことを言います。法人化以外にも同じ意味として用いられる言葉で「法人成り」があります。

法人の種類

法人組織には、株式会社や合同会社などの営利法人と、NPO法人や医療法人などの非営利法人があります。またこれ以外にも公法人と言って、国の事業を代行するような行政に関連する特殊な法人組織も存在します。多くの方が「ビジネスを目的として法人化」するので営利法人に区分されることになり株式会社や合同会社を設立します。

「株式会社」と「合同会社」

株式会社と合同会社に関する税金や社会保険の計算は同じです。違いが出る点は法人設立時にかかる費用や会社法での取り扱いです。以下の点を参考にして決めてください。

  • 設立費用の違い
    株式会社と合同会社では、法人設立に際して作成する定款(ていかん)という会社のルールを記載した書類に対して、公証人の認証が必要かどうかの違いと、法務局に申請する際に添付する印紙税の金額の違いがあります。なお、定款については行政書士などが電子定款で作成した場合には定款に添付する収入印紙を節税できます。

    項目 株式会社 合同会社
    定款の収入印紙 40,000円
    (電子定款で0円)
    40,000円
    (電子定款で0円)
    公証人の認証の必要性(手数料) 必要(約50,000円) 不要
    定款の謄本費用 約2,000円 0円
    法務局申請での収入印紙 15万円~
    (資本金×0.7%)
    6万円~
    (資本金×0.7%)
  • 会社法の取り扱いにおける違い
    「個人事業主>合同会社>株式会社」という順に属人性が低くなります。つまり、この中では株式会社が最も法的な縛りが多いということです。合同会社は株式を発行しておらず、株式と似たものとして「持分」という考え方があります。なお、「株式の所有者≠経営者」という株式会社と違い、合同会社の場合は出資した持分所有者全員が経営を行っていく必要があります。そのため、複数名で合同会社を設立した場合に、誰かが辞任するケースなどで持分の処理が問題になることがあります。

  • どちらを選ぶべきか
    合同会社は株式会社と比較すると個人事業主寄りの法律構成になっていますので、一人会社のように一人で経営を行う場合には採用しても良いと思います。一方で資金調達や事業拡大を目指すのであれば、株式会社を設立しておくことをお勧めします。

法人化するには何をどうすればいいか

法人化

法人化するためには、今行っている事業の廃業の届出と、法人の設立を行っていく必要があります。株式会社と合同会社で流れはほとんど同じですので、参考にしてください。

ステップ 内容 備考
準備段階 事業計画と法人組織の選定  
法人名の決定  
定款草案を作成  
法人名で印鑑を作成 法務局へ届出する印鑑(実印)は必要
定款の認証 電子定款の場合、行政書士に定款を製本してもらう 電子定款でなくても可
定款を公証人に認証してもらう 合同会社は不要
法務局への申請 所定の申請様式に基づき設立申請書を作成し、上記定款を添付の上、提出する 設立申請書は法務局ホームページにてダウンロード可
申請後約2週間後 法務局の審査が完了するため、履歴事項全部証明書の発行が可能になる  
税務署及び都税(県税)事務所や市役所での手続き 個人事業の廃業届と法人の設立に関する書類を提出し添付書類として履歴事項全部証明書及び定款(原本でなくて大丈夫) 税務署
 設立届
 青色申告承認申請
 給与支払事業者届
 源泉税の納期特例の届出
 個人事業の廃業届
都税(県税)事務所
 設立届
市役所
 設立届
社会保険の手続き 役員のみの場合では雇用保険の加入が無いため、年金事務所にて適用届を提出し併せて自身の社会保険加入手続きを進める 年金事務所
 新規適用届
 資格取得届

(筆者作成)

法人化するメリット・デメリット

個人事業主から法人になることで大きく変わるものとして、税金の計算や社会保険の加入、資金調達の方法、社外からの見え方(社会的な信用)などがあります。それぞれがメリットにもデメリットにもなりますので、順に解説していきます。

法人化するメリット

  1. 税金などについて
    個人事業主が支払う税金の種類は、所得税、消費税、住民税、個人事業税と複数あります。また税金ではありませんが、国民健康保険料も、稼いだ金額によって変わってきます。
    税率の面では、所得税は所得によって税率が変化する「累進税率」が採用されています。住民税や個人事業税、国民健康保険料は累進税率ではありませんが、所得に対して税率を乗じます。

    一方、法人は法人税、地方法人税、都道府県民税、市民税を支払いますが、所得税と比較すると税率が緩やかになっています。また、消費税の免税期間が2年間増えます。なお、詳しい比較は下記の「法人化よくある質問」にまとめました。

  2. 社会保険の加入について
    個人事業主は厚生年金や健康保険、雇用保険、労災保険といった社会保険に加入できません。個人事業主は国民年金と国民健康保険に加入します。国民年金と厚生年金を比較すれば将来的な年金の受給額に差がでますし、国民健康保険と健康保険とを比較すれば傷病手当や出産手当など、健康保険の方が手当が充実しています。
  3. 社会的信用について
    個人事業主と法人とでは、対外的な印象に差が出ます。個人事業主の多くは事業資金と個人資金とが混在しているイメージが強いため、作成される決算書の信用性が乏しくなりがちです(自分はしっかりと作っていても、先入観でしっかり作成されていない人が多いと見られてしまう)。この傾向から、金融機関からの融資を受けたい場合、法人と比較すると難しくなるケースが多くあります。

法人化するデメリット

  1. 税金等について
    法人化すると、事業が赤字であったとしても、都道府県民税及び市民税について「均等割」という税金を支払う必要があります。均等割は行政や法人の資本金によって異なりますが、大体の目安として7万円と設定されています。また、確定申告書の提出先が税務署のみではなく、都道府県税事務所と市役所の両方になります。
  2. 社会保険料の負担について
    社会保険への加入が出来る一方で、負担すべき金額も増加してしまいます。社会保険については法人と個人とで労使折半されていますが、40歳~64歳の方の場合、給与に対して29.96%、介護保険に未加入の40歳未満は28.17%を支払う必要があります。

法人化よくある質問

法人化

法人化する際によく受ける相談をまとめましたので、参考にしてみてください。

Q1.青色申告で確定申告書を提出しております。副業でアプリケーション開発をしているのですが、開発中のアプリケーションにかかる費用がかさみ、赤字の期間が続いています。法人化するのは危険でしょうか?

A1.青色申告で確定申告をしている個人事業主は、赤字になってしまった場合、3年間損失を繰り延べることが出来ますが、法人では最大9年間損失を繰り延べることが出来ます。この繰り延べた損失は、利益が出たときに利益と相殺することで税金を少なくする効果があるため、3年以上、開発に時間がかかるようであれば法人化を検討してみても良いかもしれません。
しかし、法人化した場合、赤字であっても7万円の税金(都道府県税事務所及び市役所への均等割)が発生しますので、開発スケジュールとマーケティング計画を精査し検討してみてください。

Q2.飲食店を開業して2年が経ち、来年新店舗を出す計画をしています。1年目の売上が1,000万円を超えていたので、3年目から消費税を支払わなければいけないと聞いたことがあります。そろそろ法人化すべきでしょうか?

A2.開業して2年間は消費税が免税になり、法人化してからも2年間は消費税が免税になります。つまり、最大で4年間消費税が免税になるため、ほとんどの方が開業から2年間経過したら法人化する方法を取っています。
しかし、来年新店舗を出す予定である場合、内装工事費などによっては法人化する方が不利になることがあります。消費税の計算は簡単に言うと、受け取った消費税から支払った消費税を控除して、差額を納税する、という形になります。

「消費税の簡易シミュレーション」

  • 売上高  3,300万円(受け取った消費税300万円)
  • 仕入   1,320万円(支払った消費税120万円)
  • バイト代   990万円(支払った消費税0円)
  • 家賃    198万円(支払った消費税18万円)
  • 経費    220万円(支払った消費税20万円)
  • 内装工事 1,650万円(支払った消費税150万円)

内装工事は経費ではないものの、消費税を支払うものですので支払った年の消費税から控除できます。つまり、このシミュレーションによると8万円の消費税が還付されることになります。
※ 300万円-308万円(120万円+18万円+20万円+150万円)=8万円還付

Q3.法人化すると税金が安くなる場合があると聞きました。私の場合はどうでしょうか?
今現在35歳で小売業を営んでおり、事業所得は800万円程度(アルバイトなどはいない)で推移しています。

A3.まず、現在かかる税金や税金に関する全て可視化する必要があります。なお、厳密に計算すると少し変わりますが、参考値としてご覧下さい(端数は見やすいように処理)。
<個人事業主の場合>

社会保険や税金の種類 金額 考え方・計算方法
国民年金 198,480円 一定額(月16,540円)
国民健康保険 651,000円 所得×10%
個人事業税 255,000円 (所得-290万円)×5%
消費税 800,000円 Q1を参照
所得税及び復興特別所得税 6,415,520円※×20%
-427,500円≒855,604円
855,600円×102.1%
≒873,500円
事業所得から国民年金、国民健康保険や個人事業税と基礎控除(48万円)を控除して計算
合計 2,777,980円  

個人事業主であった場合にかかる税金等は、全体で2,777,980円であることがわかりました。
次に法人化した場合ですが、役員報酬を月30万円で設定した場合(利益440万円と役員報酬360万円)で試算します。法人税等で適用する税率も利益によって変動しますので、事前のシミュレーションが必要です。計算が複雑なので専門家に依頼しましょう。

<法人化した場合>

社会保険や税金の種類 金額 考え方・計算方法
法人税 583,800円 800万円以下は15%
※社保会社負担を控除
地方法人税 25,600円 法人税×4.4%
都道府県民税 228,000円 均等割20,000円
事業税 利益×3.4%
特別法人事業税等 事業税×43.2%
法人税割 法人税×3.2%
法人市民税 106,500円 法人税割 法人税×9.7%
均等割 50,000円
社会保険料
(40歳未満の場合の総額)
1,014,120円 報酬×28.17%
所得税 47,700円 報酬-(給与所得控除+社会保険料個人負担+基礎控除)×税率
住民税 145,200円 報酬-(給与所得控除+社会保険料個人負担+基礎控除)×10%
消費税 0円 免税時は0円です
合計 2,150,920円  

法人化した場合にかかる税金等は2,150,920円でことがわかりました。
消費税の免税は最長で2年間ですが、2年後は個人事業主の時と同額の80万円支払うとした場合、個人事業主の支出総額の近似値である2,950,920円となります。

言い換えると、800万円の事業所得を確保できるようであれば法人成りを検討した方が良く、それ以上に利益を上げることが出来る事業計画であれば、法人化した方が全体としての支出が減ることになります。

まとめ

  • 法人化する場合、株式会社または合同会社いずれかを選ぶ
  • 消費税免税を受けたいからと言って法人化するのは必ずしも正しくない
  • 800万円以上の所得がある場合は法人化がオススメ

個人事業主から法人化すると、ワンステージ上がったような感覚になると思います。しかしその分やらなければいけないことが増えるので、ご自身だけでは対応しきれなくなることが増えるかもしれません。「経営者になる一歩」だと思ってチャレンジしてください。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/