ウェルカムの気持ちで『外国人観光客をおもてなし』――店舗オーナー向けAirレジミニセミナー開催
0円でカンタンに使えるPOSレジアプリの「Airレジ」が、9月25日に開催した「店舗オーナー向け Airレジ ミニセミナー」。第4回目は、「年間100件以上のセミナー実績!インバウンドのプロが教える どんなお店でも必要な、“今日から始められる外国人観光客のおもてなし術”」と題し、株式会社USPジャパン取締役の神郡慶子氏が登壇しました。
外国人観光客をどのようにお迎えできるのか、「今日から始められるポイント」をお伝えいたします。
この記事の目次
プロローグ:インバウンド対応への疑問と課題
はじめに神郡氏は「都内に外国人観光客があふれかえっているのに、積極的にインバウンドに取り組んでいる免税店はわずか1万店ほど。なぜでしょうか」とインバウンド対応への疑問と課題を8つほど挙げました。
- どうしてインバウンド対応するの?
- 何からはじめたらいいの?
- 外国語ができない
- 接客ができない
- 店舗表示はどうしたら効果的?
- 免税対応が大変、スタッフは対応できない
- 集客の方法はどうしたらいいの?
- 外国人が来たら困る……
「これらの課題や疑問を解消していかないと、免税店としての許可を取っても、それを示すステッカーを貼るような意欲がわきません」と神郡氏。「そこで、このセミナーでは、次のような流れでお話していきます」と述べてからセミナーの概要について説明しました。
- インバウンドに対応するべき理由がその市場の拡大にある
- 対応が遅れているからこそ、今すぐはじめることでメリットが得られる
- インバウンド対策にまず必要なのは対象となる外国人観光客を見定め
- そのうえで取り扱う商品やサービスを明確に打ち出し
- 外国語を話すお客さまにも対応できるよう受入環境を整え
- チラシ、パンフレット、ホームページなどで販促のための情報発信をしていく
「対策の中ではそれぞれ今日帰られてからすぐにでもはじめられるポイントをお伝えしますので、『できる!』と思ったものから取り組んでいただければと思います」と参加者たちに勧めてから本題に入っていきました。
インバウンドの現状――有利な日本にいるからこそ早め早めの対応策を!
ひとつ目の疑問点は「なぜインバウンド対応をする必要があるのか」というもの。小規模なお店が外国人観光客をおもてなしするメリットはあるのでしょうか。
インバウンドの背景について神郡氏は、「2003年に掲げられた観光立国政策から13年。外国人観光客は、2016年で2400万人を達成、今年は2600万人になる見込み」と述べてから、「注目したいのは消費額で、なんとここ3年の間、毎年1兆円ずつ伸びていて、2016年は3.7兆円、今年は4兆円超えると予想されています。この額は自動車部品輸出額と同程度。とはいえ、頭打ちの輸出産業に比べ、インバウンド市場はありえない伸び率を維持している」とその拡大傾向について解説しました。
さらに神郡氏は、「新興国に住む人たちがリッチになり、全世界における2016年海外旅行者数は前年比3.9%増加した」と世界市場に言及。そして「日本はその中で有利な立場にあります」と述べました。なぜでしょうか。
「アジア太平洋地域では、全世界平均より高い8.6%の伸び率。日本はそこに属しているため、他の地域よりも海外からの旅行客を呼び込める有利な場所にあり、きちんとした対応策を取ってさえいれば、さらに市場の拡大を見込めるんです」
では外国人観光客は、どのような消費活動をしているのでしょうか。神郡氏は、「日本食を食べる旅行客が95.8%、買い物を楽しむ旅行客は84.1%」だと言います。「地元に住んでいる人たちより購買力が高く、優良顧客。今日参加されている飲食店や小売店の経営者さんたちは、早くはじめれば早くはじめたぶんだけインバウンドのメリットを大いに受けられる、というわけです」と今すぐ取り掛かるべき理由を説明しました。
とはいえ、外国人観光客を受け入れる環境の整っていない地域や店舗は多いもの。「言語の壁、決済システムの壁、通信環境整備、繊細さが求められる宗教対応」の点で遅れを取っていると神郡氏。「でも、最も肝心なハートの部分が整っていないのかもしれません」と続けます。
「上手くコミュニケーション取れないからといって、うつむいて目を合わせないようにするのではなく、ハートを開いてウェルカムな気持ちで対応しましょう。心地よく過ごしていただきたいと常日頃から思っていれば、その場の対応だけでなく、環境の整備もなんとかなるものなんです」
では、実際にどのように対策を取っていけばよいのでしょうか。
今すぐできるインバウンド対策――楽しみながらヒアリング、無料ツールで独自指差しシート作成も
「ここに、外国人観光客が日本を旅行して不満に感じたランキングがあります」と神郡氏。「いろいろありますが、特異でわかりづらい『食券システム』や、『食べ方を教えてくれない』といったものが上位にあり、戸惑っている様子がわかります」と解説します。
これだけあると、ひとつずつ対応していくのに時間がかかりそうですが「基本フレームだけ押さえておけばそんなに難しいことではない」と神郡氏は言います。その基本フレームとは(1)対象顧客を見定め、(2)商品サービス打出、接客応対・受入環境整備、情報発信・販売促進をしていく、というもの。
神郡氏は、「(2)に関しては、できれば3つ一緒に、できなければお店の状況に応じて取り掛かりやすいところから対応していきましょう」とハードルを下げつつ「対象顧客を見定めることは最優先させましょう」と強調しました。
なぜ対象を見定めることが大切なのでしょうか。また、対象となる外国人観光客の属性をどのように見定められるでしょうか。
対象顧客を捉える――見た目で判断せずヒアリング
「実のところ旅行客の国籍によって、訪日してからの消費行動は全く異なります」と神郡氏。「この図が示しているのは、縦が訪日旅行客数で、横が消費額。訪日観光客数が多くても、消費額がそれほどではない国もあります。その反面、人数は少なくても“タイル”の面積が広く、買い物を示す青い部分や飲食を示すグレーの部分が多い国もあります」と図解。
「このように、外国人観光客の国によって消費行動が異なるため、自分のお店のエリアにどこからの旅行客が多いかを見定め、それに応じた対策をしていく必要がある、というわけです」
ではどのように対象となる外国人観光客の属性を識別できるでしょうか。
「どの国の人かは見た目ではわかりづらいもの。それなら手っ取り早く、直接聞いてみては?」と神郡氏は提案。「免税店になれば、販売時点で国籍や性別、年齢、購入金額や購入商品のデータが取れますが、売れないとそうもいきません。そこでオススメしたいのが、大きな世界地図を出入り口付近に貼り出して、自国の場所にシールを貼ってもらうことや、大きなホワイトボードスペースを作りどこから来たか、なにが目的かを付せんに書いて貼ってもらう、などの方法です。割と楽しみながら書いてくれますよ」。
「そのほかにも、アンケートを取るという方法もアリでしょう。その場合、スライドにあるようなヒアリング項目を入れてみると知りたいことがだいたい網羅できるのではないかと思います」
商品やサービスはお客さま目線でそろえる、オススメする
「お店側で売りたいものとお客さまが欲しいものが必ずしも一致するわけではありません」と神郡氏。「実際、雪まつり会場を訪れたタイ人観光客が、『“雪まつりTシャツ”はないか』と探し回っていたことがあります。雪まつりですから、当然真冬で気温も低い。お店からしたら半袖のTシャツを店頭に並べるはずがありませんよね。でも、そのお客さまは、母国で着られるもので、雪まつりに行ってきたとわかるものが欲しかった、というわけです」。
また、サービスや商品の打出し方も、「わかりやすいものにしましょう」と神郡氏はススメます。「『東京』『温泉』といった外国人にとってよく知られているものをキャッチコピーに入れると記憶に残りやすく集客効果が見込めます。『東京』と銘打つ際、『うちは千葉だから』『茨城だから』と尻込みする必要はありません。外国人から見れば、日本の都市間の距離などは誤差に過ぎないのですから」と説明しました。
そのうえで、「今日からはじめられるポイント」として神郡氏は、オススメ商品をランキング表示、製品のストーリーの掲示、試食・試飲・試着といった体験の提供をしてみること、さらに外国人観光客の中には素材などを気にかけるお客さまもいるため、商品仕様などを明確にすることなどを挙げていました。
笑顔で接客するため無料ツールを活用する――できればオリジナルツール作成も
「インバウンド対応の接客で難しいのは言語の壁」と神郡氏。そこで「ダウンロードできる無料ツールを活用してみるのはどうでしょうか」と提案しました。
「例えば、多言語マップ、音声翻訳アプリ、指差しツールなど。ある店舗経営者は、外国人観光客からよく質問されることをLINE翻訳で調べておき、それを一覧にして自店用のオリジナル翻訳ツールを作って活用しています。このように、一歩進んだ対策を練っておけば、安心して外国人観光客をおもてなしできるのではないでしょうか」
また、地域でできることとしては「コンビニATM、両替所、インバウンド対応店舗などのマップを作って商店街入口などに置いておくのも効果的でしょう」と神郡氏。「そのうえで、免税店の資格を取り、外国人からの知名度が高い『TAX FREE』ステッカーを貼り出して歓迎の意を伝えるようにしましょう。これを掲げるだけで、強力な集客につながるんですよ」と免税店ステッカーの効果を説明しました。
「今日からはじめられるポイント」としては、無料で入手できる翻訳ツールの活用、オリジナルツールの作成、有料サービスでは『POPKIT』内の『セカイPOP』でPOPやメニューの多言語化、多言語通訳コールセンターなど行政による支援がないかを調べることなどを挙げていました。
販売促進のためのコミュニケーションはどうする?
最後の項目は販売促進のポイントです。「外国まで行ってチラシをまかなくても、海外の旅行代理店を通じてアプローチという方法があります」と神郡氏。「観光協会に加盟していれば、海外の旅行博でチラシを配布してくれます。また、訪日すると決まっている人へは旅行代理店を通じて広告を出すこともできるでしょう」と、B to Bでの方法を解説しました。
では、すでに国内にいる外国人観光客を呼び込むにはどうはればよいのでしょうか。
「地域でフライヤーなどを作り、手に取りやすい場所に設置しましょう。来店されたなら、心を込めたおもてなしをしましょう。喜んでくだされば、きっとSNSでの共有や帰国後に良い口コミなど行ってくださるはず。販促としての効果は絶大なものとなります」
加えて「今日からはじめられるポイント」として、効果検証できるような仕組みをもたせたチラシやクーポンを作って配布、他社サイトやSNSに相乗りして口コミ拡散を狙う、お店独自のハッシュタグ(SNSでまとめて情報を読める検索ワード)を作成して発信することなどを神郡氏は挙げました。
SNSでの口コミに関しては、「特にフォトスポットを作るのは効果的」と神郡氏は情報を追加。「外国人観光客は写真をSNSで共有するのが大好き。フォトジェニックな場所をいくつか作っておき、『ここで写真撮れます』と掲示しておいたり、『写真を撮りましょうか』と声をかけたりするなどして、共有しやすい環境を作っておくなら、口コミ拡散を狙えるでしょう」と説明しました。
まとめ:できることからはじめよう――おもてなしのハートを忘れずに
神郡氏は、ここまで挙げたインバウンド対応を実施した事例として、お茶専門店「ほんぢ園」を挙げ、フォトスポットの作成、おすすめセットの販売、POPや原材料説明の多言語化、TAX FREEステッカーの掲出、指差しツール「英語の日本茶講座」作成、お茶の「入れ方のしおり」同梱などを行っている様子をスライドで説明しました。
「ほんぢ園は、インバウンド対応をはじめてからまだ2年めなのに、なぜここまでできたのでしょうか」と神郡氏は問いかけます。「それは経営者さまがインバウンドセミナーに足繁く通い、できるところからすぐにやっているから。なので皆さんも、今日お伝えしたことをひとつでも実践されたら、きっといつかはほんぢ園のようにインバウンドにばっちり対応できるようになるのではないかと思います」。
最後に神郡氏は、「インバウンド対応したいと考える店舗経営者さまのための窓口はたくさんありますので、まずは相談してみましょう。対応しきれていなくても、外国人観光客の言葉がわからなくても、日本語でかまいません。目をそらさずにいらっしゃいませと声をかけましょう。そういうハートがいちばん大切なのですから」と締めくくった。
参加者の反応
セミナー終了後、懇親会の時間に、今回のセミナーについての感想をお聞きすることができました。
店舗へのコンサルティング業務をスタートしようとしている女性は「インバウンドについて全く知らなかったが、2020年には必要になると感じ参加した。無料翻訳ツールを駆使したオリジナルの指差しシートなど、すぐできることをいくつか教えていただけた。店舗経営者さまは専門的なことについての知識は非常に詳しいが、インバウンドなど苦手意識を持っているかたも多い。そのようなかたたちにぜひ紹介したい」と述べていました。
飲食店を何店舗も経営している男性は、「店舗経営を助けるIT系のプロダクトも手がけているが、今後インバウンド対応は欠かせないものになるはず。そこでインバウンドについての知識や、それに対応したプロダクト開発のヒントが得られればと思い参加した。このAirレジ ミニセミナーは、場当たり的なアイデアではなく、飲食店があまりやらない『ユーザーニーズを知る』というところからはじまっていたので、参考にしやすい内容だったのではないかな」と感想を語ってくれました。
また、別の小売店を経営している男性は、「普段の商売の中で見過ごしてきたようなものを再認識できるのではないか、と期待して受講。実際、外国人観光客がどのように感じたいと思っているか、なにを知りたいと思っているかを知ることができ、勉強になった。これまで外国人観光客が来ても、好きなものを買い物かごに入れてくれればいいかな、と考えていたが、これからはわかりやすい説明書きなどを掲示したい」と決意を述べていました。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
渡辺 まりか (わたなべまりか)ライター
ガジェットをこよなく愛するフリーライター。福島県郡山のビジネス専門学校で約10年、MS-Accessなどの講師を務めた経験あり。自ら足を運び、目で見て、手で触って取材するのが好きな行動派。小型船舶操縦士免許2級、乗馬5級、普通自動二輪免許取得を取得するなど趣味多し。