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アルバイトやパートも有給休暇は取れる。発生条件、計算方法、付与日数などルールを解説

アルバイト・パートの有給休暇のルールを解説する記事のメイン画像。飲食店の店内で、エプロンを付けたスタッフが清掃や配膳などをしている

アルバイト・パートを雇用している人や、雇用を考えている経営者のなかには「アルバイトやパートにも有給休暇を与えたほうがいい?」「有給休暇が発生する条件は何?」「何日付与すればいい?」と疑問を持たれている人もいるのではないでしょうか。結論からいうと、アルバイトやパートも有給休暇を取ることはできます。この記事では、有給休暇の発生条件や計算方法、付与される日数などをわかりやすく解説します。

この記事の目次

アルバイト・パートでも有給休暇は取得できる(制度の基本)

はじめに、有給休暇について制度の基本を解説します。

有給休暇は法律で定められた労働者の権利

有給休暇は、労働基準法という法律で定められた労働者の権利です。正式には「年次有給休暇」といい、「有休」「年休」「有給」などと表記されるケースもあります。正社員だけでなく、アルバイトやパートも条件を満たせば発生するもので、事業主は法律にもとづき適切に有給休暇を付与・取得させることが義務付けられています。違反した場合は罰則の対象となるため、注意が必要です。

なぜアルバイト等への付与が必要なのか

有給休暇は、従業員の心身の疲労回復やゆとりある生活を維持するために法律で定められた権利です。正社員のみならずアルバイトやパートも同様で、この制度を設けることで、従業員が安心して働ける環境を提供します。リフレッシュした従業員は仕事へのモチベーションが高まり、生産性やサービスの質の向上にもつながります。また、人材の定着率を上げたり、優秀な人材を確保したりするためにも不可欠な制度です。

正社員とアルバイトで有給休暇のルールに違いはある?

有給休暇が付与される条件は正社員もアルバイトも同じですが、週の所定労働日数や時間によって、付与される日数が異なります。正社員は週5日勤務が一般的なため、勤続年数に応じて日数が決まります。一方、アルバイトやパートは、週の労働日数に応じて有給休暇の日数が決まる「比例付与」という仕組みが適用されます。基本的に正社員よりも少ない日数となります。

【知らないと危険】有給休暇を付与すべき2つの法的条件

有給休暇を付与する条件は「継続勤務」と「出勤率」の2つです。それぞれ詳しくみていきましょう。

条件1:6カ月以上継続して雇用している

有給休暇を付与する最初の条件は、従業員が6カ月以上継続して働いていることです。この「継続勤務」の期間は、アルバイトとして入社した日から数え始めます。この条件を満たした従業員には、法律で定められた日数の有給休暇を与える義務が発生します。

試用期間や研修期間も勤続期間に含まれる

有給休暇が付与されるための「6カ月継続勤務」の期間には、試用期間や研修期間も含まれます。これらの期間は雇用契約が成立しているため、正式な勤続期間として数えます。入社日から6カ月が経過し、次で説明する条件(所定の出勤率が全労働日の8割以上)を満たしていれば、試用期間や研修期間中であっても、有給休暇を与える義務が発生します。

条件2:全労働日の8割以上出勤している

有給休暇を付与するもう一つの条件は、入社日から6カ月間の全労働日(シフトに入ることになっていた日)のうち、8割以上出勤していることです。この出勤率の計算では、有給休暇を取得した日や産前産後休業、育児休業、介護休業の期間は出勤したものとして扱います。つまり、無断欠勤や自己都合による欠勤など、正当な理由のない欠勤が欠勤日としてカウントされます。

出勤率の正しい計算方法と注意点

出勤率は、「出勤日数÷全労働日」で計算します。ここで言う「全労働日」とは、雇用契約で定められたシフト日数のことです。注意すべき点は、遅刻や早退があってもその日は1日出勤したとみなすこと、また、有給休暇を取得した日や、産休・育休などの法定休業期間は出勤したものとして扱うことです。これらを正しく計算しないと、従業員に不利益を与え、法律違反となる可能性があります。

業務上のケガで休んだ期間(労災)の扱いは?

業務上のケガや病気で休業した期間は、有給休暇の出勤率を計算する際に「出勤した」ものとして扱われます。これは、労働者が仕事中に負傷したことで不利益を被らないようにするための、労働基準法で定められた特別なルールです。従業員が労災で休んでも、出勤率が8割を下回らなければ、有給休暇が付与される8割条件を満たします。

有給休暇の付与日数ルール

有給休暇の付与日数は、雇用形態と勤続年数によって変わります。

週の所定労働日数が5日以上または週30時間以上のスタッフの付与日数

週5日以上または週30時間以上働く従業員には、正社員と同様の有給休暇が付与されます。具体的には、入社日から6カ月後に10日、1年半後に11日、2年半後に12日と、勤続年数に応じて日数が段階的に増えていきます。最長で6年半以上勤務すると、年間20日の有給休暇が付与されます。これは法律で定められた最低基準であり、必ず付与しなければなりません。

<有給休暇の日数:週5日以上または週30時間以上働く従業員の場合>
勤続年数 有給付与日数
6カ月 10日
1年6カ月 11日
2年6カ月 12日
3年6カ月 14日
4年6カ月 16日
5年6カ月 18日
6年6カ月以上 20日

参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

週の所定労働日数が4日以下、週の所定労働時間が30時間未満スタッフの付与日数

4日以下かつ週30時間未満で働くアルバイトやパートの方には、「比例付与」という方法で有給休暇が付与されます。これは、週の所定労働日数に応じて付与日数が決まる仕組みです。例えば、週4日勤務であれば6カ月後に7日、週3日勤務であれば5日、週2日勤務であれば3日、週1日勤務であれば1日となります。これらの日数は法律で定められており、必ず付与する必要があります。

週4日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合

<有給休暇の日数:週4日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合>
勤続年数 有給付与日数
6カ月 7日
1年6カ月 8日
2年6カ月 9日
3年6カ月 10日
4年6カ月 12日
5年6カ月 13日
6年6カ月以上 15日

週3日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合

<有給休暇の日数:週3日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合>
勤続年数 有給付与日数
6カ月 5日
1年6カ月 6日
2年6カ月 6日
3年6カ月 8日
4年6カ月 9日
5年6カ月 10日
6年6カ月以上 11日

週2日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合

<有給休暇の日数:週2日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合>
勤続年数 有給付与日数
6カ月 3日
1年6カ月 4日
2年6カ月 4日
3年6カ月 5日
4年6カ月 6日
5年6カ月 6日
6年6カ月以上 7日

週1日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合

<有給休暇の日数:週1日(かつ週30時間未満)で働く従業員の場合>
勤続年数 有給付与日数
6カ月 1日
1年6カ月 2日
2年6カ月 2日
3年6カ月 2日
4年6カ月 3日
5年6カ月 3日
6年6カ月以上 3日

参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

【課題】スタッフごとの勤続期間や労働日数を手作業で管理する限界

アルバイトやパートの人数が増えるにつれて、スタッフ一人ひとりの勤続期間や労働日数を手作業で管理するのは非常に手間がかかり、ミスも発生しやすくなります。特に有給休暇の付与日数を正確に計算するには、付与タイミングごと(最初の6カ月、以降は1年ごと)の出勤率の確認など複雑な作業が必要です。これを怠ると、法律違反につながる恐れがあります。こういった課題を解決するには、勤怠管理システムなどのツールを活用することが有効です。

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有給休暇を取得した日の給料はどうなる?3つの計算方法

有給休暇取得日の給料の計算方法は3つあります。事前に就業規則などで決めておきましょう。

計算方法1:通常の勤務時間分の賃金

最も一般的でわかりやすい計算方法です。有給休暇を取得した日を、通常通り勤務した日とみなして給料を支払います。例えば、時給1,200円で5時間働く予定だった日に有給休暇を取得した場合、1,200×5時間=6,000円を支払います。この方法は、従業員も自身の給料を予測しやすいため、トラブルが起きにくいメリットがあります。

例)時給1,200円で5時間勤務の人の場合

1,200×5時間=6,000

計算方法2:過去3カ月の平均賃金

有給休暇取得日の給料を、過去3カ月間の賃金総額から算出する方法です。具体的には、「過去3カ月の賃金総額÷過去3カ月間の総日数」で1日あたりの平均賃金を計算します。この計算方法の場合、給料が月によって変動するアルバイトには、安定した金額を支払うことができます。
もし賃金が時給や日給、出来高給で決められており労働日数が少ない場合など、総額を労働日数で割って6割にあたる額の方が高い場合はその額を適用します。(最低保障額)

例)過去3カ月の賃金総額が427,000円で、過去3カ月の総日数が70日の場合

427,000÷706,100

計算の結果、通常の勤務時間分の賃金が6,000円、過去3カ月の平均賃金が6,100円で過去3カ月の平均賃金のほうが高いため、このケースでは有給休暇取得日の給料は過去3カ月の平均賃金の金額を採用します。

計算方法3:健康保険の標準報酬日額

社会保険に加入している従業員には、「健康保険の標準報酬月額」をもとに計算する方法もあります。これは、標準報酬月額を30で割った金額を1日分の給与とする方法です。計算の手間が少なく、事務負担を軽減できるメリットがあります。ただし、この方法を採用するには、労働組合または従業員の過半数を代表する者との間で労使協定を締結し、就業規則に定めることが必須です。

例)標準報酬月額が140,000円の場合

140,000÷304,667

どの計算方法を採用すべきか?就業規則での定め方

どの計算方法を採用するかは、店舗の状況や従業員の働き方によって選ぶことができます。どの方法を採用するにしても、就業規則に必ず明記し、従業員に周知することが重要です。給料計算に関するトラブルを未然に防ぎ、従業員との信頼関係を築くことができます。

そのほか、オーナーが知っておくべき有給休暇のルール

そのほか、オーナーが知っておくべき有給休暇のルールを解説します。法律違反にならないよう注意しましょう。

原則、オーナー都合で有給休暇の申請は拒否できない

有給休暇の取得は、従業員の持つ法律上の権利であり、原則として、従業員が申請すれば、お店のオーナーはこれを拒否できません。特定の日に従業員が休むことで「事業の正常な運営を妨げる」と認められるような場合(その日に休まれては営業できないなど)は、別の日に取得するよう時季変更権を行使できます。安易に行使できるものではなく、代替要員を確保するなどの努力が求められます。

退職するスタッフの有給消化はどう対応すべきか

従業員が退職する際、残っている有給休暇をまとめて消化したいと申し出ることがあります。これは法律で認められた権利であり、基本的に拒否することはできません。退職日までにすべて消化できるように、従業員と話し合い、スケジュールを調整してあげることが重要です。トラブルを避けるためにも、残日数を確認し、円滑な引き継ぎをしましょう。

有給休暇の有効期限、買い取り

有給休暇の有効期限は、付与された日から2年間です。この期間を過ぎると、自動的に権利が消滅します。また、従業員が使わずに残った有給休暇を、会社が金銭で買い取ることは原則として認められていません。従業員が実際に休暇を取ることを促すためです。なお、退職する従業員に対して残った有給休暇を買い取ることは、例外的に認められています。

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有給休暇に関する最新動向と法改正のポイント

働き方改革の一環として、政府は2025年までに年次有給休暇の取得率を70%にする目標を掲げています。この目標達成のため、特に注目されているのが「時間単位年休」です。現在、時間単位の有給休暇は年5日までとされていますが、上限を拡大すべきだという議論が進んでおり、2025年度中にも結論が出る可能性があります。このような動向は、従業員がより柔軟に有給休暇を取得しやすくなることを意味します。オーナーとしては、労働者が休みやすい環境を整えることで、人材確保や定着率向上にもつながることを認識しておくことが大切です。

参考:厚生労働省 報道発表資料

煩雑な労務管理はITツールの導入で解決

ここまで見てきたように、有給休暇の管理は、法律で定められたルールが細かく、一人ひとりのスタッフの勤続期間や出勤率を正確に把握する必要があり、非常に複雑です。さらに、今後の法改正の動きにも対応していかなければなりません。

また、スタッフの人数が増えれば増えるほど、手作業での管理は現実的ではなくなり、計算ミスや確認漏れといったヒューマンエラーのリスクは高まる一方です。こうした課題は、多くの店舗経営者が抱える共通の悩みではないでしょうか。

しかし、これらの煩雑な作業は、今ではITツールを導入することでカンタンに、そして正確に解決できることもまた事実です。勤怠管理や労務管理のシステムを使えば、これまで多くの時間を費やしてきた作業を自動化し、オーナーは安心して店舗運営という本来の業務にもっと集中できるようになります。

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まとめ

  1. 有給休暇は6カ月以上継続して働き、かつ全労働日の8割以上出勤している場合に付与される。試用期間や研修期間も勤続期間に含まれるので注意が必要
  2. 週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の場合に、週の所定労働日数に応じて付与日数が決まる「比例付与」が適用される。例えば、週4日勤務であれば6カ月後に7日、週3日勤務であれば5日が付与される
  3. 有給取得日の給与は通常賃金、平均賃金、標準報酬日額のいずれかで計算する。また従業員からの有給申請は原則として拒否できず、退職時の消化も認められている

アルバイト・パートにも、6カ月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば有給休暇を与える義務があります。法律で定められた権利なので、適切に付与・管理して、従業員が働きやすい環境を作っていきましょう。有給休暇をしっかりと管理することは、スタッフの定着にもつながります。勤怠管理システムなど便利なツールを活用し、店舗運営の効率化とリスク管理を両立していきましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

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小池 秀昌(こいけ ひであき)公認会計士・税理士

関西学院大学総合政策学部一期生。米国での長年の教育・生活経験を活かし、国際会計や異文化対応に精通した実務家。TOEIC880 点、英語ネイティブレベルの語学力を持ち、IFRS(国際会計基準)にも対応。大手監査法人、上場企業の財務部門を経て、国内外の監査・経理業務、IPO 支援など幅広い領域で実績を重ねる。現在は個人会計事務所「FirstDay Consulting(ファーストデイ・コンサルティング)」を主宰し、企業顧問や英語教育、異文化共生の地域活動にも力を注いでいる。
【主な所属・役職】
・公認会計士(登録番号3037866)/税理士(登録番号150341)
・近畿税理士会豊能支部 幹事
・近畿公認会計士協会豊能支部 幹事
・在日米国商工会議所 会員
・池田英語推進協会
・スポイの会
・一般社団法人即戦力
・金融系ブログ 執筆・監修担当
公式サイト:https://www.firstday-consulting.com

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