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個人事業主とは?法人との違いやメリット・デメリットを解説

上田 健介(うえだ けんすけ)行政書士

自分の知識や経験を活かして事業に挑戦してみたいと考えたことはありませんか?自分で事業を行う方法の一つに「個人事業主」があります。今回は、個人事業主になる前に知っておきたいことについて解説します。

この記事の目次

個人事業主と会社員との違い

個人事業主、会社員、法人、いずれも仕事をしているというイメージがある言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか?

個人事業主って?会社員やフリーランスと違うの?

個人事業主は、いわゆる自営業者です。自分で事業を営む個人のことを言います。事業は反復・継続して行う必要があり、例えば自分が持っているバイクを友人に売却したという場合は事業とはなりません。これに対して、会社員は企業等と雇用契約を締結して勤務している人のことを言います。労働の対価として給与を受け取っています。

最近では「フリーランス」ということばもよく見かけるようになりました。フリーランスと個人事業主は同じもしくは似た意味で使用されることが多いですが、本来は「企業や団体等に所属することなく、業務の必要に応じて契約する人もしくはそういう働き方」のことです。

年収や労働時間の比較

年収

個人事業主と会社員では、同じ年収であっても手取り額が同じとは限りません。個人事業主の業種にもよるので一律には言えませんが、個人事業主は会社員よりも手取り額が少なくなる傾向にあります。個人事業主は会社員に比べて自分で支払わなければいけない経費(交通費、備品等)や保険料等が多いためです。

労働時間

会社員は、労働基準法で守られています。労働基準法は、まさに労働者を守るための法律です。労働時間のみならず、休日、賃金、解雇等の内容が定められています。労働基準法では、労働時間は原則として週40時間と定められています。ところが、個人事業主は労働基準法の適用を受けないため、理論的には無限に働くことができます。とは言うものの、働きすぎが原因で体調を崩してしまっては元も子もありません。誰も注意してくれないだけに、自分自身で上手に調整する必要があります。

個人事業主になる準備

事業に挑戦してみようと決意したときにまず考えなければいけないことは、個人事業主としてスタートするのか、法人としてスタートするのか、という形態の選択です。

個人と法人の違いを簡単に理解しよう

「個人事業主」は前述のとおり、個人が自分で事業を営みます。これに対して「法人」は、個人とは別に法人格を持ったものが事業を営みます。街中でよく見かける「株式会社○○」「一般社団法人〇〇」というものです。個人事業主と法人では、次のような違いあります。

開業・設立の手続

個人は一定の書類を提出することで誰でもすぐに事業をスタートすることができますが、法人の場合はそうはいきません。法人の種類により程度の差はありますが、設立前にまず定款認証や登記などを行う必要がありますし、そこでは6~30万円程度の費用も必要です。

資金の調達

最近では、クラウドファンディングや補助金・助成金等の方法で資金を調達する人が登場してきました。個人の資金調達もハードルが下がってきたと言えるでしょう。しかし、そもそも個人は法人と比較すると信用度が低くなってしまうことが多いため、法人と比較して資金調達の難易度が高いという点は今後もそう簡単には変わらないでしょう。

会計・税務

個人と法人では会計や税務の面でも違いがあります。例えば、赤字の場合に翌年以降へ繰り越すことができる制度において、個人の場合はその適用年数が3年であるのに対し、法人では10年というように、法人の方が有利であるケースが多くなっています。

いつから個人事業主になれる?

ずばり「個人事業主になる!」と決意して業務をはじめたら、もうそのときから個人事業主です。

法的に必要な手続きは?

個人事業主になることは簡単ですが、税務署等の機関からすると、ある個人が業務を始めたことは一切わかりません。事業を行っている人たちに大切なお知らせを送付したり確認の連絡を取ったりすることができないのです。

そこで所得税法において、個人事業主になったときは税務署へ開業届を提出することを定めています。開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という名称の書類です。この書類は各税務署に備え付けられている他、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。提出にあたって手数料は不要ですが、事業をはじめた事実があった日から1ヶ月以内に提出しなければいけないことになっています。

提出するときには、提出用と控え用の2部を用意しましょう。控え用は税務署の受付印を押印して返却してもらいます。この控え用の開業届は、税務署の受付印が押印されていることから、今後、金融機関口座の開設や補助金の申請等、あらゆる場面で必要になってくる重要な書類です。

個人事業主の立場からは、事業をはじめたことを知らせるという目的だけのために開業届を提出するイメージかもしれませんが、実は事業をはじめたことを公的に証明してもらう大切な手続でもあるのです。

個人事業主として最初にすること

晴れて個人事業主になることができたら、まず何からはじめれば良いのでしょうか?

これだけはやろう、個人事業主に必要な基礎

事業をはじめたら、帳簿付けを継続して行う必要があります。業務に関してのお金の出入りを記録するのです。もちろん、プライベート(家庭)と事業のお金の出入りは明確に区分しておく必要があります。昔は簿記を理解していなければ帳簿付けを行うことは困難でしたが、現在では初期費用が0円の会計ソフトやクラウド会計も登場していますので、かなり負担は減少しました。お金の出入りが複雑にならないうちに、自身に合った会計ツールを見つけましょう。また、クレジットカードや金融機関の口座もプライベート用とは別に、事業専用のものを用意しておくと良いでしょう。

個人事業主になるとこんなこともある、必要になる?

個人事業主には退職金がないことから、老後の生活を不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。そんな個人事業主の強い味方として、独立行政法人中小企業基盤整備機構による「小規模企業共済」があります。

小規模企業共済に加入し一定期間掛金を払うことによって、廃業した場合等に共済金を受け取ることができます。掛金は一律ではなく、1千円から7万円の間で自由に設定できるため、自分の所得に応じて無理なく継続できます。

ところで、個人事業主は国民健康保険に加入する必要があります。会社員は会社が加入手続を行ってくれる上に保険料を半分負担してくれますが、個人事業主は加入手続を自分自身で行わなければいけませんし、保険料を全額負担する必要もあります。健康保険料は所得から控除することができますが、全額の負担は特に開業当初において重荷になることがあります。

個人事業主のメリット・デメリット

最後に、個人事業主になる場合のメリットとデメリットについて解説します。

個人事業主になる場合のメリット

手続が簡単

必要手続の項目でご紹介したとおり、個人事業主は開業届を提出するだけです。開業届の提出にあたり添付書類は不要ですし、税務署の窓口に行かずとも郵送で対応してもらうことができます(郵送提出の場合は、控え用の開業届を返送してもらうため、切手を貼った返信用封筒を同封することを忘れないようにしましょう)。

法人の場合は、定款設定や法人登記の他、都道府県税事務所や各市町村への書類提出等も必要です。自分一人で行うことは負担が大きいため、報酬を支払って士業に依頼することも珍しくありません。

意思決定の早さ

個人事業主の場合、基本的には個人事業主が一人で事業を行うため、すべてはその個人事業主の判断に委ねられます。法人の場合は、(自分一人だけで法人を設立する、いわゆる「一人法人」を除いて)一人で事業を行っているわけではないため、案件によっては会議や打ち合わせが必要になることもあります。そして、その会議や打ち合わせの結果によっては、自らの考えとは異なる内容で決着することもあるでしょう。個人事業主として自分一人で進めた方がスムーズかもしれません。

個人事業主になる場合のデメリット

低い信用度

法人と比較して最大のデメリットは信用度です。日本では、法人は信用度が高く個人事業主は低いという傾向があります。信用度の低さが、新規投資や新規事業においてマイナスの影響を及ぼすこともあります。またプライベートでは、クレジットカードを発行するときや住宅ローンを契約するときの審査に影響する場合もあります。

人材の不足

昔と比較して大企業信仰は低下してきたと言われていますが、それでも法人に勤務したいと考える人が圧倒的であり、他の個人事業主のもとで勤務したいと考える人は多くありません。今後、考えを同じくする優秀な人と一緒に事業を拡大したいという思いがあるのなら法人の方が進めやすいと言えるでしょう。

まとめ

  • 個人事業主は、いわゆる自営業者で自分で事業を営む個人
  • 個人事業主は労働基準法の適用を受けない
  • 個人事業主は法人よりも開業の手続きが簡単
  • 信用度の面では法人よりも低い傾向

個人事業主について解説してきました。個人事業主と法人のどちらの形態でスタートすれば良いのか、悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。例えば、個人事業主でスタートし、途中の段階で法人の形態に変更するといった方法もあります。メリット・デメリットを考慮しつつ、成長戦略も描きながら、柔軟に選択するようにしましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

上田 健介(うえだ けんすけ)行政書士

行政書士(特定行政書士、申請取次行政書士、著作権相談員)/ファイナンシャルプランナー(CFP®、1級FP技能士)/家族信託専門士/家族信託コーディネーター/相続診断士/相続診断協会パートナー事務所/ゆうちょ財団 金融教育支援員/認知症サポーター

学生時代からの夢であった北海道暮らしを実現するため、2008年、兵庫県から北海道に移住。民間企業で経理業務を担当する。その後、障がいを持つ双子の育児介護のために退職を決意。約2年間、育児介護に専念。次第に障がい児とその家族を支える仕事に就きたいとの思いを抱くようになり、育児介護専念期間中、行政書士とファイナンシャルプランナーの資格を取得した。現在は、障がい児のみならず、障がい者や高齢者とその家族に対し、将来のために今準備できることを中心にアドバイスをしている。http://uedakensuke.com/