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飲食・小売店の「競合分析」に必要なデータは、たったの2種類

齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト

「競合店舗や、近所の店舗に負けているような気がするが、何が原因かわからない。どこから手をつけていいかわからない」そう思っているオーナーは多いのではないでしょうか。自店舗だけの分析だけでは判断が付かないことも、競合分析により比較することができ、自店舗の課題がより明確になります。そして、そのために必要なデータはたったの2種類です。どんなデータを活用するのか。これから「競合分析」をするに当って有効な方法をお伝えします。ぜひ店舗売上を上げるために役立てていただければと思います。

この記事の目次

飲食店・小売店にとって「競合分析」を行う意義とは

エリアビジネスである飲食店や小売店にとって、競合分析はとても重要です。もちろん、一部のとてつもない「ブランド力」を持つ、遠方からでもお客様が足を運んでくるような店舗であれば別ですが、ほとんどの店舗では、自店舗のあるエリア内に住む、あるいは勤めている生活者がお客様となっているでしょう。
そしてそのお客様は、自店舗だけではなく、同エリア内で商売している他の店舗と比較検討した上で来店しています。従って、そのエリア内の飲食なり自社が取り扱っている商品なりの市場を競合店舗と取り合っている、この取り合いに勝っていく(1番でなくても利益が出る売上・客数を確保する)ことが、エリアビジネスでは重要です。その上で把握すべきことが、エリア内における競合店舗の状況になります。

さて、皆さんは「3C分析」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。3C分析とは、企業経営などにおいて、顧客(市場)、競合、自社の観点から市場環境を分析し、経営戦略上の課題を導くフレームワークの一つです。企業経営において必要な顧客(市場)、競合、自社を最もシンプルに整理できるフレームワークです。

ビジネスとは、“誰かに何かを提供し、その対価としてお金を得る”ことです。
そこに関わってくるものは、自社が商売している相手である顧客(市場)と同じ顧客相手に商売している競合です。それ以外にはありません。中でも競合の状況を自社と比較して把握することは、とても重要なポイントとなるのです。
孫氏の「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という言葉があるように、「競合分析」をすることで、定量的に競合店舗と自社店舗の違いを把握することができ、その結果をもとに施策に落し込むことさえできれば、勝てるビジネスになる。ということは、想像に難くないのではと思います。

競合分析は「現地」を見よ! 実地調査の重要性

さて、では競合分析はどのようにすれば良いでしょうか。
上場企業や一定の規模以上の企業であれば、インターネット上や調査関連資料等で様々な情報を取れることもありますが、「店舗」の競合分析はそうはいきません。
インターネット上など、いわゆる公開されている情報は店舗の住所程度でしょう。その情報だけで競合分析をすることは困難です。
エリアビジネスである飲食・小売業の「店舗」における競合分析は、実地調査がとても重要です。
当たり前ですが、自店舗は毎日のように見ているはずですよね。では競合店舗についてはどうでしょうか?

  1. 何人のお客様が来ているのか(自店舗と比較して多いのか少ないのか、性別や年代に違いはあるのか等)
  2. どんな商品を販売しているのか(自店舗と比較して品揃えは多いのか少ないのか、価格帯の違いはあるのか等)

上記①②を知っているだけで、施策の精度は大きく変わってきます。
そしてこの①②は、実地調査で把握することができるのです。

まずは自店舗の競合あるいはベンチマークしている店舗を整理しましょう。
それらの店舗に対して実地調査をすることで競合分析が可能となります。

自店舗と競合店舗の顧客の違いから課題を明確にしよう

それでは、具体的な事例をもとに競合分析のやり方を学んでいきましょう。
これから説明するのは、イートインも可能なパン屋で行った競合分析です。
分析する前の自店舗の状況を説明すると、

  • 1店舗2億円のパン屋の店舗
  • POSデータは存在するが使っていない
  • 最近、客数の減少により売上が落ちてきている
  • 周辺に新たな競合店舗はできていないが、競合となる店舗が3店、存在している
  • 周辺環境は変わっていない(人口減少は起こっていない)

という状況でした。
実際、下図のように1月から売上は前年同月比が100%を下回っており、売上を客数×客単価に因数分解すると、客単価は100%以上で推移していた一方、客数については11月以降100%を下回るようになっていました。

ここまでは、自社のPOSデータの分析で把握できる内容です。
では何故、客数が前年同月比を下回ってしまったのか、その答えを出す一つの方法が競合分析なのです。競合店舗と客数の違いを比較することで、その要因を明らかにしていきます。
自店舗の客数はPOSデータから把握することができますが、競合店舗はそうはいきません。従って、実地調査により明らかにしていきます。
方法としてはいくつかあります。例えば、平日と土日、それぞれ1日ずつ、1時間ごとに自店舗と競合店舗の来店客数をカウントする方法です。全ての客数をカウントすることはできませんが、同じ時間帯に来店している客数の比較となるため、十分に競合分析として活用できるデータが取得できます。
この方法であれば、分析する店舗数分の調査スタッフが必要となりますが、比較的簡単に有用なデータが取れるでしょう。
このような方法で分析した結果の一例が、下図になります。

自店舗と競合店舗3店舗の、ある日における時間帯別の客数比較をしたグラフです。
上図を見ると一目瞭然、朝の時間帯と夕方の時間帯において、競合店舗と比較し自店舗の客数が少ないことが分かります。
今回の例は時間帯別の客数比較となりますが、例えば曜日別、あるいは性別・年代別での比較により違いが出るケースもありますので、ぜひチャレンジしてみてください。

このケースでは、そもそも自店舗の売上減少要因が「客数の減少」であったため、その客数の違いがどこから来るのか? より詳細に競合分析を行うと、上記のような結果となりました。
このように、分析をする際に重要なのは「まず大きな傾向から掴んでいく」ことです。
今回の例では、売上減少という問題が発生し、その原因が(客単価ではなく)客数の減少によるものだった→その客数の減少がどこから来ているのかを把握するために競合店舗と客数の比較をした、という順序になります。

自店舗と競合店舗の商品の違いから打ち手を導こう

ここまでで、朝と夕方の時間帯において、競合店舗に比較し自店舗の客数が少ないことが把握できました。
では、それが何故起こっているのかをさらに深掘りしましょう。それも実地調査による競合分析で可能です。

ビジネスとは、「誰が」「何を」買ったのか、これに尽きます。一つめの実地調査はこのうち「誰が」に視点を置いた方法でした。
もう一つの実地調査は「何を」に視点を置きましょう。
ただ、「競合店で実際に何が購入されているか?」までは、さすがにカウントが困難です。そこで「何が販売されているのか」を実地調査し比較することで、競合店舗との差を明確にします。その一例が下図になります。

上図は、客数に違いが出た朝の時間帯と夕方の時間帯における陳列を、商品カテゴリごとに分類したものです。
このように、販売されている商品数をカウントするだけでも、自店舗の課題が明確になることが分かるでしょう。もちろん課題だけでなく、強みも明確にすることができます。上図を見ると、朝と夕方の商品数が、競合店舗と比較し明らかに少ないことが分かります。
上図は商品カテゴリ別の比較ですが、他にもブランド別や商品の価格帯別などで比較分析するケースもあります。

このように、地道な実地調査により「顧客(誰が)の違いはどこにあるのか」「商品(何を)の違いはどこにあるのか」を定量化し、競合と比較・分析することで、売上低下の原因や、自店の課題を明らかにすることができるのです。

ちなみに今回ご紹介した事例では、問題であった朝と夕方の時間帯において、商品数の拡充および販促施策を実施することで、下図のように業績が回復していきました。

競合分析は、自店舗の売上を上げるためにとても有用な方法です。
実地調査自体は1、2日かかるものですが、売上に繋がる具体的な施策へと落し込むことが可能となるので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

まとめ

  • 飲食店や小売店といったエリアビジネスにおいて、自店舗のエリア内における競合店舗を調査分析することは売上アップにとても有用
  • 実地調査とは、自店舗および競合店舗の「顧客数」と「商品数」を定量的に把握すること
  • 「顧客数」は時間帯別や曜日別、あるいは性別・年代別で自店舗と競合店舗を比較していく
  • 「商品数」は商品のカテゴリ別やブランド別、価格帯別等で自店舗と競合店舗の数量を比較していく(更に「顧客数」の比較で差が出た時間帯別や曜日別等でも比較するとより深い示唆を得られる)

「競合分析」は店舗の売上を上げるための具体的な施策を打つ上で、有効な示唆を得られる分析方法です。そしてそれは「実地調査」=エリア内の競合店舗を「自分の目で見る」という地道な方法で実行できるのです。「顧客(誰が)の違いはどこにあるのか」「商品(何を)の違いはどこにあるのか」の、たった2つの調査から始めてみましょう。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

この記事を書いた人

齋藤 健太(さいとう けんた)データストラテジスト

慶応義塾大学理工学部卒業後、株式会社船井総合研究所に入社。主に中堅規模(数百億)以上の企業をメインクライアントとしたプロジェクトに従事。小売業、飲食店、メーカー等、幅広い業種において、中期経営計画策定やマーケティング戦略の構築、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンス等の実績を有する。独立後も製造業や小売業、サービス業に至るまで大小様々な企業の課題発見に従事、成果を上げる。特にデータ分析においては、複数のコンサルファームにもアサインされる実力を有する。その他、AI関連スタートアップや教育関連企業からもデータ分析支援の依頼を数多く受けている。
2013年9月「問題解決のためのデータ分析」(2019年2月に新装版)、2019年10月「会社の問題発見、課題設定、問題解決」を出版。
KUROCO株式会社では、中小企業向けのデータ活用支援(分析、可視化、教育)を展開。
https://cm-consulting.jp/