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【医療サロン】収支目標などの経営戦略も網羅。事業計画書の書き方

事業計画書をつくる_医療

開業の準備にあたって、融資を受けるために「事業計画書」の提出が必要になり、初めてその存在を知ったという方も多いのではないでしょうか。事業を成功させるには、まず事業の全体像を事業計画書にまとめることが大切です。
本記事では事業計画書の書き方について説明します。事業計画書の作成に必要な基礎知識とポイントを理解し、開業への第一歩を踏み出しましょう。

この記事の目次

事業計画書とは何か

事業計画書とは、頭の中で思い描いている事業を、具体的にどのように実現していくかを、書類に表したものです。事業の概要、事業を取り巻く環境、事業の方向性、具体的な内容、収支計画など事業の全体像を記載します。

一般的には新規事業・既存事業どちらの場合も事業計画をまとめることがありますが、本記事ではこれから開業を考えている方を対象に、新規事業の事業計画書として説明します。

事業計画書の項目には、後ほど述べるようにたくさんの観点があります。複数の側面からヌケモレがないように、創業を検討していく必要があります。

事業計画の必要性

事業計画書をつくる_医療

事業計画の必要性について、「自分のため」「他者に説明して理解と共感を得るため」という2つの視点からそれぞれ説明していきます。

①自分のために作成する

自分のやりたいことを客観的に見つめ直し、現実と計画のギャップを知ることで、今の状態で事業が実現可能なのかを明らかにします。事業計画にまとめることで、頭の中に描いているだけの、無茶な開業を避けることができます。

②他者に説明して理解と共感を得るために作成する

金融機関の融資や公的機関の補助金・助成金を利用して資金調達する場合や、事業の協力者を得たい場合など、これから始める事業への理解と共感を得るために、事業計画が他者に事業内容を説明するときの資料となります。

事業計画の作成手順

作成の流れに沿って、順に説明していきます。

事業計画の作成手順

①開業する理由と目指す方向を明らかにする

事業全体の構想、事業イメージを膨らませ、どういう目的で何をやりたいか、なぜ自分がやるのかを明確にします。事業に対する想いや、将来的な事業展開を決定します。

②市場調査をする

これから始める事業を取り巻く環境などを調査し、事業計画書における裏付けデータとして活用できるよう準備します。
ここでの「環境」とは、経済や社会、市場や競合といった「外部環境」、自社に関する情報の棚卸しである「内部環境」の両面があります。

③事業を取り巻く環境を分析する

市場調査した結果を、事業にとってポジティブな要因となるか、ネガティブな要因となるかに分けて整理します。外部の経営環境を「機会」「脅威」、内部の経営資源を「強み」「弱み」の4つに分類し、それぞれの象限を重ね合わせることで、自社にとっての市場機会を検討します(これを「SWOT分析」といいます)。特にポジティブな項目である「強み」を活かし、「機会」をどのように捉えることができるかを考えます。

SWOT分析

④ターゲットを決定する

年齢、居住地域、購買心理などの視点で、市場あるいは顧客グループを細分化して、ターゲットを決定し、自社が取るポジションを決めていきます(これを「STP分析」といいます)。

⑤事業内容をまとめ、売れる戦略を考える

事業内容やマーケティング展開について考えをまとめ、製品・サービス、価格、販路、販売促進の整合性を考えながら、どのように売るかを考えます。

⑥始める事業が利益になるか考える

利益の考え方については、詳しくは次項の「数値計画の作成手順」を参照してください。

⑦実行計画に落とし込む

開業から開業後の実行計画と事業運営体制、想定される課題・リスクへの対応策を検討します。

数値計画の作成手順

事業計画書をつくる_医療

確実に利益を出し続けられる計画にするために、以下の4つの流れで収支の中身を明らかにしていきます。

数値計画の作成手順

①資金計画

開業費用がどのくらいの金額になるかをまとめて、その資金調達方法を決めます。

②売上計画

得られる予定の収入をまとめます。

売上の基本的な算出方法は「売上=客数×客単価」です。前項「⑤売れる戦略」を踏まえて、一日にどのくらいの客数が見込めるか、どのくらいの単価が顧客にとって適切かを決めておきます。

③仕入・経費計画

事業から出ていく支出と仕入先をまとめます。

④収支計画

事業活動の結果、いくらの売上があり、何に経費を使い、どのくらい利益が出るかを明らかにしていきます。

良い事業計画書を作成するポイント

良い事業計画書とは、端的に言えば「一貫性・実現可能性があるもの」です。

「自分のため」「他者に説明して理解を得るため」の観点から、それぞれの重要なポイントを説明していきます。

①自分のために作成するときのポイント

自らにとって、あるべき事業計画書とは、「すぐにでも実行できる計画の内容で、開業後には事業の羅針盤にもなるもの」です。開業時、すべてが予定どおりに進むとは限りません。失敗の方が多いものです。開業後に事業計画書を振り返れば、見込み違いの点や修正すべき点にすぐ気づくことができます。

作成する際のポイントは以下となります。

  • 事業内容や特徴を網羅・整理できている
  • 創業までの段取りなど、やるべきことが明確になっている
  • 創業時および創業後、当面必要な資金が明確になっている
  • 創業後の課題やリスクが想定されており、対応策が明確となっている

②他者に説明して理解と共感を得るために作成するときのポイント

他者から理解と共感を得るために、あるべき事業計画書とは、「客観的に見て理解できるもの」です。

抽象的な説明では、相手を納得させることができません。本当に事業化できそうか、顧客(ターゲット)が喜びそうか、その価格で商品が売れそうか、融資したお金を回収できそうかなど、客観的なデータなども用いて説得できる内容になっている必要があります。

作成する際のポイントは以下となります。

  • 読み手との関係性を踏まえて作成できている
  • 想いや熱意など自分の言いたいことだけはなく、論理で説明できている
  • 事業の見通しが明確になっている
  • 採算性があり、損益に無理のない計画となっている

事業計画書を作ってみよう

開業に向けて調査や準備してきたことを、実際に事業計画書に落としていきます。

形式は特に決まっていないため、大まかに以下の6つの内容について作成しておき、目的に応じた形式に合わせて転記すれば良いでしょう。

名称や数字など、実際に調べたデータを記載していくことで、より具体的で信頼性の高い内容となります。ただし、業界の専門用語などは分かりやすい表現を使うよう意識しましょう。

最初から完璧に作成しようとすると、書き進めるのが難しくなります。内容が粗くても一通りは項目を埋めて、何度か修正を繰り返してブラッシュアップできるようにしていきましょう。

1.プロフィール

(1)事業の概要

事業者名、代表者名、業種、所在地、従業員数等を記載します。

(2)代表者の経歴

学歴、職歴、業界経験、取得資格、ノウハウ、技術など、単なる項目の羅列にせずに、事業を始めるのにプラスになるような経験を積んできたことがわかるように記載します。

(3)事業をおこなう理由・動機

自身がなぜこの事業を始めたいのか(経営理念)、何を実現したいのか(ビジョン)について、自身の経験や社会情勢等に触れながら、事業の実現可能性や他者の共感性を意識して記載します。

2.環境分析

(1)業界の状況

その業界を知らない人にも業界の状況や特徴がわかるように記載します。

治療院業界においては、施術所数、施術者数のデータを示しながら、過当競争になっていることや、国家資格が必要な業種であること、療養費についてなどについても記載があるとよいでしょう。

(2)市場分析

市場調査から得たデータを示しながら、以下のような流れを意識して記載できるとよいでしょう。

  1. 業界や市場・顧客には○○のような課題(困りごと)がある
  2. しかし今はその課題を完全に満たすサービスが存在していない
  3. そのため、今はとりあえずの解決策として競合他社のサービスが利用されている
  4. そこで、自社による事業やサービスは、この課題を解決することが可能である

これらを踏まえ、次の章から具体的な市場・顧客や、自社の具体的な事業・サービスを説明していきます。

3.事業の方向性

(1)市場規模と特徴

市場規模の大きさや推移がわかるように記載します。民間調査会社なども推計を出していますので、できるだけ信頼できる客観的なデータを提示します。

(2)競合分析

  • 想定される競合先
    具体的な競合企業を列挙し、それぞれの特徴などの概略を記載します。
  • 競合他社との比較検討
    競合他社との差別化の要因(競合と比べて自社の何が優れているのか)について、ひと目で伝わりやすいよう、他社と自社とのサービス内容、価格等の比較を一覧化して整理しましょう。競合優位性を強調するだけでなく、劣る点も率直に記載します。

(3)具体的なターゲット市場(顧客)

  • 市場環境について
    どのくらいの人が顧客になり得るのかを意識して、商圏情報を記載しましょう。人口数、業界に対する認知度・需要、同業店舗数、最寄り駅の乗降者数・乗換人員など、様々な観点から分析し、記載します。
    例えば「○○地区における自社キロ圏内の住民数は、××世帯、○○○○人のため、△△人からの集客を見込める」などと記載します。
  • 想定される顧客ターゲット
    どの顧客をターゲットにして、なぜその顧客を狙うのか、顧客が抱えるニーズ・課題を、抽象的な表現でなく具体像を意識して記入します。

顧客ターゲットを決めることは、「売上の80%は上位20%の顧客で生み出されている」(パレートの法則)という点からもとても重要です。

簡単な例を挙げると、想定する顧客を「年齢」と「希望の施術分野(治療、リラクゼーション、美容、スポーツなど)」で細分化し、その中から今回の事業では「30~40代の美容分野の市場」を、自社の標的顧客として選定する。これが「ターゲット」の決定です。

その他に「職業」「所得」、または「部位」「疾患・症状」などの視点で、ターゲットを細分化することもできます。できるだけ具体的に細かく設定することが大切です。

4.事業内容

(1)事業内容

  • サービスの具体的な内容
    一言でいうと何をやるのか(事業コンセプト)、サービス内容、価格、提供方法、販売促進方法を記載します。
    サービスについては、顧客にとって得られる価値(便益)、価格については安さではなく、品質や付加価値を強調します。また提供方法については、どんな方法を取るのか(店舗内、出張、オンラインを活用、など)を記載します。
  • 自社が発揮できる強み・特徴
    上記の商品・サービスによってターゲット顧客のどんな困りごとが解決できるか、わかるように記載します。
    独自性や差別化ポイントを、客観的データなど根拠を示しながら説明しましょう。
    また、地域経済へ与える影響(雇用創出や活性化など)があればそれも記載しましょう。

(2)マーケティング展開

  • 販売促進方法
    自社のWebサイト、SNS、Googleビジネスプロフィール、リスティング広告、チラシ作成・など、利用する予定の方法を記載します。
  • 顧客獲得および関係構築の方法
    上記の販売促進方法によってターゲット顧客がどのように自社を知り、来院に至り、リピートし、顧客の紹介につながるか、一連のストーリーを意識して記載することが重要です。
    そして、自社の経営資源を踏まえた現実的で、顧客にとって有益な方法により、販売を不要にするような「売れる仕組みづくり」を考えましょう。

5.収支計画

(1)資金計画

開業に必要な費用を下表左側にある「設備資金」と「運転資金(3カ月分)」に分けて整理し、該当する項目と金額を埋め、合計金額を算出します。

次に、下表右側にある資金調達の方法について「自己資金」と「借入金」、親族からの借入金などがあれば「その他の資金」として整理し、合計額を算出します。左右の合計金額は一致するようにしましょう。

必要な資金(投資資金) 金額 調達方法・内容 金額
設備資金 店舗、事業用不動産取得、賃貸敷金・入居保証料、内装工事費、機器・備品、ソフトウェア等   自己資金  
①設備資金合計      
運転資金 商品・材料の仕入れ資金、人件費・賃金等、店舗家賃、水道光熱費、広告宣伝費   金融機関からの借入
※内訳、返済方法
 
②運転資金合計   その他の資金  
  合計(①+②)   合計  

(2)売上計画

「売上=客数×客単価」ですが、単価は決まっていても、客数(数量)を事前に把握することは困難です。そのため、前述した「4.事業内容」「(2)マーケティング展開」で決定したマーケティング施策を実施することで見込める1日の顧客数を仮定し、月・年毎の売上高も予測していきます。
営業時間・日数、ベッド数・回転率、施術者数から、サービス提供上限(売上上限)を加味して1日の売上高を算出しましょう。

(3)仕入れ・経費計画

開業後、毎月かかる経費である原価(売上にかかる費用)と販売管理費(人件費、賃料、光熱費、広告・宣伝費等)について仕入先、単位と数量、金額をまとめます。
売上原価には、サービスに付随するオイルや鍼などが該当します。按摩マッサージ師・鍼灸師・整復師の施術所では、平均約5%です。

(4)収支計画

事業活動の結果、いくら売上があり、何に経費を使い、どのくらい利益が出るかを明らかにしていきます。(1)~(3)で算出した金額を、下表の収支計算書(損益計画表)へ月毎にまとめていくイメージです。

1年以内に、単月ベース(ひと月だけで収支を出す)で良いので黒字を作れるようにしましょう。また、月毎に作成したものを根拠として1~3年後までの形式も作成できるようにします。

作成時には「採算が採れるのは何カ月後か?」「事業が軌道に乗るのはどのくらいの期間がかかるのか?」「損益からみて無理のない計画となっているか?」を意識しましょう。

もし損益に無理がある計画だとしたら、投資内容、経費内容、資金調達について再検討する必要があります。なお「③売上総利益(粗利)」は大雑把に利益を見る指標で、「⑫営業利益」は本業である事業の儲けを見る指標です。

項目 開業月 ○月 ○月 ○月 ○月 年間合計
①売上高            
②売上原価            

③売上総利益(①-②)

           
経費

④人件費

           

⑤地代家賃

           

⑥光熱費

           

⑦減価償却費

           

⑧支払利息

           

⑨広告宣伝費

           

⑩その他の経費

           

⑪経費合計(④~⑩)

           

⑫(営業)利益

           

6.実行計画(事業化計画)

(1)アクションプラン(開業スケジュール)

事業展開に必要な以下のアクションを一覧化し、スケジュールも決定しましょう。

  • 施設・設備:物件契約、内装工事、機器導入
  • 発注・仕入れ:備品、消耗品
  • 届出・許認可:税務署、保健所
  • 販売促進:WEBサイト作成、広告作成、広告配布
  • 人材:雇用、教育
  • 資金調達:融資の相談、申込、融資の実行

(2)事業実施体制

組織の体制を図などで記載します。自社の人員・運営体制でこの事業が実行できる、という点が伝わるように意識して記載しましょう。

  • 人員体制の計画
    事業へ従事する人員体制について、従業員を雇う場合は、人数・採用方法・担当業務も記載します。
  • 事業運営体制
    事業全体を俯瞰した運営等の仕組みを記載します。仕入先、協力者、支援者なども含めた位置付けがわかる図などに出来ればなお良いです。

(3)事業実現への課題や想定されるリスクとその対応策

実行計画において、以下のように想定される課題やリスクを洗い出し、対応策を検討して記載します。

(例)

  • 立地が、駅から近いがマンションの3階で認知されづらい→インターネットからの集客に注力し顧客を呼び込む
  • 施術者によるサービスの品質のバラツキ→マニュアル作成、社内勉強会、社外講習・セミナーへの参加でサービス(技術・知識・接遇)の標準化を図る
  • 施術による症状の悪化などのリスク→提携病院の紹介や賠償責任保険への加入をおこなう
  • 新型コロナウイルス感染症の感染リスク→業種別ガイドラインに則り、感染対策をおこなう。また、内装工事でカーテンレールや仕切りで個室を多くすることで密にならないようにする。

まとめ

  • 事業計画書は事業をどのように実現するかをまとめた書類で、融資や資金調達の際に説明資料となるだけでなく、自分自身が計画を客観視するためにも役立つ
  • 事業計画書を作成する前に、開業理由と方向を定め、市場調査や環境分析を行い、顧客を定めて戦略を練り、利益を算出して、リスクなども想定する必要がある
  • 良い事業計画書は、第三者が見て理解できるものであり、また開業後に自分自身の羅針盤となるようなものである

本記事に記載した内容は、開業後に経営者として事業を運営していく上で必ず必要となるものです。開業前に作成することで自信がつき、スムーズな開業や事業の成功に近づけるでしょう。
また、事業が継続する限り、事業計画書の作成に終わりはありません。もし更新することがなくなったら、その事業はもう成長しないということです。新たな事業の方向性の検討や経営環境の変化に対応できるように、必要に応じて更新するものであると考えておきましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

飯塚 伸之(いいづか のぶゆき)株式会社BE NOBLE 代表取締役

株式会社BE NOBLE 代表取締役、法政大学経営大学院特任講師、MBA(経営管理修士)
整形外科等の勤務経験を活かし、施術ビジネス(治療院・接骨院など)業界のコンサルティング事業、企業・法人向けの健康経営コンサルティング事業、出張施術サービス事業をおこなっている。中小企業診断士/健康経営エキスパートアドバイザー/キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/鍼灸師/柔道整復師等の資格を保有。HP:https://benoble.co.jp/

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