屋号とは?メリットや決め方をわかりやすく解説
個人事業主として事業を始めるときに、「屋号」をつけるべきか迷うことがあると思います。また、「そもそも屋号って何?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、屋号の概要や屋号をつけるメリットなど、屋号に関するさまざまな疑問をわかりやすく解説します。
この記事の目次
屋号とは?
屋号(やごう)とは、個人事業主が自分の事業を周りに知ってもらうために本名とは別につける「事業上の名前」のことをいいます。
もともと、江戸時代には苗字があるのは武士階級だけで、商人や農民には苗字を名乗ることが許されていませんでした。苗字がないと周りの人たちを呼ぶときに不都合なので、苗字とは別にその一族や家族を区別する目的で作られたのが屋号です。
明治になって国民全員に苗字が与えられたので、屋号の必要性はなくなりました。しかし、その後も商人など事業を行う人が引き続き屋号を名乗る習慣が残ったため、現在でも本名とは別に屋号を使うことが認められています。
屋号は必ずつけなければならないものではありません。また、事前登録の必要がないため、「今日から屋号は〇〇にします」と自ら名乗ればその瞬間から屋号として成立します。
雅号、商号との違い
屋号と似たものに「雅号(がごう)」や「商号(しょうごう)」があります。雅号は著述家、画家、書家、芸能関係者などが本名以外につける別名のことです。ペンネームや芸名などがこれに該当します。雅号は個人そのものの別名である一方、屋号は事業に対してつけられる名前であるといった違いがあります。
商号は、法人の登記簿上に記録された「会社の正式名称」のことをいいます。屋号は個人事業主が使用するのに対して、商号は法人が使用するという違いがあります。屋号は使用が任意ですが商号は正式名称なので、法務局に登記する必要があります。
屋号が使われる場面
屋号は自分の事業を相手に伝えたいあらゆる場面で利用します。名刺やホームページ、SNSのほか、請求書や領収書などの事務的な書類にも使われます。また事業のための銀行口座が必要な場合にも、屋号が記載された銀行口座を作ることができます。
税務署に提出する確定申告書にも屋号を記載する欄があるため、屋号を使っている場合は申告書にも記載するようにしましょう。
注意点としては、屋号はあくまでも事業に対して自分が名付けたものなので、基本的に法的効力はありません。契約書などの正式な書類に屋号だけでサインすることはできず、本名である氏名もあわせて記載する必要があります。サインだけではなく印鑑を押印する場合であっても、屋号だけではなく氏名が必要となります。
屋号をつけるメリット・デメリット
それでは屋号をつけるメリットとデメリットについてみていきましょう。
屋号をつけるメリット
屋号をつける最大のメリットは、個人事業を趣味程度ではなく本格的に行っているという印象を与え、より円滑に事業を進めやすくするということです。名刺に個人名だけが記載されている場合と屋号と名前が記載されている場合では、相手が受け取る印象が大きく違います。
実際に取引をする際も、請求書や領収書に屋号の記載があると、支払相手にとり安心感があります。特にインターネットを使って不特定多数の方を相手に行う事業の場合、振込先が個人名の銀行口座よりも屋号がついている銀行口座のほうが信用してもらいやすいでしょう。
屋号をつけるデメリット
屋号をつけるデメリットとしては、どのような屋号にするのかを考える手間と、名刺や領収書などに屋号を印字する手間がかかるということです。
すでに知名度がある会社の名前や商標登録されている名前を勝手に使用すると、相手から訴えられる可能性があります。また、的外れな屋号をつけると、自分の事業が相手に伝わらないこともあるので、屋号選びは慎重に行う必要があります。
屋号を変更した際は、名刺や請求書、領収書などを作り替える手間がかかります。特に屋号つきの銀行口座を作っている場合には、口座名の変更手続きが必要となりますので注意してください。
屋号をつけるうえでの注意点
屋号は基本的に文字数や表記に制限はありません。漢字、ひらがな、カタカナだけでなく、英語や記号を使っても特に問題はありません。ただし、下記の点には気をつけましょう。
登録商標や商号とのかぶりがないかを確認
商標登録されている名称や有名な企業名を屋号にすること自体が法律に違反するということはありません。しかし、意図的に名前を利用して同じような商品を販売した場合は、民事訴訟を起こされる可能性があります。誤解を与えるような屋号を使用するのはやめましょう。商号は法務省のサイト「商号検索システム」や国税庁「法人番号公表サイト」などで検索できるほか、商標についても特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat) 」で確認をすることができます。
法務省「商号検索システム」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00076.html
国税庁「法人番号公表サイト」
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
特許庁「商標検索」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
法人企業と誤認される名称は使用しない
株式会社や合同会社、医療法人など一見すると法人だと誤認しかねない文言を屋号に使用することは、会社法などほかの法律によって禁止されています。それ以外にも「〇〇銀行」「〇〇信用金庫」などの文言を使用することも銀行法によって禁止されており、違反した場合には罰則があります。
法人化を目指している場合は記号を使用しない
個人事業主の方が法人化するにあたり、屋号をそのまま法人の商号(正式名称)とすることがよくあります。その際の注意点として、屋号には使えるのに商号では使うことができない文字というのがいくつかあります。
例えば「㎡」や「Ω」などの記号は、商号に使うことができません。個人事業主で将来法人化を検討している方は、法人になっても使用できる文字を屋号に使うようにしましょう。
屋号をつける際の4つのコツ
これから屋号を考える方のために、屋号をつける際に気を付けたいポイントをいくつかお伝えします。
1.事業内容を表現する屋号をつける
屋号をつける目的は、相手に自分の事業内容をより理解してもらうことにあります。いくらオシャレな屋号をつけても何をやっている人なのか伝わらなければ意味がありません。
「酒の〇〇堂」や「ハンコヤ〇〇」のように、屋号だけでもどのような事業をしているのか想像できるようなネーミングが適しているでしょう。
2.検索されやすい単語を使う
近年、インターネット検索が当たり前となりました。「ワインの〇〇」など検索されやすい単語を屋号にいれることで、自分のことを知らなかった人に知ってもらえる可能性が高まります。
3.エピソードや思いを込める
同じ事業内容でも、その商品やサービスに対する思いやエピソードが伝わると覚えてもらいやすいです。「天然素材屋〇〇」「合格請負人〇〇」にように、商品やサービスにどのようなメリットがありそうか想像できる屋号だと印象がよくなります。
4.読み書きしやすく、長すぎない屋号をつける
あまり長い文字の屋号だと、名刺や請求書などに記載するのが大変になりますし、相手も覚えられません。長くても10文字程度にまとめるのがよいでしょう。また例えば「XUBBYS」など何と読めばいいのかわからない特殊な屋号だと、相手が戸惑うのでわかりやすい文字を選ぶことが大切です。
個人事業主が新たに屋号をつける、または変更する方法
個人事業主が新たに屋号をつける場合には、役所などに届けを出す必要はありません。個人事業の開業時や毎年の確定申告の際、屋号を記載する欄がありますので、そちらに自分が決めた屋号を記載すれば完了です。審査されることもありませんし、屋号について税務署から問い合わせがくることもありません。
屋号を変更する場合、変更届を税務署に提出する必要はなく、新たに確定申告をする際に申告書に変更後の屋号を記載すれば変更完了となります。請求書や領収書などについては、屋号を変更したタイミングで新しい屋号のものを作成してください。その際、取引相手には屋号が変わった旨をあらかじめ伝えたほうが親切です。
まとめ
- 屋号は個人事業主が事業内容を相手に伝えるための事業上の名前
- 株式会社や銀行など特定の文字は屋号に使うことができない
- 屋号は事前登録の必要はなく、変更する場合も事前申請は不要
屋号は個人事業主が自由に決めることができ、自分の事業を相手に知ってもらうために重要なものです。特に新たに事業を行う場合には、まず自分の存在を知ってもらうことから始まります。この記事で屋号をつけることがメリットだと感じたら、屋号をつけて活用してみましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
穂坂 光紀(ほさか みつのり)税理士
税理士法人 エンパワージャパン 代表税理士 1981年生まれ 横浜市在住
中小企業こそ日本を支える礎であるという理念から、持続可能な社会・持続可能な企業を創るための「中小企業のための財務支援プログラム」を実施することで強固な財務力を持つ優良企業に導く、中小企業の財務支援に専門特化した税理士事務所を運営するとともに、児童養護施設の児童から地域を支援する税理士へと導く「大空への翼プロジェクト」を行っている。共著「七人のサムライ」や執筆など多数。