青色申告には必須!「金銭出納帳」の書き方・やってはいけないこと
「金銭出納帳は現金出納帳や預金出納帳と違うもの?」「そもそも作成しなければいけないもの?」会計士の私はこのような質問を非常に多く受けます。そこで、金銭出納帳とはどのようなものなのか、作成するにあたって何に注意しなければならないのか、解説していきます。
この記事の目次
金銭出納帳とは
金銭出納帳とは、現金を何にいくら使ったか、どこで使ったのか、いつ使ったのかを記入する「現金取引に着目した」帳簿のことを言います。冊子になった金銭出納帳が販売されていますが、記入項目さえ守れていれば、Excelや市販のノートに記帳していても構いません。また、金銭出納帳と現金出納帳は同じものです。
金銭出納帳はなぜ必要なのか
従来から、不明な取引(不正防止を含む)を無くす目的として、金銭出納帳の作成が求められています。金銭出納帳は現金取引の全てを記入するので、手元にある現金と金銭出納帳は理論上一致するはずです。
例えば手元現金と金銭出納帳の残高に差異があれば、金銭出納帳に記入した取引に漏れがあることになります。この漏れをいち早く見つけることが出来れば、領収書などの帳憑(ちょうひょう)を完全に紛失してしまう前に見つけ出すことが出来るかもしれません。
最近では、現金を用いた取引は比較的減少傾向で、銀行からの振込やクレジット決済などが増えてきました。しかしながら、現金取引は0にはなりませんので、現在も従来同様に作成が求められています。
金銭出納帳と預金出納帳の違い
金銭出納帳は「現金取引」を全て記帳する帳簿で、預金出納帳は「預金取引」を全て記帳する帳簿です。金銭出納帳に預金取引も記入してしまう方がいますが、この2つはしっかり区別するようにしましょう。
現金と預金どちらもお金を用いた取引である点では同じですが、預金取引は通帳に記帳されるため、全ての取引について金融機関が一定の裏付けをしてくれ、客観性が担保されます。一方で、金銭出納帳は第三者の裏付けがないため、ルールを定めて記入しなければ帳簿としての裏付けが乏しくなります。そこで金銭出納帳を作成する場合には、金銭出納帳の残高と手元現金とを毎月照合する等のルールを設けて、信頼性を担保するなどの工夫をすることが必要です。
参考:預金から現金を引き出した際の帳簿の流れ
1月1日に預金から10万円現金を引き出した場合には、預金出納帳と金銭出納帳、どちらにも記入が必要になります。金銭出納帳への記入は、収入金額に10万円を記載し、勘定科目は預金とします。預金出納帳へは支出金額に10万円を記入し、勘定科目は現金とします。なお、仕訳は以下の通りです。
現金 | 100,000 | 預金 | 100,000 |
金銭出納帳記帳例
預金出納帳記帳例
金銭出納帳の書き方
金銭出納帳には、日付(いつ使ったのか)、勘定科目(何に使ったのか)、金額(いくら使ったのか)、摘要(何に使ったのか)を記入する必要があります。前月からの手元現金繰越高や、月末残高などを記載しておいても管理しやすくなります。
金銭出納帳での科目の選び方は?
最近では口座振替やクレジット払いが増えたため、現金取引で使う勘定科目は比較的少なくなりました。以下のようなものが大部分を占めているので、参考にしてください。なお、依頼する税理士事務所によっては勘定科目の取扱いを定めている所もありますので、予め打ち合わせをしておきましょう。
旅費交通費 | 交通機関に支払う移動費や、車のガソリン代や高速代など |
消耗品費 | 事務用品の購入代や、消耗品を購入する費用 |
通信費 | スマートフォンの通信費やインターネット利用料等 |
会議費 | 取引先との打ち合わせに使用した喫茶店での飲食費や、会議の際のお茶代など |
交際費 | 取引先等の接待に支出した費用 |
雑費 | 該当する勘定科目が思い当たらない場合に用いる勘定科目 |
手書きで金銭出納帳を作成する注意点
手書きで金銭出納帳を作成する場合には、以下の点に注意してください。
- シャープペンなどを使わずボールペンを使用する
文字を書き直すことができるのは便利ですが、書き直しができるという事は途中で変えられるということです。誰でも自由に変更ができない状態の方が、証拠能力は上になります。なるべく、ボールペンを使用してください。 - 書き損じには修正液や修正テープを使わない
1と同様ですが、書き損じた場合に修正液や修正テープを使用していると、書き直しをしているのと同じになります。間違えた場合には二重線で「間違えた内容も見える」状態にし、正しく書き直してください。 - その月の記入が終わったら仕切り線を書く
1と2で書き直しを防止できても、追加記入ができてしまえば意味がありませんので、その月の記入が終わったら、仕切り線を書いて追加記入ができないようにしましょう。
青色申告の際に必須な金銭出納帳
青色申告で55万円控除(2020年以降)を採用したい場合には、備え付け帳簿として金銭出納帳(現金出納帳)、預金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳、総勘定元帳、仕訳帳の作成が求められています。金銭出納帳は、55万円控除を受ける場合には必ず作成が必要な帳簿です。もし作成しておらず税務署から税務調査を受け指摘された場合、青色申告特別控除を否認され、税金を追加で納めることを求められる可能性があります。
金銭出納帳のよくある質問
金銭出納帳についてよくある質問をQ&A形式でまとめてみました。参考にしてみてください。
Q1.会計ソフトを用いて金銭出納帳(現金出納帳)を作成しているのですが、残高がマイナスになっています。なぜでしょうか? |
A1.残高がマイナスという事は、以下の2点の可能性があります。
これらの可能性をまず検討してください。1の場合に手書きの金銭出納帳で多いのは、前述の預金からの引出しを現金増加として処理し忘れている、ということです。しかし会計ソフトを用いている場合には、自動的に預金出納帳と金銭出納帳が連動しているため可能性は薄いです。個人事業主や中小企業の経営者は、自分自身の私的なお金と事業のお金が混ざってしまっていることが多いため、2の可能性が高くなります。なおこの場合、個人事業主は「事業主借」を用い、中小企業の場合には「借入金」を用います。 |
Q2.金銭出納帳の残高と手元現金が合いません。合わない分は自分で補填すれば良いのでしょうか? |
A2.日々もしくは毎月、金銭出納帳と手元現金を照合している場合には、「現金過不足」という勘定科目を用いて、金銭出納帳の残高を手元現金に合わせる事が出来ますので、ご自身で補填する必要はありません。 現金過不足は仮の勘定科目ですので、決算時に残っている場合には、雑費(費用)または雑収入(収益)に振り替える必要があります。 |
Q3.金銭出納帳は何年間保管しておく必要がありますか? |
A3.法人や青色申告事業者は金銭出納帳を原則7年間保管する必要があります。(ただし、赤字の年の繰越欠損金を繰り延べている場合は9年または10年)白色申告事業者の場合は、金銭出納帳の保管義務はありませんが、収入金額や必要経費をまとめた帳簿(現金取引や預金取引をまとめた帳簿)は7年間保管する必要があります。 |
まとめ
- 金銭出納帳と現金出納帳は同じもの
- 金銭出納帳は手元現金と一致させる必要がある
- 55万円の青色申告特別控除を使う場合には金銭出納帳が必要
金銭出納帳は、55万円の青色申告特別控除を受ける場合に必ず必要になる帳簿です。現金を出し入れする時に、都度記入するように習慣化しておきましょう。金銭出納帳の作成をルーティン化しておけば領収書紛失リスクが下がり、費用をしっかりと計上できるため、税金を払いすぎる必要もなくなります。ぜひ本記事を参考にして、金銭出納帳を使った現金管理を行ってみてください。
※この記事は公開時点、または更新時点の情報を元に作成しています。
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この記事を書いた人
福島 悠(ふくしま ゆう)経営コンサルタント/公認会計士
公認会計士、税理士。経営改革支援認定機関/SOLA公認会計士事務所 所長。
上場企業の顧客向け税書類の監修や経営コンサルティング、個人事業の事業戦略支援と実行支援まで幅広く対応。顧客収益最大化を理念に掲げ起業家を徹底サポート。多種多様な企業の税務顧問と年間約30件の戦略立案を行っている。