【小売店】開業する前に知っておきたい5つの心得
開業して経営者になると、従業員として仕事をしていたときとは環境が大きく変わります。仕事や責任の範囲はもちろん、外から見られたときの印象など、環境の変化に戸惑うことがあるかも知れません。また、開業には多くの準備が必要になるので、適切にスケジュールを決めてポイントを押さえて効率的に準備をする必要があります。
ここでは開業時の心構えや押さえておきたいポイントをご紹介いたします。
この記事の目次
従業員と経営者は何が違うのか
1.従業員と経営者の違い
どこかの会社に勤めていた方が開業して経営者になると、その違いに驚くことになるかもしれません。
組織に属しているときはスタッフの業務は役割分担されるので、販売をする人、仕入れをする人、企画を立てる人、経理をする人、などに分かれて仕事をすることになります。そのため自分自身に与えられた仕事だけに集中することができますし、ある意味では「他の部署の仕事を知らなくても特に問題はない」ということもできるでしょう。
一方、経営者の場合、すべての業務内容に関与する必要があります。一人で事業を始めた開業当初はもちろん、規模が大きくなって人を雇用するようになっても、組織を作り上げるのは経営者自身です。従業員に仕事を任せるにしても「その業務の内容を知りません」というわけにはいきません。
また、従業員であれば上司に判断を委ねることができますが、経営者は誰にも判断を委ねることはできません。誰かに相談をしたとしても、最終的な意思決定者は経営者自身がすることになり、すべての最終的な責任は経営者自身が取ることになります。
「最終的に自分がすべてを決めて責任を取る」ということが、従業員と経営者の一番の違いと言っても良いでしょう。
2.経営者を目指す際の心構え
最終的な意思決定者で責任者でもある経営者は、法律に反することがなければ全てが自由とも言えます。「仕事をする、しない」はもちろん、「人を雇用する、しない」も自分で決めることができますし、「嫌な取引先の仕事を断る」ことも自由です。誰も「仕事をしなさい」とは叱ってくれません。怠けようと思えばいくらでも怠けることができますが、そうなると当然、事業は成り立ちません。そのため、他人に頼らずに判断できる「自律心」が必要になります。
また、「経営者」として他人から見られる立場になることも忘れてはいけません。従業員と経営者とでは、人から見られる時の印象が大きく変わりますので、いかなる場面でも「人に見られている」ことを意識して、自分をコントロールできる自律した行動が求められます。
開業に向いている人・向いてない人
1.動機がポジティブかどうかは関係がある?
筆者が開業の相談をお受けするとき、「自分の夢を実現したいから開業したい」といったいわばポジティブ型の人と、「今の会社に不満があるから開業したい」といったネガティブ型の人に出会います。
なんとなくポジティブ型の方が開業に向いているような印象があるかもしれませんが、動機そのものよりも、「開業に対する熱意」の方が重要だというのが筆者の実感です。
ポジティブ型の人は積極的に開業に向けた努力をされる場合が多いですが、ネガティブ型の人であっても、「今の会社を早く辞めたい」という思いの強さで、ポジティブ型の人よりも熱心に開業に向けて準備をすすめ、事業に成功された方に何人もお会いしています。
自分自身がどちらのタイプであっても、「熱意を持って取り組めるか」を判断基準にして開業にチャレンジすると良いでしょう。
2.業界経験の有無は関係がある?
開業するにあたり、今まで経験したことのある業界で開業する場合もあれば、今まで経験したことがない業界で開業する場合もあります。こちらについては、今まで経験したことのある業界の方がノウハウを活かせるので、スムーズに開業できる場合が多いのは当然です。
一方、今まで経験したことがない業界で開業する場合はノウハウに乏しいので、それだけより多くの情報を調べたり、協力者の力を借りたりする必要があります。
今まで経験している業界での開業と比較して準備は必要になりますが、努力次第で十分に開業は可能です。またコストは高くなりますが、不足しているノウハウを補完する手法としてフランチャイズ展開している企業と契約して開業するといった方法もあります。
開業時に必要なスタンス・考え方
1.しっかりと計画を立てる
開業自体は「開業届」を提出するだけで実現できますが、開業を成功させるためには、思い付きではなくしっかりとした計画を立てることが大切です。
小売業の場合であれば、店舗候補地の商圏、立地状況、競合状況、流行やトレンドなどを把握し、ターゲットとなる顧客を設定した上で、店づくりや品揃えの方向性、販売促進の方法などを検討していく必要があります。開業する前に、「どのように売上と利益を確保するか」のビジネスモデルを考えてから準備に着手することが望まれます。
2.開業の時期を決める
会社勤めなどをしているとすぐに開業する必要性が低いこともあり、ずるずる先延ばししてしまうことが多くあります。そうなると開業の時期を逸してしまいますし、そもそも開業準備を始めるタイミングもわかりません。
開業すると決意したら、「来年の4月に開業する」といったようにできるだけ具体的な時期を決めることをおすすめします。
開業時期を決めれば、そこから逆算して、それまでに取り組むべき計画づくりや資金調達、必要な許可の取得準備などのスケジュールを決めることができます。そしてスケジュールが決まれば具体的な準備に着手できます。
開業の準備は誰も促してはくれません。自分で目標やスケジュールを組んで取り組みましょう。
3.開業に向けて要件を整備する
開業を成功させるには、「事業に関するノウハウ」「競争力のある商品」「幅広い人脈」「人柄の良さ」「計画性」「実行力」「資金力」「熱意や情熱」などが必要です。どれも事業を成功させるために必要な要件ではありますが、実際、創業時にこれらを全て満たしている人は少ないでしょう。
これらの要件は生まれながら身に着いているものではなく、自分の行動によって培われる要素が多いのです。従業員から経営者になるのであれば、これらの要件を意識して身に着ける努力をしましょう。開業に向けて熱意と情熱を持って要件を整備していく姿勢が望まれます。
小売業で開業する際に押さえておきたい5つの心得
1.商圏とお客様のニーズを把握する
お店を選ぶのはお客様です。お客様のニーズを把握せずに小売業は成立しません。お客様のニーズを把握するには、開業後であれば会話からの情報収集や会員カードなどを使うといった方法がありますが、開業前には方法が限られます。
そのため、行政が公開している統計情報を集めて立地予定地周辺の商圏を調べることはもちろん、実際にその地を歩いて商圏内の状況を把握しましょう。
町を歩くだけでも来店しやすい環境かどうかわかりますし、公園に行けばファミリー層が多いか、高齢者が多いかなどを知ることができます。地域の人々の様子がわかれば、ある程度、ライフスタイルも想定できます。
より詳しく調査をしたい場合には、リサーチ会社に依頼をしてインターネットを活用したアンケート調査などを行い、ニーズを把握することも有効です。
2.徹底的にライバル店を調査する
小売業はライバル店との戦いです。開業する前からライバル店の状況をしっかりと把握して、競争に勝てるように対策を立てて取り組みましょう。ライバルのことを知らなければ適切な対策を講じることはできません。
調査する主な項目は、ライバル店の客層、品揃え、価格帯、サービスです。お客様にライバル店ではなくこれから開業する店舗を選んでいただくためには何をするべきか、しっかりと考えて取り組みましょう。
3.最新のトレンドを把握する
小売店は販売する商品の魅力が最大の武器になります。お客様が「欲しい」と思う商品を品揃えするためには、今、流行っている商品、これから流行する商品などの情報を収集してトレンドを把握しましょう。
取り扱う商品分野について、お客様よりも情報を知らないと話になりません。インターネットや業界誌で情報収集することはもちろん、業界の展示会になどに足を運ぶなどして、開業前から情報収集して仕入先などを探しておくことが必要です。
地方都市での開業であれば東京、大阪、名古屋などの店舗を視察することも良い情報収集になります。開業後には時間が無くなることも多いので、時間の取れる開業前に取り組むことがおすすめですし、刺激を受けて開業への意欲も高まります。
4.わかりやすく差別化する
ライバル店の調査を行い、展示会で情報を収集し、自分自身の想いを詰め込んで「こだわりのある店」を作り上げたとして、その「こだわり」がお客様に伝わらなければ意味がありません。分野にもよりますが、一般的には売場の全てを「こだわり商品」にすることは難しく、一般的な商品もしっかり品揃えしないと売上に繋がりません。そうなると売場の一部でこだわりの商品を展開することになりますが、中途半端な取り組みだと「お客様に気づかれない」という事態になりかねません。
そうならないためにも、例えばこれらについては開業前から考えておきましょう。
- こだわり商品や差別化商品を何にするのか
- 売場のどこで展開するのか
- どのようなディスプレイを行うのか
- POPなどの販売促進をどうするのか
5.物件探しに妥協しない
小売業では、他の業種以上に店舗の立地が極めて重要になります。特に日常的に使用するような商品を扱う場合、わざわざ遠方の店舗を利用することは稀で、近所の利便性の高い店舗を選ぶことになります。開業時にしっかりと調べて、物件探しに妥協しないようにしましょう。
店舗の周辺にお客様はいるのか? 通行量は多いか? 駐車場はあるか? 公共交通機関の利便性は高いか? 視認性が高くお客様に気づいてもらえるか? など、お客様の視点に立って利便性の高い物件を探しましょう。
まとめ
- 経営者はすべてを自分で決定し、その責任を取らなければならない立場である
- 開業に対する熱意を持てる人が起業に向いている。業界経験者の方がスムーズだが未経験でも努力次第で可能
- 開業にあたっては商圏やお客様のニーズ、商品情報を把握し、差別化できるポイントを考えておくとスムーズ。また店舗の立地に妥協は禁物
小売業には「商品アイテム数が多い」「収益率が低い」といった特徴があります。また、品揃えを仕入れ先に頼る場合が多いので、競合との差別化には様々な工夫が必要になります。そのため、開業前から商圏や顧客ニーズを把握し、ライバルとの差別化の方向性を決めておくことが重要になります。ご紹介させていただいたポイントを押さえつつ、熱意と情熱を持って開業準備に取り組みましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
渡貫 久(わたぬき ひさし)株式会社ユーミックプロデュース 代表取締役
中小企業診断士として、経営全般の相談や中長期経営計画の策定支援を専門分野に経営支援を行う。食料品小売業の経験が長いことから、食品系のマーケティング・販売促進・販路開拓・商品開発が得意分野。2006年から現在まで、公的機関や大学、民間企業において「マーチャンダイジング」「情報化」「ビジネスプラン作成」「商圏分析」「営業管理者研修」等の研修講師を務める。共著に『小売業のための利益改善&能力開発チェックリスト1000』がある。