勤怠管理ってどうしていますか?基礎知識と注意点を解説
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
労働者の就業状況を把握するため、出勤時刻や働いた時間、休日の取得状況を総合的に管理する「勤怠管理」。給与計算のためだけでなく、労働者の健康を守ったり、勤労意欲を高めたりするためにも重要です。本記事では、勤怠管理の方法や運用上の注意点を解説します。
この記事の目次
勤怠管理の基礎と必要な理由
まずは、勤怠管理の基礎知識と勤怠管理が必要な理由について見ていきましょう。
勤怠管理の基礎知識
勤怠管理において管理すべき項目は主に4つあります。
管理すべき項目 | 内容 |
---|---|
日々の始業・終業時刻、労働時間、休憩時間 | 労働時間を把握するための基本的な項目で、賃金を決める際の基準になる |
時間外、深夜、休日の労働時間 | 法定労働時間を超えて働いた時間で、割増賃金の対象になる |
出勤・欠勤の日数、休日出勤の状況 | 出勤日数は給与計算のベースになる。休日出勤は、その代休が取れているか確認する |
有給休暇の取得状況 | 2019年4月以降、10日以上の有給休暇の権利がある従業員については、会社は最低でも5日の休暇を取らせることが義務化された |
このうち、有給休暇については諸外国に比べて日本は取得が進んでいません。民間の調査では、フランスの有給休暇取得率が100%、アメリカでは71%に対し、日本は50%にとどまっています。この状況を受け、働き方改革法案が成立しました。労働基準法が改定され、2019年4月以降は10日以上の有給休暇の権利がある従業員については、会社は最低でも5日の休暇を取らせることが義務化されました。
勤怠管理が必要な理由
勤怠管理は従業員が働いた時間を把握するものです。これがおろそかになり長時間労働が続けば、従業員の健康や生命に影響を及ぼしかねません。心身の疲労からミスが頻発し、職場の雰囲気が悪化することで従業員の働く意欲が低下する恐れもあります。労働基準法では、労働時間の記録に関する書類について3年間保存するよう定めており、このことからも勤怠管理は企業の義務だといえます。「働き方改革」が注目を集める昨今では、よりその重要性は増しています。
また近年、雇用形態は多岐に及んでいます。正社員、非正規社員といった分類だけでなく、派遣社員や契約社員、嘱託社員、あるいはフレックスタイム勤務、パートタイム、アルバイトなど様々です。勤怠管理は多用な働き方を可能にするベースになります。
勤怠管理の方法
勤怠管理の具体的な手法として、主に「紙の管理表」「タイムカード」「エクセル管理」「勤怠管理システム」の4つがあります。どの方法を選ぶとしても、大切なことは「客観的な記録が可能か」ということです。それぞれの特徴についてご紹介します。
紙の管理表
日付が入ったカレンダーのような紙のフォーマットを使う方法は、古くから活用されていました。毎日の出勤・退勤時刻や休憩時間、残業時間、あるいは遅刻や早退の時刻、休日の取得状況を書き込みます。
タイムカード
タイムレコーダーに紙の打刻シートを差し込んで、出勤時刻や退勤時刻を打刻する方法です。打刻されたものは無料集計サイトを使ったり、タイムレコーダーからパソコンにデータを移したりして管理します。
エクセル(Excel)管理
表計算ソフト「エクセル(Excel)」を使用して、出退勤時刻などの打刻から集計までをパソコンでする方法です。セルに計算式を設定することで、出退勤時刻から労働時間を自動的に計算します。
勤怠管理システム
パソコンやスマートフォンと連動して、打刻から集計、分析までを一貫してシステム上で管理します。場所を問わず、デバイスを使って出退勤時間などを把握できます。
勤怠管理手法ごとのメリット・デメリット
これまで説明してきた4つの手法それぞれについて、メリット・デメリットを見ていきましょう。
紙の管理表
紙の管理表のメリットは、1枚の紙でまとめて管理するため、一目で実態を把握できる点です。しかし、自己申告のため、不正申告があっても見抜けない上、サービス残業の温床になる恐れもあります。
タイムカード
タイムカードのメリットは、使い方が簡単な点です。タイムレコーダーとそれに対応したタイムカードを準備するだけでよいので、すぐ利用できます。
一方、出勤時刻と退勤時刻しか打刻できず、残業時間や休日の状況まで管理できないものが多い点はデメリットといえます。また、打刻するために端末の所まで行くという物理的な動作が必要で、外出先からそのまま帰宅する場合や在宅勤務の場合は管理しにくいのも難点です。加えて、打刻データをパソコンで管理する際、データ入力の作業が必要なため、労力がかかります。
エクセル管理
エクセル管理は、インターネット上に無料のテンプレートがあるため、費用をかけずに管理システムを構築できる点がメリットです。入力項目が細かく分類されているソフトもあり、自社に合ったものを導入できます。
ただ、情報入力が基本的に従業員任せのため、入力ミスや不正申告の防止が困難です。また、社内の決まったパソコンで入力する場合は、在宅勤務の際に使えません。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、パソコンやスマートフォンからリアルタイムで打刻管理できるため、利便性が高く、集計や分析の手間も少なく済みます。入力間違いのチェックも不要です。従業員への通知機能もあり、残業期間が上限になると警告できます。また、給与システムとも連携でき、ICカードのほか、指紋や指静脈、顔認証を使って打刻するため、セキュリティー面での信頼性が高いです。
ただ、導入コストが高くなりがちな点はデメリットといえます。企業規模が大きい場合は、大きなコストが発生します。操作性やセキュリティーをある程度考えなければならないため、導入までに時間がかかる場合もあります。
なお、厚生労働省のガイドラインでは、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等など客観的な記録を原則としており、この意味では、タイムカードや勤怠管理システムによることが適切と言えます。
手法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
紙の管理表 | 出退勤時刻、休憩時間、休日取得など、1枚のシートで全て管理できる | 手書きの自己申告になるため、不正申告やサービス残業につながる恐れがある |
タイムカード | 専用の端末を設置すれば、操作も簡単で低コストで導入できる | 在宅勤務や社外での勤務に対応できず、記録されたデータの集計作業も必要になる |
エクセル管理 | 数式を設定すれば、出退勤時刻の入力で自動的に労働時間を計算。導入コストも安い | 操作は従業員任せになるので、入力ミスや不正申告の防止が困難 |
勤怠管理システム | スマートフォンやパソコンと連携して利便性が高く、高度な管理ができる | 導入コストが高く、導入までに時間がかかる場合もある |
勤怠管理を行う上での注意点
従業員の雇用形態が多様になるなか、勤怠管理は複雑さを増しています。勤怠管理をする上での注意点とそれに対応したサービスをケースごとに見てみましょう。
パートタイム・アルバイトが多い場合
パートタイム・アルバイトは、それぞれ勤務日や勤務時間、休憩時間が異なります。時間によって、あるいは個人によって時給が変わることもあります。そこで重要となるのが、人件費や本人の勤務希望日を考慮して最適なシフトを考えることです。
パートタイム・アルバイトの人数が多いほど労力がかかりますが、勤怠管理システムの中には、アプリ上で希望シフトを提出し、すぐさまシフト表に反映されるサービスを含むものもあります。人件費を確認しながらシフトを作成できるものもあり、自社の状況に合わせたシフト管理も可能です。
契約形態が多様な職場の場合
在宅勤務や契約社員、派遣社員など、契約形態が多様な職場の場合、形態ごとの勤怠管理が必要です。
在宅勤務の場合だと「始業・終業の記録や時間外労働をどう記録するか」といったことが重要になります。一方、契約社員の場合だと、契約通りに勤務しているかを記録しなければなりません。給与への反映まで連動し、一貫した管理手法を構築する必要があります。また、派遣社員の場合は派遣元企業が賃金を支払うため、派遣先企業が勤務時間を管理する必要があります。
勤怠管理システムのなかには、契約形態ごとに管理できるものもあり、派遣社員に特化したサービスもあるため、自社の実情に合わせて導入することが大切です。
扶養控除を受ける従業員がいる場合
パートタイムなど、従業員のなかには配偶者の扶養に入っているケースがあります。所得税や住民税などが控除される「扶養控除」は年収の上限が定められています。また、年収以外にも勤務日数や勤務時間が考慮されるケースもあります。扶養控除を希望する従業員のため、その従業員がどのケースに当てはまるのか確認した上での管理が求められます。
勤怠管理システムのなかには、従業員情報で年収目安を設定し、月収の上限目安を確認できるものもあります。そのような情報を確認しながらシフトを組むことができます。
まとめ
- 正確な勤怠管理は企業の義務
- 勤怠管理は多様な働き方のベース
- 勤怠管理には主に「紙の管理表」「タイムカード」「エクセル管理」「勤怠管理システム」の手法がある
- 手法ごとの特徴を把握して自社に最適なものを導入する
- 契約形態の多様化で勤怠管理も複雑さを増している
しっかりした勤怠管理は従業員の健康を守るだけでなく、働く意欲に直結し、生産性の向上や業績向上につながっていきます。昨今、「働き方改革」が日本社会の大きな関心事になっており、勤怠管理は今後一層重要性を増していきます。「勤怠管理なくして働き方改革なし」と言っても過言ではありません。自社の勤怠管理の方法を見直し、最適な管理方法を導入しましょう。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
Airレジ マガジン編集部
自分らしいお店づくりを応援する情報サイト、「Airレジ マガジン」の編集部。お店を開業したい方や経営している方向けに、開業に向けての情報や業務課題の解決のヒントとなるような記事を掲載しています。
中野 裕哲(なかの ひろあき)起業コンサルタント(R)
起業コンサルタント(R)、税理士、特定社労士、行政書士、CFP(R)。起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士法人V-Spirits代表。年間約200件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。起業支援サイト 「DREAM GATE」で6年連続相談数日本一。「一日も早く 起業したい人が『やっておくべきこと・知っておくべきこと』」など、起業・経営関連の著書・監修書多数。http://v-spirits.com/