自分らしいお店づくりを応援する情報サイト

Airレジ マガジン > 経営ノウハウ記事 > 【医療サロン】顧客管理の重要性や管理方法と活用方法・作成の流れを解説

【医療サロン】顧客管理の重要性や管理方法と活用方法・作成の流れを解説

治療院、整体(リラクゼーション)サロン業界では、事業者数は増加傾向にあり、過当競争となっています。厚生労働省「衛生行政報告例」によると、たとえば「柔道整復の施術所」(接骨院)数は2008年に34,839カ所でしたが、2018年には50,077カ所となっており、この10年間で約1.4倍に増加しています。(※出典1)店舗を構えていれば顧客が来てくれる時代はとうに終わり、さらにサービスにおいても差別化が難しくなったことから、顧客との関係を構築・維持する重要性はさらに高まっています。そのため、今回は顧客管理とその活用について説明していきます。

この記事の目次

顧客管理が必要な理由

顧客管理とは?

顧客管理とは、顧客に関する情報を一元管理することです。また顧客情報を活用して顧客ニーズを把握したり、顧客ニーズに合わせたサービス開発や販売促進をおこなったりすることまで含める場合もあります。

顧客管理に必要となる主な情報は、以下の通りです。

  • 基本的情報(名前、ID、生年月日、性別、連絡先、住所)
  • 購買履歴や購買行動
  • 職業、家族構成、属性や趣向、コミュニケーションの内容
  • 施術の部位、施術内容、痛みによる日常の悩み(抱えている課題)など

顧客管理はなぜ必要か?

顧客管理をしないと、「商品が誰に売れたか分からない」「一度来店したら終わり、毎回一度きり」という状態になってしまいます。

競合他社が少なかった時代には、企業視点のみでサービスを提供し、顧客管理を丁寧にしなくても事業は成り立っていました。
しかし現在は、競合が多く差別化が難しいという現状があります。より、きめ細やかに顧客のニーズを満たす商品・サービスを提供しなければ、経営を続けることが難しくなるでしょう。どのような顧客に何が売れたか、そんなサービスを提供したかをきちんと把握し、顧客の望むタイミングでサービスを薦めたり、アフターフォローも含めて継続的な関係を構築したりする必要があります。

顧客の種類

顧客管理をおこなう際は、顧客を以下のような「種類」に分けたうえで、それぞれに合った施策を取りましょう。

  1. 潜在顧客:商品・サービスを知らない顧客
  2. 見込み顧客:商品・サービスの利用を知っていて検討中の顧客
  3. 新規顧客:初めて利用に至った顧客
  4. 既存顧客:既に利用経験がある顧客
  5. リピーター:継続して利用している顧客

顧客管理は、既に利用経験がある「③新規顧客」「④既存顧客」「⑤リピーター」に対しておこなうのが基本です。

「③新規顧客」に対しては、目的に応じた顧客情報を収集することと、2回目の来店を目的として意識しましょう。「④既存顧客」に対しては、他店へと流れる「離反」の防止と、リピーターになってもらうことを目的にします。
なお、「優良顧客」や「ロイヤルカスタマー」は「⑤リピーター」に含まれます。「優良顧客」とは、商品やサービスを頻繁に利用したり、一回の利用で多くのお金を払ったりする顧客を指します。また「ロイヤルカスタマー」とは、商品・サービスに愛着、信頼を持ち、継続して利用している顧客です。
ロイヤルカスタマーは、競合他社のサービスが低価格になったり利便性が上がったりしても、簡単には利用先を切り替えません。また自社の存在を口コミやSNSなどで共有・拡散してくれることもあります。
リピーターからロイヤルカスタマーをどれだけ増やし維持していけるかは、顧客管理・活用においてとても重要なポイントとなってきます。

顧客管理をおこなうメリット

適切な顧客管理によって顧客ニーズを把握することで、顧客が求めるものにきめ細やかに対応したアプローチをすることができます。

顧客の種類ごとに適したアプローチをおこなうことで、顧客は「気にかけてくれている、分かってくれている」と感じます。それぞれの顧客に合った特別感を出すことで、たとえば次のような成果が期待できます。

売上の向上

顧客の継続利用率が高くなり、アップセル(現在購入しているサービス・商品よりも高いものを購入してもらうこと)やクロスセル(別のサービス・商品を一緒に購入してもらうこと)による効果も出やすくなることから、LTV(顧客生涯価値)が向上します。これにより、安定的な売上の確保に繋がります。

なおLTVとはLife Time Valueの頭文字で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。企業から見て、一人の顧客が「顧客である期間」にどれだけ商品・サービスへ金額を使ってくれたのかを測る指標です。

コストの削減

ビジネスの世界で知られている用語に「1:5の法則」という言葉があり、既存顧客を維持するコストは、新規顧客を獲得するコストの1/5と仮定する法則があります。継続利用率の高い顧客を増やすことで、コストを抑えつつ継続的に利益を高めることができます。

顧客満足度の向上

顧客状況に応じた適切な販促活動が可能になるため、顧客満足度が向上し、顧客維持・離反防止、ロイヤルカスタマーの育成につながります。また、ロイヤルカスタマーによる口コミやSNSの共有・拡散で、新規顧客獲得につながる可能性もあります。

顧客管理の種類

顧客情報の管理方法と活用方法(分析手法)を説明していきます。

管理方法(ツール類)

収集した顧客情報の一元管理(顧客データベース化)をおこなうには、以下のような方法があります。開業時は、ITスキルに応じてExcel・スプレッドシートを活用したり、経験したことのあるシステムを使うなど、取り組みやすいツールを使用して管理を始めるとよいでしょう。

Excel・スプレッドシート

顧客情報を整理でき、簡単なデータは自動計算させることができます。導入コストは低いですが、初めにデータベースを構築する必要があるため一定のスキルが必要です。

また情報量が多くなったり、高度で細かい顧客管理をおこなったりするには手間がかかるため、活用には限界があります。

すでに導入しているシステム等

POSレジ、レセプトコンピュータ(診療報酬請求を効率的におこなうもの)、電子カルテ、会計ソフトなどには、顧客管理の機能が搭載されているものもあります。

また複数のツールを使わなくても、他のツールと連携したり顧客データを一元管理したりできるものもあります。

アプリ・ツール

パソコンやスマートフォンで顧客管理ができる無料アプリ・ツールもあります。サービスの特徴はさまざまで、スマホアプリ、クラウド型、SaaS型のものなど、選択肢は多くなってきています。

CRM(Customer Relationship Management)システム

CRMを直訳すると、「顧客との関係を管理する」ことになります。CRMシステムを導入して顧客情報を管理・活用をすることで、より効率的に顧客重視のマーケティングを実施することができます。
ただし導入コストが高いというデメリットがあります。

活用方法(分析手法)

顧客情報を活用するにあたっては、さまざまな分析手法があります。今回は、その中でも有用性の高い方法の一つとして知られている「RFM分析」について紹介します。
分析はある程度の顧客情報が蓄積してから実施しますが、開業時からどのような顧客情報の収集が必要となるかを把握しておくことで顧客管理の項目を決めるのに役立ちますので、参考にしてみてください。

RFM分析は、直近に購入(利用)してくれた顧客、購入(利用)回数が多い顧客、購入(利用)金額が多い顧客を見つけるための分析手法です。

RFMとは、Recency、Frequency、Monetaryの3つの頭文字を並べた言葉です。

  • R(Recency):最終購入日からの経過日数(直近に購入してくれた顧客は誰か?)
  • F(Frequency):集計期間の購入回数(購入回数が多い顧客は誰か?)
  • M(Monetary):集計期間の顧客ごとの購入金額(購入金額が多い顧客は誰か?)

これら3つの判断材料から、よく来店してくれてお金を多く使ってくれる顧客を「優良顧客」、しばらく来店しておらず他店に行っているであろう顧客を「離反顧客」と位置づけ、評価基準を作成して優良顧客と離反顧客を見つけます。

下表は評価基準の例です。評価を1~5とそれぞれに基準を記載していますが、評価の基準には決まりはありません。事業の実態に応じて設定してください。

評価(ランク) 最終購入日【R】 累計購入回数【F】 累計購入金額【M】
5 10日以内 20回以上 30万円以上
4 20日以内 15回以上 20万円以上
3 30日以内 10回以上 10万円以上
2 60日以内 5回以上 5万円以上
1 120日以上 5回未満 3万円未満

RFM分析を定期的に実施すると、常連客数の把握や離反顧客の把握を通して、LTV(顧客生涯価値)の向上に役立てることができます。
たとえば、「【R】5、【F】2、【M】4」にランクする顧客であれば、【F】の購入回数(来店回数)を増やすアプローチをすることで、LTVの向上が期待できる、というわけです。

このように、分類した顧客層に対して仮説を立て、それぞれに応じたアプローチをおこない、効率的に顧客を優良顧客やロイヤルカスタマーへと育成することが可能になります。

顧客管理の流れ

顧客管理の流れを以下の6段階にわけて説明していきます。

1.目的の明確化

顧客管理する目的を明確にすることが大切です。主な目的としては「平均購買単価を上げる」「平均購買頻度を上げる」「継続期間を延ばす(離脱率を下げる)」「販売コストを下げる」などが考えられるでしょう。その目的達成のためにはどのような顧客情報を収集し、どのように活用したらいいのかなど、自社の実態に合わせた運用方針を決定します。

2.データ収集・管理

顧客情報の収集は、会員証やポイントカード、問診票や保険証、予約・問い合わせ情報、POSレジ等の会計情報などからおこないます。

なお個人情報を収集する際は、その目的を伝え、活用しない情報は入手しない、顧客情報流出が発生しない管理体制を構築するといった注意が必要です。

3.集約・整理

収集した顧客情報は、一度、全てのデータを集約・整理する必要があります。
レセプトコンピュータ、POSレジ、会計ソフト、予約問い合わせ情報、カルテなどのバラバラの情報を、あらかじめ決定した管理方法で集約・整理します。

Excel・スプレッドシート、アプリ・ツール、CRMシステムなどでおこなう場合は、データをシステムにインストールするなどの作業が必要となります。

4.整形・分析

集約・整理したデータは、分析するために整形していきます。前述したRFM分析では、評価基準を決定して顧客層を分け、どの顧客へどのようなアプローチやフォローをすべきかの指標として活用していきます。

5.施策の検討

分析結果から層別した顧客別に販売促進の施策を検討していきます。

主な施策は、情報収集のための会員証やポイントカードの発行、DM(ハガキ・チラシ、メール、公式LINE、SNS)による休眠顧客の掘り起こし、キャンペーン・イベント、アフターフォローなどがあります。

具体的には以下のような活用例があります。

  • 休眠顧客や離反顧客向けの案内として、最終購買日から○日経過後・誕生日・年末年始などのタイミングでDMを送付し、おすすめのサービス案内や割引などの施策を実施する
  • 優良顧客向けの定期的な案内として、会員ランク制度による特典・イベント案内や新サービスなどの先行販売、誕生日月の特別割引クーポン・ポイント2倍などの施策を実施する

6.結果を検証・改善(PDCA)

販売促進策の結果を検証し改善していきます。

顧客管理における成功例・失敗例

最後に、顧客管理における成功例と失敗例を紹介しましょう。

成功例

DM・チラシの送付は一般的に、不特定多数の人を対象にした場合には「レスポンス率(来店、問い合わせなどの反応率)」が低いと言われていますが、既存の顧客を対象とした場合は効果が高くなる傾向があります。

日本政策公金融庫「経営Q&A」によると、不特定多数の人を対象とした場合のレスポンス率が0.5~1.0%程度であるのに対して、既存の顧客を対象にした場合は5.0~15.0%であるといいます。(※出典2)

ある鍼灸接骨院において、休眠顧客の掘り起こしとして高齢者層にはハガキ、若年者層には公式LINEやメールを送付したところ、来店率が20%を超えるケースもありました。

もちろん送付する内容が重要ですので、顧客の種類や顧客層によって、内容を検討する必要があります。

失敗例

ツールを導入したものの使いこなせなかったケースが散見されます。特にCRMシステムはコストが高く、安易に導入すると使えずに無駄な出費で終わってしまう可能性があります。

そのため、自社の目的を改めて明確化し、必要な機能に絞り、できるだけ操作しやすいものでおこなっていくことが大切です。

まとめ

顧客との関係性を構築し売上向上を図るために、顧客管理は重要な業務です。これまで述べたとおり、顧客管理は売上に直接影響します。開業当初から顧客管理をおこなってきた事業者と何もしてこなかった事業者では、店舗運営をおこなっていくうえでの競争力に雲泥の差が生まれてしまいます。長期的に店舗運営するためにも、まずは取り組みやすい管理方法で顧客管理をおこなうようにしましょう。

  • 顧客との関係を構築・維持するために、顧客管理が必要である
  • 顧客情報は、顧客ニーズの把握やサービス開発・販売促進にも活用できる
  • 顧客管理は、既に利用経験がある「新規顧客」「既存顧客」「リピーター」を対象におこなう
  • それぞれの顧客の利用状況に合わせたアプローチをすることで顧客満足につながる
  • まずは取り組みやすいツールなどを使い、開業当初から顧客情報を溜めていくことが大切である

※出典1:厚生労働省「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」-就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所-
※出典2:日本政策公金融庫「経営Q&A」-売り上げアップにつながるチラシ・DM作成術-

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

飯塚 伸之(いいづか のぶゆき)株式会社BE NOBLE 代表取締役

株式会社BE NOBLE 代表取締役、法政大学経営大学院特任講師、MBA(経営管理修士)
整形外科等の勤務経験を活かし、施術ビジネス(治療院・接骨院など)業界のコンサルティング事業、企業・法人向けの健康経営コンサルティング事業、出張施術サービス事業をおこなっている。中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/鍼灸師/柔道整復師等の資格を保有。HP:https://benoble.co.jp/

この執筆者の記事一覧