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締め作業15分!インスタで話題なドーナツ店の”非常識な飲食店”経営とは

仁田坂 淳史(にたさか あつし)編集者

クレープにパンケーキ。数々のスイーツ店が軒を並べる原宿・表参道エリアは、飲食店の出店を考える際の重要拠点です。今回取り上げるのはDUMBO Doughnuts and Coffee。麻布十番という土地にありながら、インスタ女子の間で話題の人気店です。同店はiPadを駆使。毎日の作業を効率化することで、閉店後の締め作業を15分で終わらせられるようになったとのこと。こだわりのドーナツとコーヒーを提供するお店づくりに注力できています。ITを活用した店舗経営の秘訣を店長・照井直樹さんに伺いました。

この記事の目次

 

DUMBOのショーケース内。色とりどりのドーナツが並ぶ

2016年9月にオープンしたドーナツ店、インスタ女子の間で瞬く間に人気に

照井直樹さん(以下、照井) DUMBO Doughnuts and Coffee(ダンボ・ドーナツ・アンド・コーヒー。以下、DUMBO)は 2016年9月にオープン。芸能人の方や、海外からわざわざ足を運んでくださるお客様もご来訪。Instagram好きな女子の間で流行し瞬く間に人気になりました。

DUMBO Doughnuts and Coffee 店長 照井 直樹さん(てるい なおき)
18歳で岩手から上京。モデルをしていたが、飲食店のアルバイトで知り合った現在の社長に強く感銘を受け株式会社Inceptionへ。DUMBO Doughnuts and Coffeeを立ち上げ「非常識な飲食店づくり」に注力している

非常識な飲食店をつくるための、ドーナツとコーヒーへのこだわりと工夫

照井 DUMBOをつくったきっかけは、私たちの会社、株式会社Inceptionの研修でニューヨーク(以下、NY)を訪れたことがきっかけでした。

会社のビジョンは「非常識な飲食店をつくる」。リスクはあってもNYドーナツの流行を日本で作りたかった

照井 初めて訪れたニューヨークで印象に残っているのは、ドーナツ屋さんで見かけた長い行列。そのお店のドーナツは大きくてカラフルでおいしかった。今はコンビニで安くドーナツが買える時代です。いくらNYで流行っているとはいえ、飲食業界には「今から日本でドーナツ屋をやっても」というネガティブなムードがありました。

手がかかってもひとつひとつ丁寧にドーナツを作る

しかし、現地でNYドーナツを食べ、その印象は一変。NYスタイルの大きなドーナツとコーヒー。それぞれにこだわりのあるお店を作りたい。それが原点となり、チャレンジしてみることにしたのです。

お店の名前の由来にもなったNYのブルックリン・ダンボ地区。Down Under the Manhattan Bridge Overpassの略(DUMBO)で、倉庫を改造した店舗やロフトが多く立ち並ぶ流行の一大拠点

ぼくらが大切にしているビジョンは「非常識な飲食店をつくる」こと。飲食店業界で正しく新しい価値をつくることが私たちの仕事です。パンケーキが原宿で流行っているからパンケーキをやろう、という考えにはなりません。流行り物のローカライズをではなく、流行をつくる側であり続けたいと考えています。

ドーナツの値段は1つ320円〜380円ほど。手に取りやすい価格が魅力

安定供給可能なケースを使うため、ドーナツのサイズが直径11〜12cmに決定

照井 ドーナツには一部を除いて着色料を使っていません。とことんカラフルなドーナツを作ることもできるのですが、日本人は激しい色だとちょっぴり敬遠してしまうもの。DUMBOでは派手すぎない、大人向けのドーナツを目指しています。

DUMBOをで一番売れているフランボワーズ(真ん中、ピンク色のドーナツ)。これも合成着色料を使っておらず、天然由来のピンク色だ

日本でよく見かけるドーナツに比べると大きなドーナツですが、NYドーナツの一般的なサイズよりはやや小ぶり。DUMBOのドーナツが今のサイズに落ち着いた経緯には理由があります。

持ち帰り用のプラケースは、もともとアメリカメーカーのものを検討していました。しかし、供給が安定しなかったため、国内メーカーで安定供給できるものに決定。そのケースに収まるギリギリのサイズとなるようドーナッツの形を決めました。

ドーナツのケースは国内メーカーから仕入れている。本当はもっとドーナツに高さを出したかったが、これよりも分厚いケースは安定した供給が見込めない。ドーナツケースを優先して考えた結果の選択だった

ケースの安定供給を優先したため、分厚すぎるドーナツは作れないことがわかったのです。

ドーナツの高さを決める生地延ばし。分厚くふっくらとしたNYドーナツを作るために気の抜けない工程だ

ケースの内寸から、ドーナツは直径11〜12cmくらいの大きさ。アメリカと比べてもほぼおなじ直径ですが、若干高さが低いサイズ感です。「日本のドーナツよりは大きくてボリュームがある」という条件を満たしつつ、日本人女性にも大きすぎない。絶妙なバランスのドーナツが生まれました。

ドーナツを直径11〜12cmにするためのドーナツ型はどこにもない。DUMBOではクッキー型を使用しドーナツを作っている。一度で穴まで抜くことができず、2回にわけて穴を成形。面倒でもサイズ感にこだわっている。

京都から仕入れたコーヒー豆と、お店のオープンを1ヶ月遅らせてでもこだわったエスプレッソマシンでコーヒーをいれる

照井 ドーナツだけじゃありません。コーヒーにもこだわるのがDUMBO流。DUMBOでは、京都の人気コーヒーショップ『% Arabica Kyoto』(以下、アラビカ)の豆を使っています。アラビカがエスプレッソマシン・スレイヤーの正規代理店というのも導入のポイントでした。

エスプレッソマシン・スレイヤー。バリスタが抽出温度、水量、抽出タイミングを操作可能。エスプレッソマシン前面に店名ロゴを入れたり、ハンドルバーの素材もカスタマイズでき、世界に1台のエスプレッソマシンに仕上がる

アメリカのシアトルにマシンを発注し、完成まで要した時間はなんと4ヶ月。納品が遅れたことでお店のオープンは1ヶ月後ろ倒しに。オープンを遅らせてでも、このエスプレッソマシンで出すアラビカコーヒーにこだわりたかった。そのくらいちゃんとしたコーヒーを提供したかったんです。

原宿・表参道から離れていても。麻布十番に若者を呼ぶための店舗のこだわり

照井 ドーナツ店出店にあたり、スイーツの本場、原宿・表参道エリアを考えなかったわけではありません。しかし、まずは大人に来て欲しかった。そこで選んだのが麻布十番。近隣にある大人の街・六本木ほどギラギラしていない麻布十番には、下町のいい雰囲気が漂っています。DUMBOは広告宣伝費を一切かけていませんが、Instagramで取り上げてもらえる仕組みを作ったことが一番の宣伝でした。

平日でも開店と同時にたくさんの方が買いに来る

照井 ドーナツやコーヒーと同様、店舗へのこだわりは強いです。
大人向けのドーナツをテーマにしていますので、基本となるお店のテーマカラーはグレー。

DUMBOの外装。ただのコンクリート打ちっ放しに見えるが、様々な色を混ぜて作ったグレーが基調となっている。店舗壁面・内装に思った通りの色を出すため、着工の際には自ら何度も足を運んだ

そしてDUMBOらしさにもなっているピンク色。麻布十番の大人の男性が持っても恥ずかしくないピンク色を目指して作りましたが、このカラーブランディングはかなり悩んだポイント。

悩んだ結果、

(1)大人世代がドーナツをSNSに写真をアップ
(2)それを見た若い世代が真似をする。麻布十番にドーナツを買いに来ること自体をステイタスに感じてもらえる

というストーリーを期待し、今の「大人向けピンク」を採用することに。コーヒーカップもピンクですが、男性が持っても恥ずかしくない色合いがテーマ。最近は狙い通り男性のお客さんも増えています。

大人に似合うピンクを目指した

すべての作業をiPadで完結。効率化により閉店後の締め作業が15分で終わる

照井 さまざまなこだわりを持つDUMBOですが、私たちが本質的に注力すべきドーナツづくりに注力するため、さまざまな効率化を行っています。

一般的な飲食店には、PCやレジスターなどの什器がレジカウンター周辺に置かれていますが、DUMBOにはiPadしか置いていません。iPadにはさまざまなアプリを入れて業務に役立てています。

お会計の処理に使うアプリはPOSレジアプリのAirレジ。それまでのレジでは手作業で集計しExcelに数値を打ち込むことが必要でしたが、今はお会計ごとにデータが貯まり、アプリを開けばグラフで確認することも可能になりました。通常、飲食店では1〜2時間前後の締め作業が生じることが常識。しかしDUMBOではPOSレジアプリを導入した結果、レジ締め作業などが不要になり、閉店後15分で締め作業が終了するようになりました。

業界的に飲食店の長時間労働、ブラック化が叫ばれる中、DUMBOのスタッフは閉店後すぐに帰れるようになり、弊社の掲げる「非常識な飲食店」を体現する結果となりました。

iPadは、メモ帳(日報、申し送り事項の共有)、シフオプ(シフト管理)、Googleスプレッドシート(レシピ開発)などのアプリを活用。iPhoneと違い、iPadならレジカウンターで操作していても遊んでいるように見えない

本質的な価値にフォーカスし、

照井 DUMBOはチェーン店ではないので、スタッフの個性を認めていきたいと考えています。それぞれのスタッフの個性はお店の魅力になる。お店づくりに正解はありませんし、スタッフが個性を発揮し、正解を見つけてもらえればと思っているんです。

象徴的なエピソードがあります。
飲食店では珍しいと思うのですが、ぼくらの会社は夏休みを1週間連続で取ります。休むときにはしっかり休んで、スタッフとして価値ある仕事にフォーカスしてもらいたいからです。

大半が3年で閉店すると言われている飲食業界。生き残るためには、流行の後追いではなく発信していく側になる必要があります。店舗経営としてはリスクがあっても、無駄な仕事やルーチンワークをスタッフにやらせるより、本質的な価値を作れる仕事に注力してほしいんです。店舗づくりはそのための環境作り。お店としてのベースがあってこそ、スタッフが価値を生み出す精神的余裕が出てくるのではと考えています。

私たちは従来のレジスターを捨てました。iPadを活用することで締め作業が15分で終わってすぐに帰れるようになったり、空いた時間を使ってよりこだわりのドーナツ・コーヒーづくりに注力できるようになりました。これからはもっとスタッフが働きやすいように、社内の制度をもっと整えていきたいです。

まとめ

経営者が頭を抱える、飲食店の長時間労働問題。DUMBO Doughnuts and Coffee はiPadをを活用して労働時間が長くならないための体制を築いています。そのほか、安易なローカライズを行わない、流行の発信地である原宿や表参道ではなく麻布十番に出店するなど、まさに「非常識な飲食店」をつくりあげた同店。

常識にとらわれない柔軟な発想で新たな飲食店経営の道を模索する姿が印象的でした。

DUMBO Doughnuts and Coffee
麻布十番駅より徒歩5分。外はサクッと、中はもっちりした食感の楽しめる手作りドーナツと京都の%Arabica Kyotoより仕入れているコーヒーが楽しめる

※この記事は公開時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

仁田坂 淳史(にたさか あつし)氏

仁田坂 淳史(にたさか あつし)編集者

1986年生まれ、大分県出身。出版社での雑誌編集、Webメディア立上げを経て出版ベンチャー株式会社ZINEを設立。得意ジャンルはテクノロジー。

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