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勘定科目「前受金」の定義とは?いつ「売上金」に変更する?

勘定科目の一つに、「前受金(まえうけきん)」というものがあります。言葉の通り代金を受け取ったときに使う勘定科目ですが、代金を受け取ったとひと言で言っても色々なケースが考えられます。どのような場合に前受金を使えばいいのか、細かく解説していきます。

この記事の目次

前受金とは

前受金とは、商品やサービスを「提供する前」に代金の一部、または全てを先に受け取った場合に用いる勘定科目です。将来的に提供する予定の商品やサービスの営業活動から生じた前金、手付金や頭金、予約販売の代金などを受け取ったときに用います。そして、商品やサービスを提供した時に「売上」に振り替えます。

前受金と仮受金、預り金の違いは?

前受金に似た勘定科目として仮受金や預り金があります。
前受金は商品やサービスを提供する前に代金の一部または全てを受け取ったときに用いる勘定科目ですが、仮受金は、「入金された内容が不明」な場合に用いる勘定科目なので、一時的に用いるのが一般的です。預り金は「一時的に代金を預かっている」場合に用いる勘定科目で、従業員の所得税に関する源泉徴収や社会保険料を差し引いた際、将来的にその差し引いた金額を支払う必要があるものに対して使用します。

前受金と前受収益の違いは?

前受金は「商品、サービスの提供」が単発の場合に用いますが、前受収益は「契約上、継続してサービスを提供する」場合に、代金を先に貰っていてもまだサービスを提供していない場合に用いる勘定科目です。具体的には月額制の会員サービスを提供している場合などで、翌月分の代金を先に受け取ったときに用いる勘定科目です。会計用語では、前受金の事を「未決済項目(取引が何も完了していない)」として、前受収益を「経過勘定科目(時の経過で取引が完了する)」として分類しています。

(参考)適切な期間損益計算と経過勘定科目
前受収益を会計用語では「経過勘定科目」としています。経過勘定科目とは、適切な期間損益計算(一定期間内の正確な業績を把握すること)を実施するために用いるもので、未払費用や未収収益、前受収益、前払費用の4つが存在します。
例えば、8月から継続してサービスを提供する契約をしていて、7月に代金を受け取った場合、7月に売上処理してしまうと正確な業績把握が出来なくなってしまいます。そこで7月に受け取った代金は前受収益として処理し、8月に売上に振り替えることで正確な業績把握を実施します。

売掛金と前受金との関係は?

売掛金は「先に商品やサービスを提供」していて、「代金を回収していない」場合に用いる勘定科目です。一方、前受金は「商品やサービスを提供していない」状態で、「代金の一部や全部を受け取っている」場合に用いる勘定科目ですから、両者はまったく逆の関係であると言えます。

現金主義会計と前受金

会計は広く一般的に発生主義と言って、入出金などお金の動きにかかわらず、物やサービスの提供など取引・行為が発生したタイミングで、収益と費用として処理します(厳密には収益は実現主義といい、収益の獲得がほぼ確実になったときに処理します)。ただし、例外として青色申告事業者の方は、選択によって現金主義会計を用いることも出来ます。

現金主義会計とは、物やサービスを提供したタイミングではなく、入金や出金など現預金が実際に動いたタイミングで計上する方法です。「収益=収入」「経費=支出」に類似する形で損益計算しますので、前受金を受け取った時点で「売上(収益)」として処理するのではないかと誤解する人もいますが、現金主義会計を用いた場合でも、前受金は収益として処理されません。

例えば、青色申告事業者が、2021年1月に提供する商品やサービスの代金を2020年12月に受け取った場合は、2020年は前受金として処理しますが、売上になるのは納品した2021年1月です。あくまでに発生主義と現金主義は収益と費用を処理するタイミングの違いだけであって、勘定科目そのものを変えるものではありません。

なお、誤解されがちですが、白色申告の方に現金主義は認められておらず、発生主義会計にて会計処理する必要があります。

何を前受金として処理するのか?

前受金として処理するかどうかの判断については、「主たる事業に関係する取引かどうか」が重要になります。主たる事業に関係しない取引であれば前述の通り、仮受金や預り金として処理してください。ここでは、小売業や飲食業、サービス業で想定される前受金の例を記載します。

小売店

  • 店舗に在庫が無く、注文代金を受け取ってから商品を買い付ける場合に、先に受け取る注文代金
  • 新しい商品が発売される場合に予約代金を受け取り、入荷後に販売する際の予約代金

飲食業

  • 店舗を貸し切ってのパーティを予約したクライアントから受け取る手付金
  • 式典などでケータリングを依頼された際に受け取る手付金
  • 法人向けにお弁当を提供している場合に販売する回数券の代金

サービス業

  • 回数券を販売している場合の回数券の代金
  • 研修会などを実施する際に開催前に受け取る前受代金

前受金は「負債」としなければならない理由

前受金は、商品やサービスを「提供する前」に代金の一部または全てを先に受け取ったものなので、お金は貰っていますが商品やサービス提供が完了していません。当然お金を振り込んだクラインアトは、商品やサービスの提供を望んでいますので、代金を受け取った事業者にはその時点で、商品やサービスを提供する義務が生じています。もし、代金を受け取っても商品やサービスを提供していなければ、クライアントには代金を返金しなければいけません。そのため将来的には返済義務が生じる可能性があるものとして負債に分類されています。

前受金に関するよくある質問

前受金に関してよくある質問をまとめましたので、参考にしてください。

Q1.【キャンセルのケース】飲食業を経営しているのですが、店舗貸切パーティの依頼があり、代金の一部として11万円を先に受け取りましたが、その後キャンセルの連絡がありました。予め契約でキャンセルの場合でも50%は返金できないとお伝えしていたので、50%(5万5,000円)を返金しました。この場合の会計処理はどのようにすればいいのでしょうか?

A1.代金の一部を受け取った際には会計勘定科目の取扱いです。

勘定科目 税区分 金額 勘定科目 税区分 金額
現金預金 対象外 110,000円 前受金 対象外 110,000円

また、キャンセル料として50%の代金を支払ったことで、この店舗貸切パーティに関する取引が完了しましたので、以下のような会計処理を行います。

勘定科目 税区分 金額 勘定科目 税区分 金額
前受金 対象外 110,000円 雑収入 対象外 55,000円
      現預金 対象外 55,000円

なお、本取引の捕足情報として、消費税の取扱いが通常の営業活動外の取引であり、「本来であれば得ることが出来たはずの利益を獲得できなかったことの補填」という性質が大きいと考えられるため、前受金、雑収入ともに課税対象外(非課税)になります。

国税庁:No6253 キャンセル料

Q2.【一部納品遅れのケース】3月決算の小売業を営んでいます。商品代金として3月の初旬に120万円受け取ったのですが、3月末までに全商品の納品が間に合わず、10%相当分が4月の納品となりました。この場合どのように処理すれば良いでしょうか?

A2.3月の代金受け取り段階において、以下の会計処理を行います。

勘定科目 税区分 金額 勘定科目 税区分 金額
現金預金 対象外 1,200,000円 前受金 対象外 1,200,000円

そして、決算時に原則として未納品分だけが前受金として残るように以下の会計処理を行います。
(3月末では90%納品済 120万円×90%=108万円……売上に振り替え)

勘定科目 税区分 金額 勘定科目 税区分 金額
前受金 対象外 1,080,000円 売上高 課税 1,080,000円

このような会計処理を行う事で、損益計算書上、売上高は108万円と処理され、貸借対照表に前受金が12万円残ることになります。またこの12万円の前受金は4月に商品を納品したときに売上に振り替えます。

Q3.【回数券のケース】個人でリラクゼーションサロン業を営んでいます。10回分の回数券を販売しており、代金を一括で貰う代わりに通常価格よりも安い価格で一回分の施術を受けられるように料金設定をしています。回数券を一回利用してもらうごとに会計処理が必要でしょうか?

A3.たくさんのクライアントが回数券を利用している場合に、一件ずつ処理するのが煩雑という話はよく聞きますが、原則としては一回利用ごとに前受金から振替が必要になります。ただし毎回の処理が面倒であれば、日々の集計で回数券を棚卸して売上に振り替えることも可能です。

例えば、1月1日に1回1万円の回数券10枚綴り1冊を9万円で販売した

勘定科目 税区分 金額 勘定科目 税区分 金額
現金預金 対象外 90,000円 前受金 対象外 90,000円

1月2日の回数券の利用数が5枚だった

(回数券1枚あたりの売上 90,000円÷10枚=9,000円/枚)

勘定科目 税区分 金額 勘定科目 税区分 金額
前受金 対象外 45,000円 売上高 対象外 45,000円

所得税法では、簡便的な帳簿作成として、一件ずつの取引ではなく、日々の売上を日計売上として処理することを認めています。

まとめ

  • 前受金は商品やサービスを提供する前に受け取った代金のことを指す
  • 仮受金や預り金、前受収益など似たような勘定科目があるので注意する
  • 前上金は商品やサービスを提供したときに売上に振り替える

前受金は、まだ売上にならない未確定な勘定科目です。サービスや商品提供前の代金である前受金を売上として処理してしまう方もいますが、「粉飾決算(実態と異なる決算)」になってしまう可能性がありますので、売上と前受金をしっかりと区別して会計処理を進めてください。

※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。

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この記事を書いた人

福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士

公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。

上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。

https://sola-cpa.com/

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